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Vol.10 (1989/7[113])

<国内情報>
徳島県におけるエコーウイルス30型による無菌性髄膜炎について


エコーウイルス30型(E30)は,1983年に全国的に流行した無菌性髄膜炎(AM)の主たる起因ウイルスであった。1983年,本県においてAMから分離されたウイルスはE14が主であり,E30は1株のみ分離された。他の疾患からも分離されなかった。本県においては,1983年以降E30は全く分離されなかったが,1988年11月,徳島市内A幼稚園でE30によるAMの小流行が発生した。流行例からは4名の患者全員からE30が分離された。また,同時期にAMの散発例からもE30が3株分離された。

 1988年晩秋に,E30によるAMの小流行が本県で初めて確認されたことから,1989年もE30によるAMの流行を警戒していたが,4月下旬に徳島市B保育所で,E30によるAMの流行が発生した。検査依頼された3名全員からE30が分離され,同時期に散発例1名からもE30が分離された。5月はAMの検査依頼は2件だけであったが,6月に入りAMの検査依頼が増加している。現在,2名のAM患者からE30を分離している。1989年1月以降,AM患者から分離されたウイルスで,E30以外は,E4が1株,ムンプスウイルス2株である。

 E30を分離する時に使用した細胞は,Vero,HEp2,RD-18Sの各細胞である。Veroの分離は極端に低く,他の2種細胞の分離率は高かった。HEp2とRD-18Sの比較では,分離率は大差なかったが,RD-18Sではすべての検体が1代目で分離できた。なお,本県ではAM患者からの検査材料はすべて髄液である。

 ウイルス分離状況から見る限り,本県においては,1983年,E30の活動は低調であったと推測される。しかも,その後6年間も経過していることも考え,E30に対する感受性群は大きく蓄積されていると思われ,今後の推移を注目している。



徳島県保健環境センター 山本 保男,渡 義典


エコーウイルス30型の分離状況(徳島県)





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