第2セッション:No. 2

二類感染症(コレラ、細菌性赤痢、腸チフスを中心に)


横浜市立市民病院感染症部 相楽 裕子

 

 1999年4月1日から「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」が施行された。臨床現場における最も大きな変化は感染症類型化、感染症指定医療機関制度、72時間以内の応急入院制限と感染症審査協議会である。このような変革に対する現場の対応、運営上の問題点等について、13大都市立感染症指定医療機関(旧13大都市立伝染病院)16機関に対するアンケート調査を中心に述べる。これらの病院は第1種あるいは2種感染症指定医療機関として診療を行っている。
 最大の変化は細菌性赤痢の入院例が激減したことである。従来は赤痢菌が検出された場合、たとえ無症状であっても一定期間入院の義務があったが、今回の法改正により無症状者の外来治療が可能となったためである。入院期間は74%が72時間以内である。昨年は国内の集団発生があったために入院する例が多く、かつ入院期間が長引いたが、海外感染例が増えればほとんどが72時間以内に退院すると考えられる。その他の感染性腸炎の入院期間3〜5日とほぼ同等になった。コレラも同様の傾向である。腸チフス・パラチフスでは病院により対応が異なるが、治療に要する入院期間は平均17.2日で、10日間近く短縮された。勧告入院を解除する基準は臨床的に治癒と認められることで、多くの施設が解熱後1週間前後としている。患者に対する適正な医療提供という観点から常識的な線と考えられる。
 コレラでは従来、O1型では隔離、O139型では病状により入院と対応が分かれていたが、新法では統一されたため特に問題は発生していない。細菌性赤痢と腸チフス、パラチフスの問題点は以下の通りである。1)同定の遅れ。一般病院では1週間近くかかることがまれでない。2)疾病に対する不正確な認識。医療機関では輸入感染症としての認識不足、一般市民では伝染病に対する認識のため会社や家族の理解が得られず、やむを得ず入院となった例もある。3)除菌の確認。現在は一部入院例もあるが、今後は外来治療が一般的になると考えられるので、病院と保健所の連携を密にする必要がある。ニューキノロンやホスホマイシン耐性菌が増えてくれば、再排菌の可能性が高くなる危険がある。3)菌の疫学的、細菌学的分析。菌株が分散するため、地方衛生研究所等に集めて分析する必要がある。4)患者数が多い施設、チフス性疾患を扱う場合に感染症審査協議会の簡略化を希望する声がある。

 

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