第2セッション 耐性菌サーベイランス


院内感染対策のための耐性菌サーベイランスの必要性
厚生省医薬安全局安全対策課
副作用情報専門官 三宅 智


公衆衛生の向上や抗生物質の開発をはじめとした医学、薬学の進歩とともに、多くの感染症が克服されてきた。しかし近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)など抗生物質に耐性、あるいは低感受性の病原微生物の出現が、新たな医療上の課題となっている。とりわけ病院内の感染対策を考える上で、従来からの伝染性疾患に加え、人口の高齢化や、移植医療技術の向上などに伴った易感染患者に引き起こされる日和見感染、あるいは注射の針刺し事故等による医療従事者への感染すなわち職業感染等、現在の感染症問題は複雑かつ多岐にわたっている。

 厚生省としても、MRSAやVRE、ウィルス性肝炎等の院内感染に関する各疾病についての対策指針を作成するとともに、平成5年度からは、日本感染症学会の協力のもと、院内感染対策講習会の開催、ファクシミリによる相談窓口事業、院内感染に関する調査研究の推進、個室化や機器の整備に対する補助事業等に取り組んできているところである。中でも特に感染症研究所の荒川細菌・血液製剤部長を班長として「薬剤耐性菌による感染症サーベイランスシステムの構築に関する研究」を平成9年から実施しており、この研究をもとに平成12年度からシステムの運用を開始する予定であり、その必要性について概説する。

 なお、院内感染については平成10年にはVREが日本で初めて報告され、さらに今年に入ってからは三重県の精神病院や老人施設でのインフルエンザによる施設内感染、死亡者の多発が問題となり、また、5月には兵庫県の透析施設でB型肝炎により数名の死亡者が出て、院内感染が疑われる事件や結核による院内感染の事件が発生している。これらの事件はいずれもマスコミが大きく取り上げる事件となり、社会的に大きな関心を呼んだ。このような事件の発生時に、行政の迅速な対応が求められてきており、今後、ますますこうした事例が増加することが予想され、医療行政の危機管理が求められている。最近経験された事例をもとに院内感染による重大な事件が発生した際の行政の対応についても言及する。




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