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「感染症情報発信機関間の情報連携網の構築と活用について」
 

奈良県保健環境研究センター
   大前 利市

地方感染症情報センターのネットワーク

1.情報とは何か 〜情報の意味と情報網の重要性〜

〜情報とは?〜

「情報」=<行動を起こす際の判断材料になりうる知らせ>(新明解国語辞典、他)。

⇒何が自分の行動を決める時の重要な「知らせ」になるのか?
⇒「情報であるか否かは受け手側のあり方が決定する」、「意思と知識によって情報となり得る<知らせ>の範囲が増える」、の2点が重要な点。「与えられる」のではなく「自ら得る」視点が重要。

例:平安時代の後三年の役(1086〜1087年)における源義家の逸話。

 〜情報連携の重要性〜

 例:「天明の大飢饉(1783−1787年)」東北の南部藩(=現在の青森県東半分と岩手県北半分を治めた藩)に起きた歴史上最も悲惨な大飢饉。人肉市の成立や死肉食いが報告されている。

江戸時代の飢饉被害が甚大になった理由(樋口清之;「逆・日本史」より):

1)飢饉対策としての備蓄を藩が政策としなかったこと

2)各藩孤立の封鎖社会状態だったので他藩の情況が伝わらなかった

3)九州に余剰米があってもそれを東北諸藩に輸送すると云う物資の融通が利かなかったこと

  1)=危機対策拙劣さ、2)=情報連携の欠如、3)=情報を生かす方策の欠如、を示している。

2.公衆衛生活動における情報の役割 〜医療(病院)と公衆衛生(保健所)の比較から〜

〜病院と保健所の活動内容の比較〜

病 院:患者の情報の抽出・解析・対策(診察・診断・治療)は通常同一医師であり、連携機関の殆どは同様に医療機関で、事例を直接把握(=診察)できる場合多く、専門家同士の連携が殆ど(医師-医師連携が多い)である。

保健所:情報の抽出・解析・対策は通常異なり連携機関は多種に及ぶ(病院・保健センター・学校・児童相談所・介護施設・・・等)上に、事例の直接把握が出来ない場合が多く、連携する職種は多岐にわたる場合が多い。

〜‘情報’からみた医療と公衆衛生の比較(上記検討結果の一般化)〜

<医療>

1)連携機関それぞれが生情報を入手できる場合が多い(=診察可能状況が多い)
2)知識-経験の背景素養が共通の場合が多い

⇒ 正確な情報共有の可能性が高い

<公衆衛生>

1}関係機関それぞれが生情報を入手よりも間接(=文字)情報のやりとりが多い
2}背景素養が大きく異なる場合がある ⇒ 情報共有に誤りの混入する危険性が高い

3.地方感染症情報センターの情報連携網構築の試みと実際

成立の経緯:全国の情報センター設置情況及び担当者の一覧リスト作成(平成13年度)→Webを用いて名簿管理システムの構築とメール交換の実現を達成(平成14年度)→名簿管理システムから各センター担当者の情報交換システムへ機能改善(平成15年度)→使いやすいように機能の細部見直しと情報連携網範囲の拡大、及び有用性評価(平成16年度)

本システムの特徴と作成者の意図:本システムは担当者間限定の非公開連携システム

参加者間の電子討論会のための情報交換システムは感染症メーリングリスト(ML)や他のMLが存在しており、業務に直結した秘守性の高い情報を共有するシステムの構築を考えている。

活用の具体的事例:感染症発生動向調査事業見直しのセンター担当者の意見集約(15年度)・性感染症全国調査におけるセンター郵送先確認(16年度)・感染症対策関係の情報提供

今後:連携範囲拡大と感染症検査結果(画像)の送受信可能なシステムを検討中(一部試行開始)


     資料(680 K)

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