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 感染症の話 1999 年第45週(11月8 日〜14 日)掲載

 
◆クラミジア肺炎

 クラミジアに起因する肺炎であるが、主として周産期感染に起因するC.trachomatisによるものと、市中肺炎のひとつで、臨床では異型肺炎として認識されることの多いC. pneumoniaeによるものの二つの疫学的特徴の異なる疾患を含んでいる。

疫 学
 C. trachomatisは、通常は性感染症の病原体として知られているが、本病原体に感染している妊婦より経膣分娩を介して新生児に垂直感染する。感染妊婦から生まれた児の約50〜75%で、結膜、鼻咽頭、直腸、膣などのどこかの部位に感染がみられると言われているが、最も多い部位は鼻咽頭であり、感染新生児の70%で鼻咽頭からの培養が陽性となる。これらの殆どは無症候性感染であるが、約30%が肺炎を発症する。年長児及び成人における本病原体による呼吸器感染症は極めて稀であり、免疫不全時か実験室内感染など特殊な状況に限られる。
 C. pneumoniaeは報告により異なるが、市中肺炎の6〜19%を占めると言われており、抗体保有状況をみると、思春期で30〜45%に達すると報告されている。季節性は明らかでなく、小児から高齢者まで感染がみられる。幼少児では少ないとする報告がある一方、5歳以下の下気道感染症の9%を占め、5〜16歳では19%を占めるとの報告もある。本病原体はヒトのみに感染すると考えられており、これまで保菌動物は見つかっていない。成人及び小児での無症状病原体保有者は2〜5%と報告されているが、これらの無症候性キャリアの役割はよくわかっていない。感染経路は飛沫感染である。

病原体
 クラミジア属は、細胞内寄生体であり増殖するためには宿主細胞のATPが必要である。これまでにChlamydia psitacci, C. pneumoniae, C. trachomatis, C. pecorumの4種が知られているが、C. pecorumは牛や羊に感染をおこすのみで、これまでヒトに感染をおこしたとの報告はない。またC. psitacciはオウム病の起因病原体であり、クラミジア肺炎は、C. trachomatisおよびC. pneumoniaeによる感染症である。

臨床症状
 C. trachomatis 肺炎は通常、4〜12週齢ころに発症し、非常に早い例で生後2週齢の報告があるが、生後4ヶ月以降の報告はこれまでにない。無熱性の咳嗽、多呼吸がみられる。聴診上ら音を聴取することが多いが喘鳴は少ない。胸部X線上過膨張以外の特徴的な所見はないが、大葉性肺炎像や胸水はあまりみられない。疫学の項で記載したように、結膜炎、咽頭炎を合併することも多い。
 C. pneumoniaeによる感染症では、一般期には無症状〜軽症のものが多く、臨床症状を示すのは感染者の約10%のみという報告もある。症状は肺炎マイコプラズマによる軽症の非定型肺炎に似ると言われるが、最近の報告では一般のその他の肺炎と区別はつかないとされている。軽症のものでは、微熱〜無熱で遷延する咳嗽のみのこともある。また本感染症は、その他の病原体、特に肺炎マイコプラズマ、肺炎球菌との混合感染が多いと言われており、C. pneumoniae の分離された肺炎患者の20%がマイコプラズマとの混合感染であったとの報告がある。また、C. pneumoniae は気管支喘息の炎症を介する引き金としての役割が示唆されており、C. pneumoniae特異IgEの関与が考えられている。

病原診断
 いずれの病原体も、鼻咽頭、喀痰などから(C.trachomatisの場合には結膜からも可能)病原体を分離することが確定診断につながるが、分離は簡単ではなく、適当な輸送培地(sucrose-phosphate bufferなど)の使用、適切な検体保存温度(24時間以内では4度、それ以上保存する場合には-70度)なしでは分離率は非常に低下する。EIAや蛍光抗体法による抗原検出は使用可能であるが、クラミジア属特異抗体を使用しているため、C. trachomatis及びpneumoniaeいずれにも反応する。結膜からのtrachomatisの検出には感度、特異度ともに90%以上で良好な評価がされているが、これ以外では感度、特異度ともに低く、一定の評価はなされていない。PCR法によるDNAの検出は感度の点では分離培養に匹敵、あるいはそれ以上と報告されている。
 血清学的診断では、マイクロ蛍光抗体法、ELISAによりIgG、IgM及びIgAが測定可能であるが、抗体反応の立ち上がりが総じて遅いので、判定には注意が必要である。

治療・予防
 クラミジア属は、マクロライド、テトラサイクリン、キノロンに感受性である。C.trachomatis肺炎の乳児では、エリスロマイシン(50mg/kg/day)2〜3週間投与が行われる。年長児ではエリスロマイシン同量の7〜14日投与が行われる。C.pneumoniae は病原体の分離の困難さから治療効果とその判定に関する報告が限られているが、成人ではドキシサイクリン200mg/day、2〜3週間、小児ではエリスロマイシン50mg/kg/day、10〜14日間、クラリスロマイシン15mg/kg/day、10日間とされている。

発生動向調査について
 感染症新法では、4類の定点把握に分類されており、基幹病院定点からの報告が基礎となっている。報告基準は以下の通りである。
 ○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれかの方法によって病原体診断や血清学的診断がなされたもの。
  ・病原体の検出
    例:気道からの病原体(C.trachomatisまたはC. pneumoniae)の検出など
  ・病原体に対する抗体の検出
    例:血清抗体の有意な上昇など
  ・病原体の抗原の検出
    例:蛍光抗体法、酵素抗体法など
  なお、原因となる病原体の名称についても併せて報告すること

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この記事は、2002年第07週 にて改訂いたしました。

 

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