第1セッション 伝染病予防法改正について

3.感染研(サーベイランス)の立場から

国立感染症研究所・感染症情報センター長

井上 栄




1.感染症の予防制圧戦略

2.Surveillance の原義
  sur上 + veil見る=広く見渡す

3.サーベイランス(狭義)の定義
疾病の空間的発生状況およびその時間的変化を継続的に監視することによ
  り、疾病対策の企画、実施、評価に必要なデータを系統的に収集、分析、
解析し、その結果を関係者に迅速かつ定期的に還元する。(CDC 1986)

4.感染症サーベイランス
1) 患者発生
 臨床診断、病原診断。短期対策には迅速な報告が必要
2) 病原体の動向
 分離・検出、抗原・遺伝子の解析。中長期対策に必要
3) 国民の免疫状況
 ワクチン予防可能疾患の血清疫学調査。長期対策に必要

5.感染症新法下での新しい患者サーベイランス(オンライン報告)
1)全臨床医からの届け出
 1〜3類感染症および4類の低頻度・重症疾患の報告
2)感染症基幹病院からの報告
中頻度重症患者
3)定点診療所からの報告
小児の高頻度・軽症疾患 ウイルス性眼疾患 インフルエンザ、性感染症

1)全臨床医からの届け出疾患
1類: エボラ出血熱、マールブルク病、ラッサ熱、クリミア-コンゴ出血熱、ペスト
2類: 急性灰白髄炎、ジフテリア、コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス
3類: 腸管出血性大腸菌感染症
4類: ウイルス肝炎(急性のみ)、エイズ/HIV感染、梅毒、クロイツフェルト-ヤコブ病、,劇症型溶連菌感染症、髄膜炎菌性髄膜炎、クリプトスポリジウム症、アメーバ赤痢、 ジアルジア症、先天性風疹症候群、マラリア、デング熱、黄熱、発疹チフス、回帰熱、炭疽、ブルセラ症、おうむ病、Q熱、つつがむし病、ライム病、日本脳炎、発疹チフス、腎症候性出血熱、Bウイルス病、エキノコックス症、狂犬病、ハンタウイルス肺症候群、レジオネラ症、乳児ボツリヌス症、破傷風、コクシジオイデス症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症  

2)基幹病院報告疾患 (入院患者。一部は病原診断)
細菌性髄膜炎、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎(オウム病を除く)
無菌性髄膜炎、急性脳炎、成人の麻疹
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、薬剤
耐性緑膿菌感染症

3)定点診療所報告疾患(外来患者)
(1)小児科(臨床診断、毎週報告):麻疹 風疹 おたふく風邪 伝染性紅斑 咽頭結膜熱 ヘルパンギーナ 手足口病 感染性胃腸炎 百日咳  溶連菌感染症 突発性発疹 インフルエンザ
(2)内科(臨床診断 毎週報告):大人のインフルエンザ  
(3)眼科(臨床診断 毎週報告):流行性角結膜炎 急性出血性結膜炎
(4)泌尿器科、産婦人科、性感染症科(一部病原診断 毎月報告):淋病、性器クラミジア感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ

6.感染症の監視―新しい体制
1)重症疾患・新しい疾病パターン → 現地疫学調査(field epidemiologist の養成が必要)
2)薬剤耐性菌    院内感染菌のみならず市中感染の起因菌も
3)アジア、世界の感染症   一次情報の収集 アウトブレイク調査

7.サーベイランスが困難な感染症:
   症状発現前のHIV感染

8.累積エイズ発症者数


(人口10万人当たり、1997年、WHO) *日本との比

日本 1.15 *1
フィンランド 5.09 *4
ノルウェー 13.39 *12
スエーデン 17.51 *15
ドイツ 20.03 *17
ベルギー 22.92 *20
英国 25.33 *22
オランダ 29.21 *25
デンマーク 38.71 *34
ポルトガル 47.12 *41
カナダ 50.88 *44
イタリア 70.14 *61
フランス 78.91 *68
スイス 81.42 *70
タイ 101.84 *88
スペイン 117.47 *102
米国 227.16 *197


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