第2セッション 予防接種について
麻疹根絶にむけて 
市立札幌病院小児科部長
 富樫武弘

1.麻疹の罹患数
 麻疹生ワクチンの普及による自然麻疹の減少
 WHOは vaccine preventable disease として痘瘡、polioに次ぐ疾患と考えられている。
 全世界で麻疹は4500万人が罹患し、100万人の小児が死亡している。
 日本では年間35万人罹患していると推定されている。
 Vaccine prevenable diseaseでありながら、日本は麻疹輸出国に滞まっている。

2.わが国の現状
 予防接種法の改正 1994年10月
 定期接種から勧奨接種へ
 予診票:医師のサインのあとに保護者のサイン
 12カ月ー90カ月 接種期間の拡大
 12カ月ー24カ月 標準的接種期間
 カバー率を正確にだす方法がない。 
 カバー率:通常前年度の出生数で翌年の無料券の回収数を除す。 時に100%を超える場合がある。この計算式で行うと、札幌市では、1993年 83.9%、1994年 81.1%と、変わりがないが、この値は全国的に70−85%の間にあり、感受性者の蓄積によって、全国各地で毎年流行している。
 何故カバー率が100%にならないのか?

3.麻疹ワクチンの有効率
 感染者が殆ど発症する場合のワクチン有効率は、
( 1ー接種者罹患率 /非接種者罹患率 )×100
 で計算され、麻疹ワクチンは、この値が93−97%の極めて有効なワクチンである。 わが国では、Edomnston株由来ワクチンと、田辺株由来ワクチンとが承認発売されており、いずれも優劣がない。10%程度に接種7−10日後の発熱、一部に発疹がある。
米国の統計で、ワクチン接種効果が明らかであり、麻疹患者数の減少、脳炎の減少、10年の間隔を経て亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の発生数が減少した。

4.修飾麻疹と乳児期麻疹
 被接種者で麻疹患者と接触して麻疹を発症する者がいる。これを修飾麻疹という。軽症者が多く、second vaccine failureによる発症と考えられている。 ワクチン世代がchild bearing ageにさしかかってきている。自然麻疹罹患者よりも、児への免疫抗体賦与が少ない。このため乳児期に麻疹に罹患する例(乳児期麻疹)を散見する。
 ワクチン接種率向上→自然麻疹の減少→自然のbooster効果機会の減少→抗体力価の減衰。
 ワクチンの複数回接種の必要性。

5.野生麻疹ウイルスの変異
 1984年を境にH蛋白の変異が野生ウイルスにみられる。
 ワクチン効果を減ずる程度の変異とはなっていない。

6.わが国の接種率向上のために
 1)1歳半健診、3歳児健診で接種の有無を確認し、未接種者には接種を積極的に勧奨する。
 2)小学校入学前健診時の確認、勧奨。90カ月はあくまでも救済的意味であることを徹底する。
 3)日本小児科学会、日本小児科医会、日本小児保健学会の予防接種委員会への呼びかけ。
 4)マスコミへのはたらきかけ。




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