国立感染症研究所 感染症情報センター
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Q14. 7価肺炎球菌ワクチンについて

  2000年11月1日号の日本医師会雑誌「特集ワクチンの最前線」に次の様な記載があります。「日本の肺炎球菌ワクチンは23価ワクチンのために、2回目の接種時に局所反応が強く、1度接種すると有効期間は5年くらいあるが、2回目の接種には15年くらいの間隔をあけるべきである。世界の他の国では7価ワクチンであるので、このような問題は起こらない」。この状況は現時点でも変わっていないのでしょうか。また、日本でも7価ワクチンへ移行する動きはあるのでしょうか。テレビでの放映以降患者さんから相談されることが多くなっています。

(京都市臨床医Y さん)


A: ご存じの通り、日本で認可されている肺炎球菌ワクチンは23価の多糖体ワクチンで、23種類の血清型の多糖体が含まれています。1血清型あたり25マイクログラムの多糖体が含まれており、非常に多くの抗原量が含まれたワクチンです。このワクチンは局所反応が強く、日本ではハイリスクグループ(脾摘患者、脾機能不全者、鎌状赤血球症、心・呼吸器系の慢性疾患患者、免疫抑制を受けている者)を対象にしています。また、日本ではその副反応の強さから、23価多糖体ワクチンの反復接種を認めておりません。  一回接種で5年間有効と記述した文献もありますが、ワクチンの効果、すなわち23種類の血清型全てに十分な免疫を付与できるかどうかは個人差による影響が大です。

 最近米国では、7価の血清型(4、6B、9V、14、18C、19F、23F)の多糖体と不活化ジフテリアトキシン(Diphtheria CRM197 Protein)を結合させたワクチンが実用化され、小児に使用されています。この結合型ワクチンは、肺炎球菌の多糖体も1血清型あたり2マイクログラムと少量ですみ、副反応も少なくなっています。この結合型ワクチンの最大の特徴は、2歳以下の小児に対しても十分な免疫を付与でき、ワクチンに含まれる型の肺炎球菌による髄膜炎などの重篤な感染予防に有効であるとされています。

 なお、米国では、成人に対して現在も23価多糖体ワクチンが使用されております。つまり、米国では7価の結合型ワクチンに移行したのではなく、7価の結合型ワクチンを小児に対して新たに導入したというのが正しい理解です。この点をお間違えのないようにお願い致します。よって日本でも、7価の結合型ワクチンについては、今後その効果や導入についての検討が必要との意見がありますが、現時点では具体化しておりません。

(感染症発生動向調査週報 IDWR 2002年第34週)



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