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高病原性鳥インフルエンザ
鳥インフルエンザに関するQ&A

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Q1. 高病原性鳥インフルエンザウイルスとは何ですか?
Q2. 鳥からヒトに感染しますか?
Q3. どのような場合に鳥からヒトに感染しますか?
Q4. ヒトからヒトへ感染しますか? このQ&AのPDFは
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Q5. ヒトが感染したときにはどのような症状がでますか?
Q6. どのような時に鳥インフルエンザウイルス感染の可能性が疑われますか?
Q7. ヒトの鳥インフルエンザウイルス感染の診断はどのようにして行いますか?
Q8. ヒトの鳥インフルエンザウイルス感染の治療はどのようにして行いますか?
Q9. ヒトの鳥インフルエンザウイルス感染の予防法はありますか?
Q10. ヒトのインフルエンザワクチンは鳥インフルエンザに効きますか?
Q11. 鳥インフルエンザが発生している国への旅行、あるいは日本国内で発生した場合の発生地域への旅行は安全ですか?
Q12. ペットや学校で飼っている鳥は安全ですか?
Q13. 野鳥は安全ですか?
Q14. 鳥が死んでいる時にはどのように対応すればよいですか?
Q15. 鶏肉や鶏卵は安全ですか?
(2006年12月発行Q&Aの改訂版)

Q1:

高病原性鳥インフルエンザウイルスとは何ですか?

 インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型が存在しますが、通常ヒトに流行を起こすのは、A型とB型であり、また時に新型ウイルスが出現して、氾世界流行(パンデミック)を引き起こすのは、A型ウイルスです。というのは、A型ウイルスは、ヒトを含むほ乳類や鳥類に広く分布し、中でも水きん、特にカモが起源と考えられており、自然宿主として現在知られているすべてのA型インフルエンザウイルス、すなわち、HA亜型のH1からH16までとNA亜型のN1からN9までのすべてのウイルスを保有していると考えられています。これらのウイルスが他の水きんや家きんや家畜、そしてヒトでのA型インフルエンザウイルスの供給源となっているわけです。

 水きんでは、通常インフルエンザウイルスは腸管に存在して共存をはかっており、宿主自体に病原性を示すことはこれまでのところ稀とされています。通常は家きんに感染して数代感染を繰り返した後にはじめて病原性を発揮すると考えられています。病原性を示しても、大部分は病原性は低く(低病原性)、家きんを死に至らしめることはありませんが、当初より強毒株であったか、あるいは感染伝播の過程でHA遺伝子に変異が起こって、強毒株となったものが、高病原性鳥インフルエンザ(Highly Pathogenic Avian Influenza; 以下HPAI)ウイルスです。一旦病原性を獲得したウイルスが再び水きんに感染した場合には、水きんにも病原性は示すことがあります。国際獣疫事務局(OIE)は、高病原性の定義として、最低8羽の4〜8週齢の鶏に感染させて、10日以内に75%以上の致死率を示した場合に「高病原性」を考慮するとしています。分子遺伝学的なHPAIの定義としては、HA分子の開裂部位における塩基性アミノ酸の連続が存在することとされており、1997年における香港でのH5N1亜型の鳥インフルエンザウイルス感染事例においても、また2003年末以降、世界各地で発生しているH5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスにも、この配列が存在しています。またこれまでに判明している高病原性鳥インフルエンザウイルスは、すべてH5亜型とH7亜型のウイルスに限られています。なお、この「高病原性」とは鳥に対する病原性を示したものです。


Q2:

鳥からヒトに感染しますか?

 本来鳥インフルエンザウイルスは種の壁があるため、ヒトへは感染しないと考えられていました。この理由は、ヒトインフルエンザウイルスが感染、すなわちヒトの細胞の中に侵入するために用いる受容体と鳥インフルエンザウイルスが鳥に感染する際に用いる受容体は異なったものであり、それぞれヒトはヒトインフルエンザウイルスに対する受容体を、鳥は鳥インフルエンザウイルスに対する受容体を持つため、それぞれのウイルスには感染するが、ヒトは鳥インフルエンザウイルスの受容体をもっていないため、これには感染しないと考えられていたからです。

 しかしながら、過去世界的にみると現在までにいくつかの感染事例が報告されており、この理由は明確ではありませんが、おそらくは受容体の違いというのは、厳密なものではないため、大量にそのウイルスが体内に入れば多少の受容体等の違いがあっても感染してしまうのだろう、すなわち大量暴露によっては感染しうるものであると理解されていました。

