感染症情報センター地域保健平成13年度危機管理研修会




諸外国における侵入動物および侵入ベクターに対するサーベイランス・システムの現状と課題

国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース
 田中 毅

    厚生科学研究(生活安全総合研究所)「侵入動物及び侵入ベクターに対するサーベイランス・システムの構築に関する研究」の一環で、平成12年12月から平成13年2月にかけて、ニュージーランド、シンガポール、ドイツの3カ国を訪問し、各国における侵入動物及び侵入ベクターに対するサーベイランス・システムの現状と課題、及び人と動植物の検疫システムの現状について関係者と討議をもった。特に、ドイツではウシ海綿状脳症(BSE)の流行と新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(nvCJD)の危険性について、現状と対策を調べた。
 今回訪問したニュージーランド、シンガポール、ドイツの3カ国は、地理、社会構造、産業形態、政治システムの相違によって、侵入動物及び侵入ベクターに対するサーベイランス・システムが構築されていた。共通点として、1)新興再興感染症のサーベイランスであったこと、2)省庁間の権限を調整してサーベイランスと対応策が構築されようとしたこと、が挙げられる。これは日本の侵入動物及び侵入ベクターサーベイランス・システムの構築においても重視されるべき点である。
 検疫システムは、各国間でそのシステムは大きく異なっていた。3カ国で共通して言えることは、1)動物検疫システムは、国レベルまたは地域共同体レベルで強化されつつあること、2)人検疫システムは、程度の差こそあれ、水際検疫から脱却し、地域の感染症サーベイランス対応システムに包含されていること、3)日本の検疫所が行なっている旅行者への健康サービスは、各国では地域のトラベルクリニックが代行していること、の3点であった。
 今後、今日の日本に必要とされる侵入動物・ベクターのサーベイランス・システムの内容と形態を検討し、合わせて既存のサーベイランスを評価していく必要があると思われた。


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