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わが国における動物由来感染症対策―動物展示施設におけるガイドライン策定の試み
  国立感染症研究所 獣医科学部    部長 山田 章雄

Taylorらによれば現在ヒトに感染することが知られている感染症は分類上の種で1415に上る。このうち868種(61%) がzoonosisであるとされている。すなわちヒトが感染する病原体の半数以上はヒト以外の動物にも感染する。では動物由来感染症対策はヒトにのみ感染する病原体と比較して特別なものであろうか。感染症が成立するためには感染源、感染経路、感受性ポピュレーションが必要な要素である。感染症対策の基本はこれらの要素に対して適切な対応を行うことである。動物由来感染症では感染源が動物であるため、通常の感染源対策とは異なり、感染源となる動物においても上記の3要素が適応されるため対策が複雑なものとなる。

感染源となる動物は、便宜上伴侶動物、産業動物、展示動物、野生動物に大別できる。公衆衛生の視点からは伴侶動物、産業動物はあまり問題にする必要はないと思われる。野生動物もヒトとの距離が十分保たれていれば本来はあまり問題にはならないのだろう。しかし、近年はヒトと野生動物の距離が著しく短縮していることから、さまざまな感染症が野生物を介して人に感染する可能性は増大している。

展示動物の多くはもともと野生である場合が多い。動物展示施設の目的はさまざまだが多くは教育や学術研究に多大な貢献をしているし、一方来園者に対して癒しや安らぎを提供するなどの社会的役割も期待されている。こうした施設であるがゆえに、不特定多数のヒトがさまざまな種類の野生に近い動物に通常より接近することは当然のことである。従って公衆衛生上の問題点の有無の把握と、考え得る問題点の解決策を予め用意しておくことは極めて重要である。

動物展示施設には種を保存するといった重要な機能が求められつつあり、貴重な動物が収集されている場合がある。これらの動物の健康を維持し、種の保存を確実にするためには施設内の衛生管理、疾病のサーベイランスを中心とした予防管理体制が必要である。これらの総合的衛生管理体制のなかに動物由来感染症を組み込むことが重要だと考えられる。

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