第2セッション 耐性菌サーベイランス



耐性菌サーベイランス情報の収集と還元
国立感染症研究所 感染症情報センター
感染症対策計画室  
進藤 奈邦子

<耐性菌サーベイランス情報の収集>
現在までに、厚生省新興・再興感染症研究事業「薬剤耐性菌による感染症のサーベイランスシステムの構築」に関する研究班では、細菌検査室研究班、国立病院研究班、ICU研究班の3つのコンポーネントに分かれて、薬剤耐性菌による感染症患者の試験的データ収集を開始している。

1、 検査部を中心としたサーベイグループ=菌側からのサーベイランス
耐性菌だけでなく、細菌検査室で分離された菌全てを対象としたデータベースのシステムを構築中。このようなサーベイランスを継続するためには、データ収集システムのオートメーション化を早急に整備する必要があり、基本的に検査装置、患者情報管理システムからの必要データの自動取り込みシステムが不可欠である。
平成12年度からの実施に際しては、参加施設を層別化し、実行可能なデータ群を割り振ること、期間を特定しての実行を検討している。

入力される情報  
・細菌検査室で分離された菌の全数

箇々の菌につき
・施設属性データ:施設コード、ベッド数(総・科別)、一日患者数、(入院・外来)、検査 
・ 依頼数(検体別)
・ 患者属性データ:ID、生年月日、性別、診療科、入院日
・ 検体データ:検査材料名、検体提出日
・ 菌データ:分離菌種名(感染症起因菌名)と適応がある主な抗菌薬に対する耐性度(MIC
・ 値、または阻止円の直径)

分離された菌がMRSA、PRSP(PISP)、VRE、緑膿菌などブドウ糖非発酵菌、肺炎桿菌など腸内細菌、インフルエンザ菌、淋菌による感染症、または、その他の菌種については血液、腹水、胸水、髄液などの無菌的検査材料から菌が分離された場合
・ 感染症データ:感染症名(部位)、体温、CRP、白血球数、(貪食像)
・ 抗菌薬データ:抗菌薬(検体採取前の1週間)
・ 基礎疾患等に関するデータ:基礎疾患名、免疫抑制剤、ステロイド、抗癌剤、放射線療法、手術名、手術日
・ デバイスデータ:膀胱留置カテーテル、中心静脈留置カテーテル、SGカテーテル、ドレーン、気管内挿管、人工材料
・ 転帰データ:退院日、転帰(生存・死亡)、最終診断名

2、国立病院のネットワークを利用したサーベイグループ=患者情報を含む耐性菌情報
国内最大のチェーン・ホスピタル群である国立病院・療養所をつなぐHOSPnetを活用し、とくに問題と考えられる主な薬剤耐性菌による感染症の実際を把握することを目標とする。(通年)
平成10年度・・・九州地区で試行。
平成11年度・・・全国12施設で試行。

対象菌種:MRSA、PRSP、VRE、(VRSA)、メタロ-β-ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌、ESBL産生菌など

感染症例について患者情報と菌情報を収集:本サーベイランスにより@菌種別の、A感染症発生頻度、B症状、C診断名、D基礎疾患の関与、E手術、カテーテル、IVHなどの影響、F使用薬剤の関与、G抗菌薬の使用状況と有効性、H予後に関するデータが得られ、薬剤耐性菌の広域での状況、地域性、病院の特性、診療科の特性などを検討し、対策をたてることができる。
 
3、ICUを中心としたサーベイグループ=院内感染の感染率
 ICUを中心としたサーベイグループでは、耐性菌感染症をはじめとする院内感染症のサーベイランスを行う。院内感染症に関するサーベイランスは、医療の計画、実施、評価を行う上で必要な感染症の患者データを経時的かつ体系的に収集、分析、解釈し、その結果を医療現場に還元し、よって院内感染の発生率を低下させることを目的とする。いわば米国におけるNNIS*(National Nosocomial Infection Surveillance )に相当するサーベイランスであるといえる。

NNIS*は現在世界で最も完成度が高いといわれている米国CDC内に設置された院内感染サーベイランスシステムである。

入力される情報 
・ 患者属性データ:名前、年齢、性別、ID番号、診療科、入室日
・ 感染症データ:発生日、感染部位
・ 検査データ:病原菌、感受性
・ リスク因子:抗菌薬の術前投与、導尿カテ、CVPライン、末梢ライン、BSI、人工呼吸に関連した肺炎、
・ 転帰(2次性のBSI、院内死亡、入院/入室期間)
・ 医療費
・ 術後感染症に関しては、
・ 術式、・日時、・手術時間、・清潔度、・ASA・全/局麻、・内視鏡、・多手術、・緊急、
・ 外傷を入力項目とする。

データソース
・ Case-finding 入退院係、細菌検査室、病棟管理係で行う。
・ Case-confirmation 患者記録(カルテ)と医療スタッフのインタビューで行なう。       

データの収集
・ ICPまたは独立した感染症対策チームが望ましい。


<情報還元>
1、 検査室を中心としたサーベイランスグループ
    参加施設へのデータベース供給(解析ソフト込み)、各施設で加工が可能。
    国立感染症研究所での解析結果-ホームページ?
     定型的解析

施設規模別 菌種の分離率
科別の菌種の分離率
菌種別薬剤感受性分布
病院種別 菌種の分離率
科別の菌種の分離率
菌種別薬剤感受性分布
基礎疾患別 菌種の分離率
科別の菌種の分離率
菌種別薬剤感受性分布
感染症別 菌種の分離率
科別の菌種の分離率
菌種別薬剤感受性分布
検体別 菌種の分離率
科別の菌種の分離率
菌種別薬剤感受性分布
使用抗菌薬別 菌種の分離率
科別の菌種の分離率
菌種別薬剤感受性分布

      年次動向

      特殊解析
       感染症別 菌種別 予後
       感染症別 菌種別 医療費
       基礎疾患別 菌種別 予後
       基礎疾患別 菌種別医療費

2、 国立病院のネットワーク
    データを国立熊本病院で解析し、HOSPnetを介して参加施設に還元。

3、 ICUを中心としたサーベイランスグループ
  一定期間のサーベイランス結果を所定の方法で分析する。結果は論文形式で還元される。




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