当面の食中毒対策について


1.発生予防対策
食中毒の発生を防止するため、@食中毒予防のための家庭用の手引きの普及、A大量調理施設衛生管理指針の普及、B食肉の衛生管理の徹底などの対策を講じてきたところ であるが、本年はこれらに加えて、次の対策を講じることとする。

(1)社会福祉施設等給食の一斉点検
社会福祉施設等(社会福祉施設及び老人保健施設。以下同じ。)には、乳幼児や老人などの食中毒の危険性の高い人々が多く収容されている。実際に、社会福祉施設等における食中毒は、平成8年に事件数28件、患者数917名、平成9年に35件、患者数1,118名と多数発生し、本年も発生の増加が懸念される状況にある。そこで、社会福祉施設等給食の改善点を明らかにし、今後の衛生管理の向上に資するため、一斉点検を実施する。(本年4月〜7月)

(2)学校給食の一斉点検
昨年4月及び5月に学校給食の一斉点検を実施し、この点検結果に基づき、昨年 9月に学校給食施設に対して改善勧告を行った。この際、平成11年度までの改善計画が提出されたところであるが、平成9年度までの改善計画の実施状況等について再点検を行う。(本年4月〜5月)

(3)卵のサルモネラ対策
食品衛生調査会での検討結果を踏まえ、生産から消費に至る全ての段階における卵の衛生的な取扱いを徹底するよう、今後、関係省庁と連携しながら必要な対策を講じる。

(4)食材の汚染実態調査
食中毒を予防するためには、調理施設等における衛生管理の徹底に加え、流通段階における汚染食品の発見及び改善措置が必要である。そこで、近年発生の増加傾向がみられる腸管出血性大腸菌O157及びサルモネラ・エンテリティディスについて、全国の市場等で収去した食材の汚染実態調査を定期的に実施する。

(5)調理施設におけるHACCP試行事業の実施
調理施設においてHACCPの考え方に基づく衛生管理手法の具体的な検討を行うため、昨年より、学校、病院及び保育所の給食施設、病院の院外調理施設、弁当製造施設、レストラン並びにホテルの16施設において、HACCP試行事業を開始したところである。本年も引き続き、この事業を実施し、各施設の調理形態別に 一般的事例の作成を行う。

(6)国民への普及啓発
多様な媒体や方法を通じ、国民に対して食中毒の発生防止に資する情報の提供に努める。

2.原因究明対策
O157等による食中毒の原因究明を確実に実施できるよう、@食中毒発生時の対策 要綱の作成、A食中毒調査のための指針の普及、B検出・解析技術の向上のための研修 会の実施などの対策を講じてきたところであるが、本年はこれらに加えて、次の対策を 講じることとする。

(1)散発事例調査のための指針の検討
腸管出血性大腸菌O157による食中毒は、集団発生のみならず、散発的に発生する事例が数多くみられる。これらの事例の中には、昨年3月の関東・東海地区の発生に見られるように、一見独立した散発事例の多発と見えるが、発生状況及びDNA分析等から散発型の集中発生(いわゆるdiffuse outbreak)と考えられる事例がある。そこで、研究班において適切かつ十分な散発事例調査の実施に資するための指針の検討を引き続き行う。

(2)調査技術の向上のための研修の実施
近年、腸管出血性大腸菌O157や小型球形ウイルスなど、現時点での技術的限界により、食品中からの病因物質の検出が困難な事例が多くみられている。このため、食中毒調査に携わる都道府県等職員に対して、調査技術の向上を図るための研修を実施する。

3.食中毒情報分析対策
昨年4月より、食品衛生調査会食中毒部会に「食中毒情報分析分科会」を設置し、食中毒発生状況等を監視し、迅速に必要な対策の検討を行うとともに、国民に広く情報提 供を行っているところであるが、本年も更にこの体制を強化する。具体的には次のとおりである。

(1)速報対象菌種の迅速分析の実施
昨年3月に食中毒処理要領を改正し、エルシニア・エンテロコリチカO8、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ、サルモネラ・エンテリティディス、腸管出血性大腸菌、ボツリヌス菌の5菌種について、患者の発生を探知した場合には、患者数の多少にかかわらず厚生省に速報を行うよう求めたところである。現在、腸管出血性大腸菌O157、サルモネラ・エンテリティディスについて、国立感染症研究所と連携して発生情報を週単位で集計し地図上に視覚化するとともに、散発型の集中発生の可能性等について分析評価を加えた上で都道府県等に対して情報提供する体制を整備した。今後とも更に速報対象菌種の迅速分析の強化を図る。

(2)病因物質別の国内外の食中毒発生状況分析の実施
病因物質別に国内外の食中毒の中長期的な発生状況を分析評価し、今後の対策の検討を行う。昨年はサルモネラ、ボツリヌス菌、寄生虫、A型肝炎ウイルスを取り上げたところである。今後とも、国内外の食中毒の発生状況を継続的に監視し、今後、発生の増加が懸念される病因物質について発生状況の分析評価を行い、今後の対策の検討を行うこととする。

4.その他
小型球形ウイルスによる食中毒発生状況について迅速な情報提供を行うとともに、食品中からの分析法、汚染指標、予防法等について更に調査研究を進める。




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