国立感染症研究所 感染症情報センター
Go to English Page
ホーム疾患別情報サーベイランス各種情報


Q3. パンデミックインフルエンザと通常の季節性インフルエンザの流行ではどのように違いますか?

Q4

 通常の季節性インフルエンザは、その名の通り北半球では、毎年冬季に流行しますが、パンデミックインフルエンザは、数十年(30〜40年)に一度くらい(20世紀には3回起こっています)の頻度で、季節は冬とは限りません。

 毎年ヒトの間で流行しているA/H1N1ウイルス、A/H3N2ウイルス、B型ウイルスは、ヒトに完全に適応して、共存に近い関係を保っており、基礎疾患の存在や高齢であることなどの要因無しには、感染した人(宿主)の多くを死に至らしめるほどの高い病原性は通常ありません。一方パンデミックインフルエンザは、過去、特に基礎疾患のない健常な若年成人を死に至らしめたことがあります。その原因については、ウイルス自体の病原性、あるいはサイトカインの誘導能、あるいはヒト側の基礎免疫、あるいは宿主因子などいろいろと意見はありますが、よくわかっていません。

 季節性インフルエンザウイルスに対しては、産まれてから一度もインフルエンザにかかったことの無い子どもを除いて、ほとんどの人がこれまでに曝露を受けており、基礎免疫をもっています。故に、シーズンにより増減はあるものの、毎年おおむね人口の10〜20%程度の罹患者の発生があり、また、感染し症状が出たとしても、発熱は数日続くものの、多くの場合には何事も無く回復します。しかし、新型インフルエンザウイルスが出現し、流行した場合、そのウイルスには世界中の誰もがこれまで遭遇したことがなく、したがって基礎免疫を持っている人はいません。そのために、世界中で莫大な数の罹患者の発生と、それに伴って重症者や死亡者の増加もみられることが予想されます(Q6参照)。

 季節性インフルエンザの場合には、これまでの知識と経験によりワクチンが開発されており、流行前に使用可能な状態となっていますが、パンデミックインフルエンザの場合には、実際にウイルスが出現してから製造に入りますので、少なくともこれに6ヶ月を要するために、早期には間に合わないと考えられています。
 季節性のインフルエンザでは、ウイルスが人の間で流行している間、感染して免疫を持つ人はどんどん増加していく一方、ウイルス側も、ヒトの免疫から逃れるために毎年少しずつその抗原性を変えて(連続変異)流行を続けますので、毎年その流行の様相は変化しますが、一定の範囲を大きく超えることはなく、医療資源の需要が供給量を大きく超えて、医療が受けられなくなるというような事態にはなりません。しかし、パンデミックインフルエンザでは、膨大な患者数の発生し、また医療従事者も罹患することから、医療機関の許容量を超えてしまい、医療システムそのものが破綻することが起こりえます。

 季節性のインフルエンザでも、流行期には学校閉鎖が行われたり、罹患して仕事を休まなければならなかったりするような状況がありますが、経済全体に大きな影響を及ぼすことはありません。パンデミックインフルエンザでは、その流行の規模が膨大なため、長期の学校閉鎖になったり、旅行の制限が行われたり、集会とか映画館などのたくさんヒトが集まる場所を閉鎖したりする可能性があり、企業の存続のみならず、世界的な経済への深刻な影響が懸念されています。






Copyright ©2004 Infectious Disease Surveillance Center All Rights Reserved.