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 1999 年第34週(8月23日〜29日)




◆感染性胃腸炎

 感染性胃腸炎という診断名は、多種多様の原因によるものを包含する症候群であり、旧感染症発生動向調査ではウイルスまたは細菌による感染性胃腸炎を一括したものであるとの記載があり、特に病原体分離により実態を明らかにすることが望まれるとの但し書きが付いている。また旧調査では乳幼児、特に6カ月から18カ月くらいの月齢のものを特にロタウイルスによるものをサーベイする目的で乳児嘔吐下痢症として別の枠で発生動向調査を行っていたが、このなかには、ヒトカリシウイルス(旧称Small Round Structured Virus; SRSV)によるものも多数包含されており、また感染性胃腸炎の範疇でもロタウイルス性のものが多く報告されているという事実から、新調査ではこれらが一括されて調査対象となっている。

疫 学
 上述のごとく本疾患は、多種多様な病原体が関与しているので、一定の疫学パターンをとらない。しかしながら、過去のデータからすると、例年初冬から増加し始め12月頃に一度ピークができた後、春にもう一つなだらかな山ができ、その後初夏までだらだらと続き、年によってはもう一度小さなピークができた後、減少していくという流行パターンをとっている。ウイルス性、特にSRSVによる流行が12月のピークを形成し、その後春のピークはロタウイルスによって形成され、腸炎ビブリオなど細菌性のものやいわゆる食中毒によるものが夏期の原因になっている。実際には、ウイルス性の報告が多いため罹患年齢は、幼児及び学童期が中心となっている。

病原体
 多くの細菌、ウイルス、寄生虫が本疾患の起因病原体となりうる。細菌性のものでは腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクタなど、ウイルス性のものではSRSV、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなどがみられる。寄生虫ではクリプトスポリジウム、アメーバ、ランブル鞭毛虫などがあげられる。
 感染様式は感染患者からの糞口感染あるいは、汚染された水、食品を媒介とする。ロタウイルスが呼吸器を介して感染するかどうかは、現在のところ結論は出ていない。

臨床症状
 原因となる病原体、あるいは感染様式、感染菌量、宿主の状態により異なるが、発熱、下痢、悪心、嘔吐、腹痛などが見られる。当初発熱が先行し、嘔吐、下痢など腹部症状が遅れて出現することもある。多種多様な病原体によりおこるため、また、食中毒、外科的疾患、炎症性腸疾患などを鑑別するためにも、症状、所見、経過、便性状、腸管外症状、患者背景、季節性、海外渡航歴、ペットの飼育などを参考にして確定診断につなげる。
 検査所見では、特異的なものは見あたらないが、一般に細菌感染症では、白血球数、赤沈、CRPなどの増加が見られる。糞便の肉眼観察、顕微鏡による観察は、膿球(白血球)、カンピロバクタ、寄生虫などの確認に有用である。糞便の細菌培養、ウイルス分離、便中抗原検出などが病原体診断のために行われる。

病原体診断
 病原体診断は、本疾患の治療、拡大防止を行う上で重要である。患者の糞便より、細菌培養(細菌)、ウイルス分離(ウイルス)、直接検鏡(カンピロバクタ、寄生虫)、抗原検出(ロタウイルス、腸管アデノウイルス、EHECO157抗原、ベロ毒素)、電子顕微鏡(カリシウイルス)、PCR(カリシウイルス)を行うことにより病原体を推定・同定する。腸管出血性大腸菌ではベロ毒素やリポ多糖体(LPS)に対する血清抗体を測定することによる血清学的診断も用いられる。

治療・予防
 治療は、ウイルス性のものでは対症療法が中心となるが、細菌性、あるいは寄生虫によるものでは病原体特異的な治療が行われる必要がある。
 ロタウイルスについては、4価ロタウイルスワクチン(RotaShield, Wyeth Laboratories,Inc., Marietta, Pennsylvenia;RRV-TV)が米国において小児の予防接種として認可されたが、その他の病原体に対する特異的な予防方法はなく、食中毒の一般的な予防方法を励行することと、ウイルス性のものに対しては、流行期の手洗いと患者との濃厚な接触を避けることである。いずれの病原体においても院内、家庭内、あるいは集団内での二次感染の防止策を考慮することが肝要である。
 また、汚染された水、食品が原因となっているものでは集団食中毒の一部を捉えていることも考慮に入れ、原因を特定するために注意深い問診を行うことが、感染の拡大防止や広域集団発生の早期探知につながる。

発生動向調査について
 感染性胃腸炎は4類感染症のうち定点把握疾患となっており、小児科定点から毎週の年齢群別発生数が報告されている。報告の基準は以下の通りである。
○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ以下の2つの基準を満たすもの。
 1. 急に発症する腹痛(新生児や乳児では不明)、嘔吐、下痢
 2. 他の原因によるものの除外
○上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体診断や血清学的診断によって当該疾患と診断されたもの。

学校保健法での取り扱い
 本疾患は学校において予防すべき伝染病の中には明確に規定はされていない。ウイルス性疾患を念頭においた流行性嘔吐下痢症が、学校で流行がおこった場合にその流行を防ぐため、必要があれば、学校長が学校医の意見を聞き、第3種学校伝染病としての措置を講じることができる疾患のうち、条件によっては出席停止の措置が必要と考えられる伝染病のひとつとして例示されている。登校登園については、急性期が過ぎて症状が改善し、全身状態の良いものは登校可能となっており、流行阻止の目的というよりも患者本人の状態によって判断すべきであると考えられる。もちろん、病原体診断により、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフスなどの特異的な診断がなされた場合には、それぞれの疾患の規定に従う。

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この記事は、2001年第39週2003年11週 にて改訂いたしました。
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