 しかしながら、研究が進むにつれ、肺胞上皮細胞がH5N1亜型のウイルスに感染していることが報告され(Emerg. Infect. Dis. 11:1036-1041,2005.)、ヒトの鼻粘膜、副鼻腔、気管、細気管支、肺胞上皮上で、ヒトインフルエンザに対する受容体と鳥インフルエンザウイルスに対する受容体の分布を検討した研究(NATURE 440(23):435-436,2006.)により、ヒトの終末細気管支と肺胞上皮には鳥インフルエンザウイルスに対する受容体があることが示されました。しかしこれは肺の深部にあるために、鳥インフルエンザウイルスに大量に暴露された場合以外には、鳥からヒトに容易に感染することはなく、かつ、ヒトからヒトへも容易には感染しないことを示唆していると考えられます。

[参考]
WHOに報告されたヒトの高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)感染確定症例数


Q3:

どのような場合に鳥からヒトに感染しますか?

 感染源は、H5N1に感染した、病鳥や死鳥の排泄物や体液や羽毛ですが、アヒルなどでは、感染しても無症状の場合もあります。これら感染した家きんあるいは野生鳥などの体液・排泄物への濃厚な接触、あるいはこれらからの塵埃や飛沫を吸入することによりヒトへ感染しています。病鳥の羽をむしったり解体したり、感染した闘鶏を世話したり、病鳥、特に症状を示さないが感染しているアヒルと遊んだりなどを原因とする感染が報告されています。しかしながら、これまでのところ、おそらく数百万人が暴露を受けていることからすれば、ヒトへの感染は極めて少数であり、少なくとも現時点(2011年1月時点)ではトリからヒトへの感染効率は低いと考えられています。すなわち、現在のヒトへの感染は、動物の疾患が、本来の宿主ではないヒトに、偶発的に感染しているということが言えます。


Q4:

ヒトからヒトへ感染しますか?

 これまでにも、中国、パキスタン、タイ等からヒト-ヒト感染が疑われる事例の報告がありますが、現在家きんにおいてH5N1亜型の鳥インフルエンザが流行している地域では、一見人から人へ感染しているようにみえても、同時に家きんへの接触もみられるため、ヒトからヒトへの感染があるかどうかを証明するのは容易ではありません。2006年5月末に報告されたインドネシアの北スマトラの一農村における家族内集積事例では、詳細な調査が行われ、一人の母親から、その兄弟とそれぞれのこどもたちに合計6例の感染者がみられており、その後一人のこどもから父親に感染が認められ、第三世代までの感染があったと伝えられています。これらから、現状でも、濃厚である程度の期間持続する接触があれば、限定的ではあるもののヒトからヒトへの感染は起こりうると考えられます。その際、現時点では、ヒト-ヒト感染と考えられているものは、すべて血縁関係のある濃厚接触者に限られており、夫婦間の感染伝播による発症例はなく、血縁関係のない人の間での感染伝播は確認されていません。なお、これまでのところ(2011年1月時点)、効率的な持続的なヒト-ヒト感染の証拠はありません。


Q5:

ヒトが感染したときにはどのような症状がでますか?

 原因となったウイルス株により違いが見られますが、一般的には、突然の高熱、咳などの呼吸器症状の他、全身倦怠感、筋肉痛などの全身症状を伴います。ほとんど疾病名を付けられないほどの軽症例、通常のインフルエンザ様症状、そして重篤な肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全などにより、急激に悪化して死に至るものまで様々です。また、オランダでのH7N7亜型感染症では結膜炎を起こしており、香港のH5N1でも結膜炎が数例で見られたと報告されています。

 2003年よりアジアを中心に発生がみられる、H5N1亜型では、初期症状は突然の高熱(ほとんどは38℃以上)と咳などの気道症状、全身倦怠などを伴うインフルエンザ様症状で、発病初期には季節性インフルエンザと症状的な区別は付きません。時に下痢、嘔吐、腹痛、胸痛などに加え、場合によって鼻出血や歯肉出血が初期症状として報告されていますが、H5N1亜型感染による特徴的な経過として、早期に下気道症状が出現し、急速に増悪する点があり、多くの患者では初診時にすでに一次性のウイルス性肺炎による下気道症状が認められています。タイでは、発症後6日間程度(4〜13日)でARDSを発症したと報告されており、トルコにおける重症例では発症から3〜5日で呼吸不全が認められたとしています。またもう一つの特徴として多臓器不全やDIC(播種性血管内凝固症候群)が報告されています。一方、ベトナムからは、ほとんど呼吸器症状のない、脳炎事例が報告されており、その引き起こす疾患の幅が広いことを示唆しています。

