腸管出血性大腸菌O157の行政対応について


厚生省生活衛生局食品保健課

堺 宣道


1.発生状況
 1996年の腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒は、5月の岡山県邑久町における発生を初めとして、堺市における大規模な発生など全国各地で発生し、有症者累計9,451名、死者累計12名に上った(うち、有症者累計10名以上の集団発生18件)。また、本年に入ってからは、1月から2月までの有症者累計は32名であったが、3月には、関東南部及び東海地域を中心として、有症者累計110名(うち死者1名)の有症者の発生が報告されるなど、家庭における発生事例が急増している。

2.原因究明の状況
 これまで、原因が推定・特定されたのは、有症者累計10名以上の集団事例では岐阜県岐阜市でおかかサラダ、東京都港区で弁当、大阪府堺市で貝割れ大根、岩手県盛岡市でサラダとシーフードソース及び北海道帯広市でサラダ、その他については、神奈川県川崎市で生レバー、福岡県福岡市の牛ホルモン(加熱用)によるもの等がある。また、本年3月には、同一施設で生産された貝割れ大根からO157が検出され、そのDNAパターンが一致したことから、汚染源、汚染経路としての可能性を有する施設、生産材料等の調査の徹底をさらに進めているところである。

3.厚生省の対応
 厚生省では、1996年の5月以降におけるO157による集団食中毒の多発に対応するため、内閣の「病原性大腸菌Oー157対策関係閣僚会議」のもと、省内に「病原性大腸菌対策本部」を設置し、発生予防対策、原因究明対策、診断治療対策等必要な対策を講じた。
 まず、発生予防対策として、夏期食品一斉取り締まりを延長・強化し、流通食品のO157汚染実態調査の実施、学校給食施設の一斉点検、と畜場における衛生管理の徹底等を行い、また、原因究明対策として、検食の保存期間の延長、感染症研究所における菌株のDNA分析等を行ってきた。
 さらに、本年3月には、食中毒予防のための「家庭用衛生管理マニュアル」及び「大量調理施設衛生管理マニュアル」を作成し、予防対策を充実するとともに、4月及び5月に食材の汚染実態調査、学校給食の一斉点検等を行っている。また、原因究明等の食中毒発生時対策として「食中毒処理要領」の改正、「食中毒調査マニュアル」の作成を行うとともに、食中毒発生状況を定期的に分析・評価し、国民に対する必要な情報提供を行うため、食中毒サーベイランス分科会を設置し、4月25日に第1回会議を開催して本年3月に関東南部及び東海地域を中心として多発した食中毒等の分析・評価を実施したところである。
 一方、診断治療対策として、ベロ毒素吸着剤の治験の推進、迅速診断薬の開発普及や昨年作成したO157感染症治療の指針に関する再検討を行っている。
 なお、これらの対策には、科学的知見の充実が不可欠であることから、必要な調査研究を充実していく方針である。


資料1食中毒対策体系図
資料2当面のO157対策について
(平成9年 4月 4日 病原性大腸菌O−157対策本部)
資料3食中毒サーベイランスの実施について
資料4平成9年3月に多発した腸管出血性大腸菌O157による食中毒等に関する分析及び評価等について
(平成9年 4月25日 食品衛生調査会食中毒部会 食中毒サーベイランス分科会)





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