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「メディアとリスクコミュニケーション」
 

読売新聞東京本社科学部
宮崎 敦(写真)

 国立感染症研究所感染症情報センター長
岡部 信彦

 


メディアとリスクコミュニケーション

読売新聞東京本社科学部 宮崎 敦

 96年に岡山県や大阪府で起きたO157の集団感染事件以降、メディアが感染症を取り上げる機会は、飛躍的に増えた。特にここ数年になって、BSE、SARS、高病原性鳥インフルエンザなどの新手の感染症に、いかに対応するかという問題が、国家や社会の危機管理の観点からも注目を集め、国内のメディアが盛んに報じる時代となった。

 危機管理という側面から感染症の情報発信を考えると、平時には、医学的に正確な感染症の情報を、いかにわかりやすく国民に伝え、知識として浸透させるかが大切になる。だが、例えば集団感染が発生し、社会に動揺が広がりつつあるという緊急時には、時には断片的な情報であっても、迅速かつ継続的に社会に発信していくことが、感染の拡大と無用なパニックの双方を防ぐ、重要な鍵となると思われる。一方で、感染症は、患者や家族のプラバシーに配慮しながら情報を発信するという制約もあり、緊急時に社会が求める情報を的確に発信していく作業は、簡単ではない。

 感染症に強い社会を作るためには、情報の発信源である行政担当者や研究者と、情報を国民に伝えるメディアの双方が、感染症の情報を適切に発信することが必要だ。行政担当者や研究者は平時から、メディアに情報を発信し、可能な限りメディアと信頼関係を築いておくことが望ましい。またメディアや社会が緊急時にどのような情報を求めるのかを理解し、平時から十分に、広報の準備をすることが大切だと考える。そして緊急時には、情報がメディアを通じて社会に伝わる中で、どのような影響が現れ、ハイリスク集団への警鐘や、感染の拡大防止に役立っているのか、風評被害を広めていないかなどに配慮し、情報を随時、追加・修正していく作業も、重要になると考えている。

感染症報道を担当してきた一記者から見た、感染症の情報発信と社会の危機管理のあり方について、考察したい。

     資料/宮崎(1 MB)

     資料/岡部(32 K)


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