 H5N1亜型による致死率は、以前は全体で56%(WER 26(81):249-260,2006.)とされていましたが、2009年の報告症例の解析(WER 85(7):49-56,2010)では、44%と報告されており、10歳未満では24%、10歳以上で71%と報告されています。また致死率は国によって大きく異なり、曝露のタイプや強さ、医療機関へのアクセス率、検査や治療方法、ウイルス株の毒性の違いなどが考えられていますが、原因は不明です。また、発症から2日未満の入院では致死率は32%でしたが、2-3日では61%、3日を超える、あるいは入院していない例では70%と報告されており、早期治療の有用性は指摘されています(WER 85(3):13-20,2010)。


Q6:

どのような時に鳥インフルエンザウイルス感染の可能性が疑われますか?

 発熱と気道症状を伴うインフルエンザ様の症状があり、しかも発病前10日間に、現在鳥インフルエンザが家きんで流行し、鳥インフルエンザにかかっていることが疑われる病鳥や死鳥、それらの体液や排泄物・羽毛と濃厚な接触歴があるか、家禽の集団発生の場所において活動歴があるか、あるいはこれらの病鳥・死鳥または家きんとの接触歴がありかつ肺炎症状を呈しているヒトと濃厚に接触していた方は、鳥インフルエンザウイルス感染を考慮して、最寄りの保健所に相談し、その指示に従ってください。医療機関を受診される場合にはあらかじめ連絡をいれた上で、マスクを着用して、医療機関の指示に従って受診されることをお勧めします。Q7を参照)

 なお、H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染については、感染症法上、鳥インフルエンザ(H5N1)として、二類感染症に指定されており、届出が義務づけられています。


Q7:

ヒトの鳥インフルエンザウイルス感染の診断はどのようにして行いますか?

 本疾患を疑い、診断する際にもっとも重要なことは、渡航歴と接触歴であり、発症10日前までに現在H5N1亜型の鳥インフルエンザが発生している地域へ旅行したかどうか、そして上述のような家きんやその体液・排泄物・羽毛との濃厚な接触歴かあるいは高病原性鳥インフルエンザH5N1の感染が疑われる肺炎の患者を看護や介助したり1〜2メートル以内で対面接触があったどうかです。また、急速に症状が増悪するという点も重要な点であり、原因不明の重症肺炎や急速に死に至るような肺炎症状のある場合や、インフルエンザウイルスA型が検査で陽性になっているにもかかわらず、H1N1亜型でもH3N2亜型でもない場合にはH5感染を考慮する必要があると思われます。

 検査診断は、咽頭・鼻咽頭拭い液から、ウイルスを分離してその亜型を同定することですが、現状のH5N1亜型では、RT-PCRにてH5の遺伝子を確認することが標準です。国内ほとんどの地方衛生研究所、検疫所にて検査可能ですが、確認検査は国立感染症研究所(インフルエンザウイルス研究センター)にて行います。ウイルス学的にはH5N1亜型の検出は咽頭、便、血清で証明されており、また肺での増殖効率が高いとされていますが、これまでのところ検体毎の感度に関するデータはなく、咽頭拭い液が標準とされています。WHOの検査に関するガイドラインでは、咽頭拭い液が現状では最適な検体としつつ、通常の季節性インフルエンザを診断するに当たっては鼻咽頭拭い液がよいので、これも採取し、もし可能であれば、気管吸引液あるいは肺胞洗浄液を採取すること、そして急性期と回復期のペア血清を検体として採取することを勧奨しています(参考 Collecting, preserving and shipping specimens for the diagnosis of avian influenza A(H5N1)virus infection. Guide for field operations. )。急性期以降であれば、上述のペア血清を用いて、中和抗体を測定することにより診断ができます。

 鳥インフルエンザウイルスは、ヒトで感染伝播が続いているA/H1N1(2009)(いわゆる新型のH1N1)や香港型(A/H3N2)とは異なりますが、いずれもA型インフルエンザウイルスに属します。そのため、ヒトのA型インフルエンザウイルスの診断に使う迅速診断キットで陽性にでます。しかしヒトの通常のインフルエンザでも見られているように、検査検体の採取状況などにより検出感度が変化し、2003年以降東南アジアで発生しているヒトの鳥インフルエンザ(H5N1)症例での迅速診断キット陽性率は高くありません。これは上述Q2参照)のようにウイルスの増殖は主に肺胞で起こっているため、咽頭拭い液ではウイルス量が少ないからであろうと考えられています。


Q8:

ヒトの鳥インフルエンザウイルス感染の治療はどのようにして行いますか?

