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麻しん 2011年(2012年 3月9日現在) |
麻しん含有ワクチンの接種歴別の報告数は、接種歴なし131例(29.6%)、1回接種140例(31.7%)、2回接種26例(5.9%)、接種歴不明145例(32.8%)となっており、接種歴不明が最も多く、次いで1回接種、接種歴なしの順であった(図5)。このうち、1回の接種歴のある症例の割合が多い5歳以下の症例についてみると、報告数は127例であり、このうち接種歴がある者は63例(63/127=49.6%)であった。これらのなかでワクチンの接種日と麻しんの発症日の記載があったものは41例で、うち8例は接種日から発症日までが28日以下であり、ワクチンそのものの反応も否定できない症例であった。接種歴のある63例のうち、検査診断例は40例(40/63=63.5%)、このうち、具体的な検査結果の記載があったものは21例であったが、麻しんの診断が確実と思われた症例は、PCR法で麻しんウイルス遺伝子の検出があったもの3例(3/63=4.8%)、IgM抗体価8.0以上2例(3.2%)、ペア血清での麻しん抗体価の有意な上昇(IgM抗体価1.78→8.21)1例(1.6%)の計6例(9.5%)のみであった。IgM抗体価0.89〜2.89の値(伝染性紅斑などの他疾患との交差反応が指摘され、麻しんでない可能性が高いとされている)をもって「IgM抗体価陽性」と判断され、検査診断例と届出されたものが13例(20.6%)あった。 遺伝子型の情報を得られた症例は96例あり、D4が最も多く51例(51/96=53.1%)、次いでD936例(37.5%)、D8 8例(8.3%)、G3 1例(1.0%)だった。これらの遺伝子型の結果や、国外で感染した症例との疫学的関連の有無の情報をもとに、感染地域について、国外、国内①(国外例と疫学的に関連)、国内②(国外例との疫学的関連は認められなかったが、遺伝子型がD5以外のもの)、国内③(国内①、②以外)、国内または国外かの判別が困難だったもの、国内か国外か不明なものの6つに分類して、感染地域別に週別の報告数を図6に示す。第1〜6週に報告された国外感染例とその関連症例は主に広島県からの報告であった1〜2)。さらに、第11〜26週では、遺伝子型が報告されたのは77例(D4 48例、D8 6例、D9 23例)で、D4 48例のうち46例は東京都からの報告であった3)。
検査診断が積極的に行われるようになった一方、その検査結果の判断については必ずしも適切になされていないと思われる症例も散見される。2009年以降の日本の麻しん発生状況のように、麻しん症例が少なくなった(有病率が低くなった)環境では、もはや麻しんは臨床症状に基づき「一目で診断できてあたり前」の感染症ではなく「否定されるのは当たり前」、「疑っても検査診断で否定されることが珍しくない」感染症となった。検査実施にあたっては、発病日から検体採取日までの期間が適切であることが重要であり、適切な時期に実施された検査の結果については、ぜひ「最近の知見に基づく麻疹の検査診断の考え方(http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/pdf01/arugorizumu.pdf)」等を参考にしていただき、的確な診断をしていただきたい。 2012年度は、日本における麻しん排除達成の目標年度である。排除を達成するためには、日本国内における麻しんウイルスへの感受性者を極力なくすことが不可欠で、そのためには2回の麻しん含有ワクチン接種率を95%以上にすることが求められる。2008年4月1日から2013年3月31日までの5年間の期限付き措置として、1回しか定期予防接種(以下、定期接種)の機会がなかった年齢層のうち、第3期(中学校1年生相当年齢)、第4期(高校3年生相当年齢)の年齢の者に対する2回目の定期接種が導入された。2009年以降、20歳未満の症例の占める割合が相対的に減少したのは、このようなワクチン対策の効果ともいえる。しかし日本全体でみると、定期接種対象者の麻しん含有ワクチン接種率は90%に届いていない。従来麻しんの流行期は春から初夏であり、定期接種対象者(1歳児、小学校入学前1年間の者、中学1年生相当年齢の者、高校3年生相当年齢の者)は、すみやかに接種を受けていただきたい(自治体によっては定期接種対象者以外の小児などでも公費助成が受けられる場合がある)。また、昨年の報告症例の半分を占めた成人についても、麻しんの罹患歴がない、または不明な方で、麻しん予防接種が未接種あるいは1回のみの接種の方、予防接種歴が不明の方は、定期接種対象外であっても積極的に麻しん予防接種を受けていただきたい。特に麻しんに感染したり、感染させたりするリスクの高い医療従事者や学校・福祉関係の従事者、海外旅行を予定している者も罹患歴や接種歴が不明な場合には、積極的に接種を受けることが勧められる。 以下に、麻しん関連情報として感染症情報センターのホームページに掲載されている主な項目とそのURLを挙げる。麻しん対策として活用いただければ幸いである。 ■麻疹(はしか):http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/index.html 1. 麻しん予防接種情報:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/01.html 2. 教育啓発:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/02.html 3. 発生動向:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/03.html 4. 対策・ガイドラインなど:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/04.html 5. 自治体等の取り組み:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/05.html 6. Q&A:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/QA.html 7. 関連情報:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/06.html 【参考文献】 1)IASR速報記事、麻疹ウイルス.広島県内における海外からの輸入麻疹およびそれに引き続く関連患者の発生 http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3742.html 2)IASR速報記事、麻疹ウイルス.広島県で検出されたD8型麻疹ウイルスの輸入症例による家族内感染 http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3772.html 3)IASR速報記事、麻疹ウイルス.東京都における麻しんウイルスの検出状況について http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3752.html |
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