感染症新法について ー厚生省(行政)の立場からー


厚生省結核感染症課長
滝澤秀次郎


1.はじめに
 現在、伝染病予防法、性病予防法及びエイズ予防法の3法の廃止を含めた「感染症の予防及び感染症患者に対する医療に関する法律案」が国会に提出され、審議が進められている。この感染症新法は、@近年の新興・再興感染症の出現、A医学・医療の進歩、B国民の健康・衛生意識の向上、C人権尊重への要請、D国際交流の活発化等を踏まえて、新しい時代の感染症対策を構築するために策定されたものである。
 今回の法案の特徴としては、地域における感染症対策の中核的機関として保健所が位置づけられる等、保健所及び都道府県庁の役割に大きな期待が寄せられていることである。
新しい役割分担に基づく、感染症対策の整理・再構築が求められている。

2.見直しの方向
(1)事前対応型行政の構築
 新法においては、感染症発生動向調査体制の整備、国が策定する基本指針や特定感染症予防指針、都道府県が策定する予防計画を通じた総合的な取り組みによる事前対応型行政を構築することとしている。
(2)感染症類型と医療体制の再整理
 法律の対象となる感染症を一律に規定するのではなく、各感染症の感染力や罹患した場合の重篤度に応じ、1類感染症(ペスト、エボラ出血熱等)、2類感染症(コレラ、細菌性赤痢等)、3類感染症(腸管出血性大腸菌感染症)、4類感染症(インフルエンザ、エイズ、ウイルス性肝炎等)に分類するとともに、指定感染症制度や新感染症制度を設けている。また、感染症類型に応じて医療体制も再構築することとしており、特定、第1種及び第2種感染症指定医療機関に分類して、整備を進めていくこととしている。
(3)患者等の人権に配慮した入院手続
 患者等の人権尊重に配慮した手続保障も、今回の法案の見直しの大きなポイントである。感染症類型に応じた就業制限や入院を規定するとともに、患者の意思に基づく入院を促す入院勧告制度、感染症の診査に関する協議会、30日を超える入院患者に対する行政不服審査請求の特例等を設けることとしている。
(4)検疫体制・動物由来感染症対策の整備
 ウイルス性出血熱等を媒介する危険性のあるサル等の輸入検疫を創設するとともに、国内の感染症対策との連携を図るための検疫法の一部改正、狂犬病予防法の一部改正を行うこととしている。

3.おわりに
 感染症の新法が今国会において成立した場合には、原則として平成11年4月からの施行が予定されており、今後、基本指針や関連する政省令の策定を進めることとなるが、都道府県庁や保健所職員をはじめとして関係各位の御理解と御協力をお願いしたい。




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