感染症の話トップページへ戻る

 感染症の話 1999 年第35 週(8 月30 日〜9 月5 日)

 
◆細菌性髄膜炎

 細菌性髄膜炎(bacterial meningitis)は細菌感染による髄膜炎の総称で、化膿性髄膜炎ともよばれる。その多くは急性感染症であり、ウイルス感染が主体である無菌性髄膜炎(漿液性髄膜炎)と対にある。診断にあたっては可能な限り病原診断に基づいた診断名であることが望ましい。
 化学療法の発達した現代にあっても一旦発症すれば死亡率は高く、また救命し得ても重篤な後遺症を残すことが少なくないので、注意すべき重症感染症としてとらえる必要がある。

流行状況
 我が国における細菌性髄膜炎患者の届け出数は、1980年代前半では1病院定点当たりの数は1.0人から0.5人程度に減少したが、1990年代からはほぼ横ばい状態となっている。季節差もほとんどなく、散発的発生が続いているといえる。細菌性髄膜炎の一つでもある髄膜炎菌性髄膜炎は、海外の一部の国で流行的発生がみられるが、我が国ではほとんどみられない。感染症新法の中で細菌性髄膜炎は病院定点から報告される第4類感染症であるが、髄膜炎菌性髄膜炎はその特殊性から全数報告を求める第4類感染症に分類されている。

病原・感染経路
 病原体は多種多様であるが、年令や基礎疾患によって起炎菌が異なる。その主なものは次のようである。
●新生児〜生後3カ月乳児
  B群溶連菌、大腸菌、ブドウ球菌、リステリア
●生後3カ月以降の乳児〜幼児
  ヘモフィルスインフルエンザ菌、肺炎球菌、溶連菌、ブドウ球菌
●年長児〜青年期
  肺炎球菌、ヘモフィルスインフルエンザ菌、髄膜炎菌
●成 人
  肺炎球菌、髄膜炎菌
●高齢者(50歳以上)
  肺炎球菌、グラム陰性桿菌、リステリア
 免疫機能低下などの基礎疾患があれば、リステリア、グラム陰性桿菌などによる日和見感染、頭部外傷後の肺炎球菌、脳室シャント後のブドウ球菌感染やコアグラーゼ陰性菌感染などが多くみられる。なお結核性髄膜炎も、広義の細菌性髄膜炎といえる。
 多くの細菌性髄膜炎は、起炎菌が上気道あるいは呼吸器感染病巣から侵入し、血行性に髄膜に到達するものと考えられる。その他に腸管粘膜やカテーテルを介して粘膜や皮膚に付着している細菌が同じく血行性に髄膜に到達することもある。

主な症状
 発熱、頭痛、嘔吐が早期にみられる一般的な臨床症状であるが、年齢が低いほどその症状は非特異的であり、新生児や乳児では機嫌不良、食欲の低下などを伴う発熱が唯一の指標となることもあるので、注意が必要である。
 頚部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候などは髄膜刺激症状として髄膜炎に特徴的だが、新生児・乳児・幼児では必ずしも明瞭ではない。しかし新生児や乳児では大泉門の膨隆が、診断の助けとなることが多い。

髄液検査・細菌検査
 髄膜炎の診断には髄液検査は必須であり、治療方針の確立のためにも、髄膜炎の疑いがあれば腰椎穿刺を行うことを原則とすべきである。髄液圧の上昇、髄液中の白血球ことに多核球数の増加、蛋白量の増加、糖量の減少などを認めれば本症の疑いは濃厚となる。得られた髄液は遠沈を行い、沈査についてグラム染色を行い検鏡する。この時点で起炎菌が推定できれば、早期の治療方針を立てるのに極めて有用である。迅速診断としてラテックス凝集法による抗原診断も実用化されている。
 細菌培養は、確定診断及び初期の治療方針の確認または修正のために必ず行う。血液培養も必ずあわせて行い、確定診断のための参考とする。得られた細菌の抗生剤感受性試験も、必ず平行して行う。

治 療
 髄液所見から細菌性髄膜炎の疑いがもたれたならば(あるいは無菌性髄膜炎様の髄液所見であっても全身状態が重篤な場合、化膿性髄膜炎を否定しきれない場合など)、細菌検査の結果が得られる前に、年令、基礎疾患などを考慮して起炎菌を想定し、直ちに化学療法を開始する。抗生剤の選択にはあたっては、全国的な耐性菌の動向、所属する医療機関の耐性菌の動向などにも配慮する必要がある。

感染症新法の中での細菌性髄膜炎の取扱い
 細菌性髄膜炎は第4類の定点把握疾患として定められており、基幹病院定点から毎週の年齢別発生数が報告されている。
 報告のための基準は、以下の通りになっている。
 ○ 診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下の2つの基準を全て満たすもの
 1.以下の臨床症状を呈するもの
  ・発熱、頭痛、嘔吐を主な特徴とする
  ・項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候などの髄膜刺激症状(いずれも新生児や乳児などでは臨床症状が明らかではないことが多い)
 2.以下の検査所見を有すること
  ・髄液細胞数の増加(多核球優位であることが多い)
  ・髄液蛋白量の増加
 ○ 上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体診断や血清学的診断によって当該疾患と診断されたもの


【備 考】
  ・原因となる病原体が病原体診断や血清学的診断によって判明した場合には、病原体の名称についても併せて報告すること

(注)すでに述べたように、髄膜炎菌性髄膜炎は第4類全数把握疾患としての届け出が必要である。

   IDWRトップページへ戻る

 

 

 

updated info

この記事は、2001年第41週2003年38週 にて改訂いたしました。

ページの上へ