 現在までのところ、抗インフルエンザウイルス薬であるノイラミニダーゼ阻害剤による早期治療により効果が期待できると考えられております。また、発症からオセルタミビルの投与までの期間により致死率が上昇するとの報告もあり、疑い例には可能な限り早期に(理想的には48時間以内に通常のインフルエンザに準ずる方法で)投与することが勧められています。また、WHOは症例によって、特に肺炎例や進行例には倍量投与、投与期間の延長、(ウイルスに感受性のある場合には)アマンタジンやリマンタジンとの併用についても考慮すべしとしています(WHO. Clinical management of human infection with avian influenza A (H5N1) virus. Updated advice 15 August 2007)。また、最近経静脈投与が可能な抗インフルエンザウイルス薬として、ペラミビルが国内で利用可能となっています。まだ臨床的な知見が十分に集積されているほどではありませんが、WHOは動物実験の結果から、ザナミビルの静注とともに、オセルタミビルの代替治療オプションのひとつとして挙げています(WHO. Clinical management of human infection with avian influenza A (H5N1) virus. 15 August 2007)。

[参考]
鳥インフルエンザ感染が疑われる患者に対する医療機関での対応


Q9:

ヒトの鳥インフルエンザウイルス感染の予防法はありますか?

 これまでの患者はそのほとんどが、病鳥・死鳥、それらの体液や排泄物・羽毛との濃厚な接触により感染していますので、鳥において鳥インフルエンザウイルスの感染がみられている場合に、これらとの濃厚な接触を避ければ感染の危険性はまずありません。鳥インフルエンザの流行が鳥の間で起こっている国や地域に出かけなければならない時には、生きた鳥を扱っている市場に立ち入ることQ11を参照)あるいは、集団発生が見られている鶏舎などへの出入りは避けて下さい。どうしてもそういったところに出入りしなければならないときには、自分自身の感染を避けると同時にウイルスを他の地域の鳥に拡げないために、感染予防対策として手袋・医療用マスク・ガウン・ゴーグルなどを着用し、手指消毒をきちんと行って下さい。

 現在のところA/H5N1亜型のインフルエンザウイルスによる感染予防に有効と考えられるワクチンは、プレパンデミックワクチンとして開発され、わが国でもすでに国家備蓄が行われていますが、鳥インフルエンザの感染のリスクが低いことなどから、現在は、H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスからヒトへの感染を予防する目的で使用されてはいません。

 現在鳥インフルエンザの発生のない国や地域においては、日常生活の中で鳥インフルエンザに対する特別な予防を行う必要はありませんが、平常から動物との接触後に手洗いなどの個人衛生を実施しておくことは大切です。また、鳥インフルエンザの発生地で防疫作業を行う方々などは、適切に感染予防策をとることが大切です。


Q10: ヒトのインフルエンザワクチンは鳥インフルエンザに効きますか?
  現在使用されているヒトのインフルエンザワクチンは、ヒトの間で流行しているA/H1N1(2009)、A/香港型(A/H3N2)、およびB型に対して効果のあるものであって、H5型やH7型などの鳥インフルエンザに対しての効果は期待できません。

 ただし、ヒトインフルエンザウイルスおよび鳥インフルエンザウイルス双方の感染が同時におこると、ヒトの体内でウイルスの組み換えがおこり、ヒトからヒトへの感染をおこしやすい新型のインフルエンザウイルスの発生につながる可能性も指摘されています。このため職業上鳥インフルエンザウイルス感染の可能性の高い方には、鳥インフルエンザウイルス感染と紛らわしい発熱性疾患に罹患する可能性を低減する意味でも、通常のインフルエンザ流行期に入るまでにヒト用の季節性インフルエンザワクチンの接種が勧められています。

Q11: 鳥インフルエンザが発生している国への旅行、あるいは日本国内で発生した場合の発生地域への旅行は安全ですか?

 ヒトが鳥インフルエンザに感染するリスクは病鳥・死鳥やその体液・排泄物・羽毛に直接的に濃厚な接触を行なった場合に最も高くQ3を参照)、現段階では鳥インフルエンザの発生を理由に発生国への渡航の自粛、中止などの必要はありません。また、同様に国内でも、鳥インフルエンザの発生を理由にその土地への旅行や移動の自粛、中止などの必要はありません。ただし、流行地では、生きた鳥類のいる施設や市場への立ち寄りや家きんとの接触、発生農場への出入りなどは避けるべきです。


Q12: ペットや学校で飼っている鳥は安全ですか?

