国立感染症研究所 感染症情報センター
ホーム疾患別情報サーベイランス各種情報

Q15. 乳幼児の予防接種スケジュール

  平成14年3月22日生まれの4カ月児の母親です。予防接種のスケジュールについて教えて下さい。
 9月5日にポリオの集団接種を、その1カ月後にDPT を開始するつもりでおりました。近所でほぼ同月齢の子供がいる奥様が懸かり付けのお医者様から、ポリオよりもDPTを先にしないといけないと言われたそうです。そこで、いろいろ調べてみると、百日咳の免疫は生後3カ月で切れると書いてあるものを見つけ、早くDPTをしなければいけないのかなと心配になりました。
 そこで、お伺いいたします。私の場合も、DPTをポリオの前にするべきでしょうか。その場合、ポリオは来年の春と秋に集団接種すればよいのでしょうか。

(母親Nさん)


A: 結論から申し上げますと、私もご近所のお子様のかかりつけの先生と同様に、ポリオワクチンの前にDPTワクチンの接種を少なくとも1回、できれば2回すませておかれることをおすすめいたします。来年の春と秋にポリオワクチンを受けるのもいいと思いますが、来年の春は丁度お誕生日の頃ですので、お誕生日を過ぎたら何をおいても麻しん(はしか)ワクチンだと思います。もう一つご質問の中にはありませんでしたが、BCG ワクチンもできるだけ生後早期に受けておいた方がよろしいです。

 その理由は、現在の日本におけるポリオ、百日咳、麻疹、結核の患者数を考えると、ポリオは日本を含む西太平洋地域で根絶宣言がなされており、ポリオの患者さんはありません。ただし、根絶状態のまま維持するためには、ワクチン接種を維持していくことが極めて重要です。また、世界的にはまだポリオ患者さんの発生は認められていますので、海外から持ち込まれる可能性は否定できません。しかし、ポリオワクチンは年に2回、春と秋に集団接種で実施している市区町村がほとんどだと思いますので、いつでも受けられるというものではなく、今回うけそびれると、来年の春は麻しんワクチンを受けることによってまた受けそびれてしまう可能性があります。

 一方、百日咳、麻疹、結核は常時患者発生があります。百日咳は乳児期にかかると重症になることが多いため、DPT ワクチンはできるだけ生後3カ月を過ぎたら早目に受けておかれた方がいいと思います。麻疹はかかると1週間以上高熱が続き、肺炎や中耳炎、稀には脳炎といった合併症がみられ、今の日本の医療事情においても人口動態統計では年間7名から53名ぐらいが麻疹で死亡していますので、1歳になったらすぐにワクチンを受けることをおすすめいたします。結核も日本ではまだまだ患者数も多く、乳児期にかかると、結核性髄膜炎や粟粒結核などの重篤な感染症に発展することがあります。

 基本的には、現在既にお子様は生後4カ月とのことですので、いくつかの方法が考えられます。
1)DPTワクチンの1回目を8月28日までに受け、9月5日に予定通りポリオワクチンをのむ。10月4日以降にDPTワクチンの2 回目を受け、その後1週間以上経ったらBCGワクチンを受ける。その後4週間以上経ってから、DPTワクチンの3回目を受ける。次は、お誕生日が来たらすぐに麻しん(はしか)ワクチンを受ける。その次は、4週間以上あけてポリオワクチンの2回目でしょうか。もしも、この場合も受ける時期が難しければ、2回目のポリオワクチンは秋でもいいと思います。次にDPTワクチンの追加(4回目)もありますが、これはDPT ワクチンの3 回目を受けた日から1年〜1年半の間に受けることになっています。あとは2歳ぐらいで風しんワクチン、3歳を過ぎたら日本脳炎ワクチン、という具合にすすめていかれては如何でしょうか。 2)もし、ポリオワクチンを受ける機会が9月5日以外にも、たとえば9月の中旬や下旬にもあるのであれば、DPT ワクチンを3 週間間隔で2回受け(DPTワクチンは、通常3〜8週間の間隔で3回受けることになっています。)、それから1週間以上経ってからポリオワクチンをのむ。その後4週間以上経ってからDPTワクチンの3回目を受ける。その後1週間以上経ったらBCG ワクチンを受ける。その次は、お誕生日が来たらすぐに麻しん(はしか)ワクチンを受ける。これ以降は1)と同じです。

 ここまでにお話ししたことはあくまでも予定ですので、途中体調が悪かったり、熱が出て予定通りに進まないこともあるでしょう。また、結核患者さんと接触する機会があるような場合は臨機応変にスケジュールを変更し、BCGワクチンを優先させた方がいいでしょう。原則として優先して欲しいのは、乳児期(0歳児)のうちにDPT ワクチン3回とBCG ワクチンをすませる。1歳のお誕生日が来たらすぐに麻しんワクチンを受ける。DPT ワクチンの追加接種(4回目)、ポリオワクチン、風しんワクチン、日本脳炎ワクチンなどスケジュールは、体調、接種可能な時期に合わせて予定をたてていかれることをおすすめいたします。生ワクチン(BCG 、ポリオ、麻しん、風しんワクチンなど)の接種後4週間以上経てば他のワクチンが受けられますし、不活化ワクチン(DPT、日本脳炎ワクチンなど)の接種後1週間以上経てば他のワクチンが受けられます。

 途中、予定通りいかないことが起こった場合は、またいつでもご遠慮なくお問い合わせ下さい。あともう一つは、ご近所のお子様と同様に、お子様のことをよくわかっておられるかかりつけの小児科の先生とゆっくりご相談されることだと思います。せめて、ワクチンで予防可能な感染症にはかかることなく、元気に成長されることをお祈りいたします。

(感染症発生動向調査週報 IDWR 2002年第31週)

Copyright ©2004 Infectious Disease Surveillance Center All Rights Reserved.