感染症情報センター地域保健平成13年度危機管理研修会





国内におけるサーベイランスシステムの概要と問題点

国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC)
岡部信彦

平成11年4月に施行された感染症法では、サーベイランスシステムの強化が示されている。同法に基づいた基本指針の中には患者発生状況サーベイランスと同様に病原体に関する情報の収集、分析及び提供と公開も必要であるとされている。指針をふまえた局長通知では、感染症発生動向調査事業の実施について述べられている。その中には国立感染症研究所に中央感染症情報センターを、地方感染症情報センターを各都道府県等域内に1カ所設置することが述べられ、それぞれの役割が記されている

IDSCは、中央感染症情報センターとして位置づけられ、地方感染症情報センターならびに都道府県等の協力を得て、感染症法に規定された1-4類感染症を中心にしたサーベイランスを行っている。病原体情報についてはWISH Net, IDSCホームページ(http://idsc.nih.go.jp/index-j.html)、病原微生物検出情報(IASR)を中心として、疾患の発生動向については感染症週報(IDWR: Infectious Disease Weekly Report)などを中心として、収集された情報の迅速な還元と公開を行っているところである。

最近の約1年間にIDSCが感染症サーベイランスについて積極的に取り組んだこととしては、以下のものがあげられる。
・WISH参加関係機関に対して、WISH個別システムとフォーラムに還元データ速報閲覧や速報記事として、IDSCより発信するようになった。
・インフルエンザウイルス分離株情報がオンラインに一本化され、IDSCに送信され、還元情報もIDSCより発信されるようになった
・サーベイランス情報の確認、フォローアップなどについて、地方感染症情報センターの協力によってきめの細かいサーベイランスが可能になってきた。
・実施疫学調査専門家養成コース(FETP)が2年間を経過、on the job training としての日常のサーベイランスが充実し、積極的な疫学調査の依頼件数、地域における調査に関する相談件数などが増加してきた。
・感染症法施行後の平成11年4月より平成12年末までの感染症サーベイランス結果につき、都道府県並びに地方感染症情報センターなど関係機関の協力により、CD-ROM版によるデーター集がこのたび発行されることになった。

感染症法は制定から5年後に見直しをすることが定められている。我が国のサーベイランスは、法改正をきっかけに多くの改善が行われた。しかし、対象疾患や疾患定義の問題、サーベイランスの質の問題、個人情報と公開情報のバランスの問題、入力システムそのものの問題、感染症対策への反映の問題、等々、法内容あるいは運用方法の改善や修正など、見直すべき点も多々ある。サーベイランスはデーターの集積のために行うものではなく、感染症の対策に利用されるべきものとして存在する。それぞれの疾患についてサーベイランスを行う目的を明確にし、なおかつ包括的なものを構築していく必要がある。

より質の高い、感染症の対策に有用なサーベイランスの構築のために、建設的な意見を是非提供していただきたい。

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