 これまでの科学的知見によれば、鳥インフルエンザウイルスは多くの種類の鳥類に感染しますが、国内で鳥インフルエンザが発生したためにこれまでペットとして家庭などで飼育していたニワトリや小鳥が直ちに危険になるということはありません。しかし、鳥は鳥インフルエンザに限らず、ヒトに感染するその他のウイルスや細菌などの病原体を持っている可能性があります。鳥を飼う場合は衛生状態に注意を払い、鳥に触った後の手洗いや糞尿の速やかな処理などを行うことが勧められます。鳥が普段と様子が違うとか、弱っているなど、健康状態に異常があった場合は獣医師に相談し、飼い主が身体に不調を感じた場合は早めに医療機関を受診することも大切です。

 また飼っている鳥などが死んでいるのが発見された場合には、その場所と状況により、最寄りの獣医師、教育委員会、家畜保健衛生所、あるいは保健所など適切な機関に相談してください。


Q13: 野鳥は安全ですか?
 2003年以降東南アジアからユーラシア大陸に広がっているH5N1亜型による高病原性鳥インフルエンザの集団発生は、野鳥(特に水きん類を含む渡り鳥)が伝播に関与している可能性が考えられており、実際に野鳥においての感染も認められています。これまでのところ、飛んでいる鳥はもとより野鳥と接触したヒトが鳥インフルエンザウイルスに感染した事例はなく、野鳥との接触が特別危険であるということはありませんが、野鳥との接触には鳥インフルエンザ以外の病気に関する心配もないわけではありませんので、接触後には手洗いなどを励行しましょう。少なくとも衰弱した野鳥や死んでいる野鳥に直接接触することは避けた方がよいと思われます。

Q14: 野鳥が死んでいる時にはどのように対応すればよいですか?
 野鳥が衰弱していたり、死んだ場合には、ウイルス、細菌や寄生虫など様々な病原体の感染や、餌がなかったり、環境の変化による衰弱死、電線での感電、何らかの毒物の摂取など多くの死亡原因が考えられますので、鳥が死んだからといって必ずしも鳥インフルエンザが原因とは考えられません。しかし通常野鳥の死体がみられないような場所でみつかったとか、複数の鳥が死んでいるとか、周辺の状況から異常と考えられる場合には、素手で触ったりそのまま土に埋めたりせずに、都道府県の鳥獣保護部局へ連絡して下さい。

Q15: 鶏肉や鶏卵は安全ですか?
 これまで適切に加熱調理された家きん肉や卵を食べてH5N1に感染することを示唆する証拠はなく、適切に加熱調理された家禽肉や卵は安全です。ただし、海外の発展途上国の中には、鳥インフルエンザの流行があっても、すべての感染鳥を殺処分したり、感染の疑いがある鳥の移動制限や出荷制限といった流行拡大防止対策が十分ではないところもあり、家きんにおける流行がある地域で、感染拡大防止対策が十分ではない国々では、生あるいは半生調理の家きん肉や卵は食べるべきではありません。日本においては、発生地域の周囲の家きん(非感染)を予防的に殺処分し、また移動制限をかけていますので、国内で感染家禽の肉や卵が出荷・流通すら可能性は殆どありません。また通常から鶏卵鶏肉は流通前に洗浄・消毒などが行われており、従って国内で流通している家きんの肉や卵は基本的には安全です。

 一方、H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスに感染した家きんの生の血液の入った料理の摂食と関連のある症例は報告されています。また、これらの家きんが産んだ卵の表面は外側にも内側にもウイルスが存在している可能性があります。H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスは、感染した鳥の血液、筋肉、骨を含むすべての部位に分布し、このウイルスは便中では4℃で少なくとも35日間、37℃で少なくとも6日間、外気温中では数週間生存しますので、冷凍や冷蔵によっても不活化されません。これらをもとにWHO(世界保健機関)では以下を勧奨しています(http://www.who.int/foodsafety/micro/avian/en/index1.html)。

1)H5N1亜型鳥インフルエンザの発生のない地域では通常と同様の調理、摂食方法でなんら心配はないこと。

2)発生がある地域であっても、食品のすべての部分が70℃以上になるような通常の適切な加熱調理(肉であればピンク色の部分がないこと、卵であれば固まっていること)においてH5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスは死滅するので、適切に調理された家禽肉は安全であること。

3)サルモネラやカンピロバクタなど家禽肉や卵から感染する病気は他にも多数あるので、食中毒の予防には加熱調理が重要であること。


(2011/2/15 IDSC 掲載)
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