警報発生システムの開発
背景 法改正に伴う対象疾患の変更
新しい定点設計
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平成10年度厚生科学研究―定点の設計
平成11年度厚生科学研究―警報発生システムの開発
警報発生システム開発の目的
・原因究明や流行拡大阻止対策などを講ずるための資料として、専門家に対して、データになんらかの流行現象が見られたことを、迅速に、注意喚起すること。
・専門家によるデータの丹念な観察を代替するものではなく、それを補助するものと位置付けられる。
警報発生の単位
・保健所
感染症の流行発生 地域局在的に起こり、時間の経過とともに
地域的に流行が拡大していく
↓
流行現象が広い地域に拡大する前に、より早期の段階で警報
が発生し、流行の拡大を阻止しなければならない
↓
より狭い地域での流行状況
感染症発生動向調査における最小単位=保健所
警報と注意報
・流行発生警報=大きな流行が発生しつつある。
「比較的稀にしか生じないほど大規模なもの」
・流行発生注意報=大きな流行が今後発生する危険がある。
「流行現象の発生前(警報の発生前)に、流行現象が今後4週間以内に生ずる(警報が発生する)可能性が高い」
警報発生の基準値
・過去5年間(のべ17万週=663保健所×52週×5年間)の観察から基準値を決める
・「比較的稀」=警報を出す頻度を1%に設定
1保健所で5年間に平均2.6回
注意報発生の基準値
・過去5年分(のべ17万週)のデータを観察
・流行現象の早期把握精度を感度、特異度、陽性的中率の3者で規定
感度 70%以上
特異度 98%以上
要請的中率 30%以上
警報・注意報の基準値
基準値はすべて定点当たりの値。
注意報の数字が入っていないものは、注意報の対象外
流行発生警報 | 流行発生注意報 | ||
警報対象疾患 | 開始基準値 | 継続基準値 | 基準値 |
インフルエンザ | 30 | 10 | 10 |
咽頭結膜熱 | 1.0 | 0.1 | - |
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 | 4 | 2 | - |
感染症胃腸炎 | 20 | 12 | - |
水痘 | 7 | 4 | 4 |
手足口病 | 5 | 2 | - |
伝染性紅斑 | 2 | 1 | - |
突発性発疹 | 4 | 2 | - |
百日咳 | 1.0 | 0.1 | - |
風疹 | 3 | 1 | 1 |
ヘルパンギーナ | 6 | 2 | - |
麻疹 | 1.5 | 0.5 | 0.5 |
流行性耳下腺炎 | 5 | 2 | 3 |
急性出血性結膜炎 | 1.0 | 0.1 | - |
流行性角結膜炎 | 8 | 4 | - |
警報発生後の対応
・当該保健所の流行の推移(過去5週間の定点当たり報告数など)を確認するとともに、当該都道府県内の全保健所の警報発生状況と全国の警報発生概況を参照。
・必要があれば、定点医療機関医師の意見、地方衛生研究所より病原体の情報を収集し、総合的に解釈した上で、実際に一般への広報や流行拡大阻止対策などの行政対応の必要性を検討あるいは実施。
警報発生を見る上での注意
・現在、警報・注意報の対象となっていない疾患
発生動向調査方法の変更などにより過去のデータがなかったり、現在までに得られたデータからでは、警報・注意報の発生方法が確定できないためであり、重要性が低いという意味ではない。
・本警報システムでは、過去5年間で1%以下の確率でしかおこらない規模の流行、すなわちかなり大きな規模の流行を想定しているため、小規模の流行、あるいは小地域での流行では、実際に地域流行があっても警報が出ない可能性がある。
・極めて限られた地域での流行では、警報が発生されてもその流行が継続や拡大をしない可能性もある。
・本システムでは一定期間後の見直しを予定している。
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