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Vol.14 (1993/12[166])

<国内情報>
成人からのポリオウイルス1型の検出例−島根県


 1993(平成5)年1月22日に31歳女性からポリオウイルス1型が分離された。この女性は1月21日に発熱とカゼ症状があり,検査のために採取された咽頭ぬぐい液からFL細胞でポリオウイルスが分離された。MDCK細胞でのインフルエンザウイルスの分離は陰性であった。

 分離されたウイルスのrct/40マーカー試験は実施していないが,同年1月16日に子供が生ワクチンの投与を受けており,子供から二次感染と考えられる。当人はポリオワクチンの接種は過去においても受けていない。

 このような母子間の感染は他のエンテロウイルスではしばしばみられるが,ポリオウイルスについては,われわれの調査対象が小児を中心であることから不明な点が多い。しかし,小児期の同胞,あるいは乳幼児間の接触感染例は意外と多く,例えば過去3年間にサーベイランス定点で下痢症,上気道炎,発疹症などから54株(1型25株,2型16株,3型13株)分離し,それらの多くは1歳前後のワクチン投与年齢層に由来するものであるが,二次感染と考えられる非服用者からのポリオウイルス検出の頻度は13%(7名)に相当している。

 島根県における最近のポリオワクチン接種率は85%前後と低く,成人の抗体保有率も88〜93%程度にとどまっている。また,ウイルス分離からみてもワクチン投与から1.5〜2カ月の間はウイルスが排泄されていること,さらに隣接する市町村間の投与時期が異なることも含めウイルスの散布期間を長期化していることが,二次感染の機会を多くしている。

 生ワクチン服用者からの二次感染は,人の間を通過することによって生じるrevertantの出現も問題となり,ウイルス分離による監視が今後とも必要であろう。



島根県衛生公害研究所 飯塚 節子,板垣 朝夫





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