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「広域食中毒事例」
 

 国立感染症研究所感染症情報センターFETP
第5期生
 上野 正浩


腸管出血性大腸菌広域集団発生事例に対する複数都道府県・自治体の連携した取り組み

国立感染症研究所 FETP研修員  上野正浩
神垣太郎
小林幹子
鈴木葉子
FETPコーディネーター  砂川富正

感染症発生動向調査上にて、2004年第15疫学週(4月5〜11日)より、全国的に腸管出血性大腸菌感染症(以下EHEC)の報告数増加を認めた(14週:3例→15週:24例)。これらのほとんどが大腸菌O157VT2陽性株であった為、国立感染症研究所(以下感染研)FETPは報告数の多い都道府県・自治体への問い合わせを開始した。

問い合わせ情報によると、明らかな単一施設において患者は発生しておらず、症例は高齢者や小児に多いことが示された。地方衛生研究所および感染研細菌第一部にてPFGE一致を確認した。

その結果を受けて、各都道府県・自治体から積極的疫学調査の依頼がなされた。広域的な連携をFETPが受け持ち疫学調査が以下のように実施された。

各都道府県・自治体共通の一次調査:
 関係自治体での調査内容の標準化を図り、症例の疫学的特徴をさらに明らかにすることを目的に、一次調査票を作成した。共通の症例定義を作成し、これを基に、共通の疫学調査内容(旅行歴や行事への参加、外食の有無、飲料水、動物との接触、特定の食品の喫食歴、具体的な喫食情報)で調査を行った。

各都道府県・自治体および関係者との情報交換体制を強化:
 定期的に電話会議を開催して、各都道府県・自治体間での情報共有をはかった。

厚生労働省による積極的症例探査:
 複数都道府県・自治体に渡るEHECの集団発生事例のため、厚生労働省は、平成16年4月26日付の全国通知で情報収集を行った。

今後、このような広域事例に迅速・効果的に対応していくために、疫学調査に関して以下の考慮すべき点が挙げられた。

  1. 初期段階においては感染症・食中毒の区別は出来ず、初動調査における手順を一本化する。
  2. 広域事例が疑われた段階から、関係自治体の調査票を統一する。
  3. 広域における散発事例では、事例の集積を認めにくいために研究デザインの設定が難しく、結果として感染源の同定が困難であることが多い。今回の事例を踏まえ、後ろ向きコホート研究、症例対照研究を念頭に置いて、早期に対照群を選定する。
  4. 統計学的検討を迅速に実施し、さかのぼり調査の根拠とする。
  5. 広域事例の際の、マスメディア等への公表のあり方を検討する。

         資料(488 K)

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