第3セッション 予防接種



ポリオコントロールと不活化ワクチン
国立感染症研究所
ウイルス第二部長  
宮村 達男


 ポリオ根絶計画が着々と進行し、すでに南北アメリカで野生株ポリオウイルスは一掃されて久しい。我が国の属する西太平洋地域でも、1997年3月のカンボジアの一例を最後に、マヒ患者から野生株は分離されていない。根絶計画の最大の課題である野生株の伝播は断ち切られたといってよい。しかし一方で、インド、バングラディッシュなど南アジア地域やアフリカ地域では、6000例以上のポリオ患者が1998年に報告されている。WHOでは2000年の目標達成のため、最後の拍車をかけている。

 野生株ポリオウイルスの伝播が断たれると、次に先ず新たな目標が設定される。現在の計画はマヒ患者からのウイルス分離を大原則としているが、野生株ウイルスはマヒ患者以外のヒトや環境中に検出されないか? ワクチン株によるマヒ患者からのウイルス排泄はいつまで続くか? このウイルスから二次感染がおこらないか? 検討しなければならない問題は、実は山積している。

 わが国ではポリオウイルス根絶の最終段階に入り、根絶の宣言に向けて最後の確認段階に入った。その一方で、不活化ワクチンの導入に向けての準備も進んでいる。グローバルなポリオコントロールには生ワクチンが不可欠であるが、野生株が一掃されたあとは不活化ワクチンも又、必要とされる。不活化ワクチンの現在の準備状況と、その特徴について概説する。



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