国立感染症研究所 感染症情報センター
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Q9. 親子のポリオワクチン接種について

  ポリオの件ですが、感染症情報センターのHP によりますと、昭和50年から52年生まれの人の抗体価が低いとありますが、その元データである図を見ますと、たしかに1 型はそれでいいようですが、3型の場合は1970年(昭和45年)から77年(52年)にわたって抗体価が低いように思われます。現在その年代の母親が多いと思われるのですが、親にも子供と一緒にワクチンを勧めたほうがよいでしょうか。またその場合は、対象は昭和50〜52年生まれなのか、昭和45〜52年生まれなのか、また、子供にポリオワクチンを接種している保健所で対応可能なのでしょうか?

(東京都小児科医 U. T.)


A: 昭和50〜52 年生まれの方にはポリオワクチンの接種をすすめています。それは、まさしく先生ご指摘の1 型の抗体保有率がこの年代で低いという結果からです。(3型は比較的問題が少ない)
1型と2 型は、2回接種をしていればほぼ100%に近い人が抗体を獲得しますが、3型については先生のおっしゃるとおりで2 回接種をすませていても、抗体を獲得していない人もあり、この3 年間に生まれた人に限ったことではありません。
 少し前になりますが、平成9年度伝染病流行予測調査によると、「0〜5歳における抗体獲得率は、1型では1 回投与ですでに92.3%、2回投与では99.4%が抗体陽性となった。2型ではそれぞれ89.7%、100%である。これに対して3型は、1回投与ではわずかに15.4%であり、2回投与でも85.8%(前回は92%)であった。また、2回投与後64 倍以上の高い抗体保有者が1、2型は90%以上であったのに対し、3型では46.9%にすぎなかった。」とあります。さらに詳しい情報は、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページ(http://idsc.nih.go.jp/index-j.html)の[免疫状況]をご参照下さい。  生ポリオワクチンの優れた効果により、日本を含めた西太平洋地域では根絶宣言がなされています。日本のような地域では、生ポリオワクチンをのんだ子供からその親にワクチンウイルスが感染し、麻痺を生じた例が極めて少ないながらも報告され、問題になっています。ただし、ポリオはまだ世界レベルでは 根絶されてないため、野生株ポリオの発生を根絶状態で維持するためには、ワクチン接種率を現状通り高く保っておくことが重要と考えます。
 現在、昭和50 年〜52 年生まれの人に接種を勧奨していますが、接種は任意接種となります。子供と同様に保健所で対応可能かどうかはそれぞれの市区町村によって対応が異なるため、お住まいの市区町村に問い合わせてみることをお勧めしています。定期接種対象年齢以外の者については、予防接種センターのようなところで接種をしている地域が多いように思います。
 親にも子供と一緒にワクチンをのんでもらうというのは、子供がのんだワクチン株が便中に排泄され、それが親に感染し稀に麻痺をおこすという状況を減らすと考えられます。それ以外にも、便の取り扱いをきちんとしてもらう、おむつを替えた後の手洗いをしっかりするよう指導することが重要と考えます。特にポリオ抗体価が全く陰性の人では、子供が生ポリオワクチンをのむことになった場合、ポリオが流行している地域に渡航する場合などに、接種することが強く勧められます。

(感染症発生動向調査週報 IDWR 2002年第16週)


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