感染症対策の見直しについて


厚生省保健医療局エイズ結核感染症課長

岩尾 總一郎


1.見直しの背景・必要性
 近年の感染症を取り巻く状況を考えてみると、新興感染症(Emerging Diseases)や再興感染症(Re-Emerging Diseases)が問題となっている。国際交流の活発な現在においては、これらの感染症の流行は局地的なものに止まらず、世界的に急速に流行する恐れがあり、我が国も決してその例外ではないこと、また水際防疫により感染症の侵入を防ぐことには限界があること等から、これらの感染症の流行に備えた適切な対策を確立する必要がある。また、現行の感染症対策が体系化された当時に比べて、国民生活や公衆衛生水準の向上、国民の健康意識の高揚、医学・医療の進歩、人権への配慮の要請等、体系確立の前提となった諸条件は大きく変化している。これらの諸環境の変化を踏まえ、現行の感染症対策の体系について再検討を加えるとともに、新興感染症等の発生に備えた感染症対策の新たな体系を整備することが必要である。

2.検討状況
 感染症対策の見直しについては、平成10年の通常国会への関連法案提出を目指し、平成8年10月に公衆衛生審議会伝染病予防部会の中に基本問題小委員会を設置し、平成9年5月までに計8回の小委員会を開催した。(1)法律の目的、(2)感染症の分類と必要な対策、(3)医療機関における患者の入院のあり方、(4)患者への行動制限のあり方とそのために必要な行政手続き、(5)原因不明の疾患への対応、(6)検疫のあり方、(7)人畜(獣)共通感染症対策、等が検討されたところである。さらに6月までに(8)国と地方の役割分担、(9)医療費公費負担のあり方、(10)法律の体系等の検討が予定されている。

3.今後の予定
 現在進められている基本問題小委員会の議論については、平成9年6月末を目途に中間的な意見書が取りまとめられる予定である。その後さらに議論が進められた上で12月までに最終報告がまとめられる予定である。その報告に基づいて伝染病予防法等の改正案を平成10年の通常国会に提出する予定である。
 これまで100年間続けられてきた現行の伝染病予防法等に基づく感染症対策の体系を根本から再構築するという作業の中で、感染症学会の皆様を初めとして関係各方面からの御意見を期待するとともに、とりまとめや実施に当たっての御指導・御協力をお願いしたい。





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