第1セッション 感染症新法



Field epidemilology 専門家養成計画
国立感染症研究所 感染症情報センター
センター長  
井上 栄


 近年、感染症に対する国民の考えが変化し、感染症を危機管理の面から見る必要性が認識された。急性の感染症・食中毒が流行・集団発生したときには、初動調査が極めて重要であり、その専門家が必要になっている。迅速に現地に赴き、感染経路の疫学調査を行い、病原体検出のための的確な材料を採取し、感染経路への介入等の適切な対策を行政に提言し、社会の混乱を起こさない ような情報提供のあり方を助言し、事件後には報告を専門誌に投稿する。平成11年4月に施行された感染症新法にも危機管理の視点が盛り込まれ、都道府県知事の責任において積極的疫学調査を行い、国はその援助を行うことになった。(新法第15条)

 このようなfield epidemiology専門家の養成コースとしては、米国CDCの Epidemic Intelligence Service (EIS)が有名である。約50年の歴史を持っている。最近は欧州連合(EU)でも15カ国が共同でそのような専門家の養成を始めた。 感染研では平成11年度から「感染症危機管理人材養成事業」を始めることになった。当面の事業の内容は次の通りである。地方自治体等で感染症対策に従事する医師の中から毎年3人程度を受け入れ、標準2年間の研修を感染研・感染症情報センターで行う。指導は、感染症情報センター専門家2人(CDC、EIS、WHOでそれぞれ2年研修を受けた者)とCDCから招聘した専門家(最初の2年のみ)が行う。指導者・研修生は、国内外の感染症発生時に地元からの要請を受けて現地に赴き調査を行う。研修生は、また情報センターの業務の一部である国内サーベイランスデータの監視、サーベイランス体制の評価・改良、海外感染症情報の収集・評価を行う。さらにこの事業では、指導者・研修生が地方に出張し、自治体の感染症対策職員を対象に短期の研修会を開催することになっている。





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