第2セッション 予防接種について
平成8年(年度)における定期予防接種実施状況全国調査



名古屋大学医学部国際医療保健学教授
磯村 思



<目的>
新しい接種法の施行と共に大きく変化した定期予防接種の全国各市町村の実施状況に関し平成8年(年度)の市町村レベルにおける実情を調査した。

<方法>
厚生省予防接種研究班の分担研究として定期予防接種実施状況の全国調査を平成2年度以来継続的に実施しているが、今回は平成8年(年度)1年間の状況を一定の調査用紙を用いた市町村単位の調査を各県担当者を通じて依頼、各県で集計後名古屋大学で中央集計した。

<結果と考察>
(1) 集計対象数:平成10年3月末までに42都道府県から100万人以上の小児に関する実施状況の報告があり、全国小児の90%以上の把握が可能であった。
(2) 年(年度)の扱い:ほとんどの都道府県から平成8年4月〜9年3月の集計の報告があった。
(3) 接種予定数の算定法としては殆どの市町村でその年に新規に接種年齢に達したものにそれまでの未接種者数を加えた数字で予定者を算定しているが、一部地区では新規に対象年齢になったものだけを接種予定者としていた。接種を必要としている小児の数を把握するために未接種者数を考慮している地区が増加している実情は各市町村の努力を反映しているといえよう。
(4) 各ワクチンの実施状況:
1) DPT三種混合定期接種1期1回目:全国3,133市町村、1,138,768名の接種者について情報が得られた。接種者の78%が個別接種で実施され 、58%が生後3ヵ月から接種されていた。接種率を接種予定者の何名が接種できたかで算定すると全国では78.0%、接種法式により多少の差が見られた。
2) DT二種混合2期:920,205名中約65%が集団接種で実施され、全体の接種率は約78%、集団接種が約92%で個別の約60%より高かった。
3) ポリオワクチン弱毒生ワクチン:のべ1,979,516名の接種について情報が得られた。接種法式では殆どの接種者が集団接種であり、全体の接種率は84.9%であった。
4) 麻疹ワクチン:全国1,287,869名の接種者で全体の93%が個別接種、95%が1歳から接種されていた。全国の接種率は74.6%であった。
5) 風疹ワクチン(<90ヵ月):1,240,531名の接種者の48%が個別接種、全体の接種率は57.2%で接種方式により45%〜68%の開きがあった。最多集団である無料・個別接種集団が45%なのが目立った。
6) 風疹ワクチン(中学生):590,940名の接種者のうち73%が集団無料接種、24%が個別無料接種、全国の接種率は47.5%で個別接種の接種率23.4%、集団接種が74.6%で個別接種群の接種率の低さが目立った。
7) 日脳ワクチン1期初回:全国1,481,393名の接種者のうち64%が個別・無料、29%が集団・無料で接種されていた。全国の接種率は69.4%であるが個別接種群が67.0%、集団接種群では75.1%となっていた。
8) 日脳ワクチン2期:全国732,826名の接種者で56%が集団・無料、38%が個別・無料で接種され、全体の接種率は66.7%であるが47%〜84%の開きがあり、個別接種の接種率の低さがここでも目立った。
(5) 接種該当者に対する通知法:
広報や新聞などの集団対象の通知だけでなく対象者に個別に接種通知を出している市町村が多かった。接種対象者数の多い地区では困難かと思われるが住民サービスのひとつとしてきめこまかい通知と指導が望まれる。
(6) ワクチン購入方式:
個別接種の地区では市町村がワクチンを購入して接種担当の医療機関に配布する方式よりも各療機関が購入する地区のほうが多かった。
(7)定期接種以外の接種希望者に対する対応、他の市町村居住小児の接種希望者、インフルエンザワクチン接種希望者に対する市町村の対応などに関して各地区における努力が明らかとなった。

<結語>
新しい接種法式においてもポリオ、DPT、麻疹などは接種率の低下は認められなかったが、従来集団接種で実施されていたワクチンの個別化による接種率の低下が目立った。
今後一層のワクチン普及キャンペーンに努力したい。






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