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 感染症の話 1999 年第19 週(5 月10 日〜16 日)掲載

 
◆風 疹

 風疹(rubella)は、発疹と発熱がほぼ同時に現れ、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症である。風疹ウイルスはTogavirusに属するRNAウイルスで、血清学的には亜型のない単一のウイルスである。

我が国における流行状況
 風疹は2-3年の周期で10年ごとに大流行がみられていた。最近では、1976、1982、1987、1992年に大きい流行がみられているが、次第にその発生数は少なくなりつつあり、流行の規模も現在のところ縮小しつつある。季節的には春から初夏にかけてもっとも多く発生するが、冬にも少なからず発生があり、次第に季節性が薄れてきている。

主な症状
 感染から14-21日(平均16-18日)の潜伏期間の後、発熱・発疹・リンパ節腫脹(ことに耳介後部、後頭部、頚部)が三徴候として出現するが、発熱は風疹患者の約半数にみられる程度であり、三徴候のいずれかを欠くものについての臨床診断は困難である。ことに溶連菌による発疹、あまり典型的ではない伝染性紅斑など風疹とよく似ているその他の発疹性疾患は多く、確定診断のためには検査室診断を要することが少なくない。多くの風疹の発疹は紅く、小さく、皮膚面よりやや隆起して全身にみられる斑状丘疹である。発熱と発疹はほぼ同時に現れ3日間ほどで解熱するが(ここから三日はしかともよばれる)、発疹が消えるまでにはさらに数日間を要することがある。通常色素沈着や落屑はみられないが、発疹の激しい場合にはこれらを伴うこともある。リンパ節は発疹の出現する数日前より腫れはじめ、3- 6 週間位持続する。ウイルスの排泄期間は、発疹出現の前後約1週間といわれているが、解熱すると排泄するウイルス量は激減し、急速に感染力は消失する。

検査室診断
 ウイルスを分離することが病原診断の基礎であるが、血清診断がポピュラーな手段として用いられることが多い。赤血球凝集阻止反応(HI)、中和法(NT)、補体結合法(CF)、酵素抗体法(ELISA)などがあり、急性期と回復期の抗体価の4倍以上の上昇を持って診断する。急性期の特異的IgM抗体をIgM-ELISAなどによって証明すれば、単一血清での診断が可能である。なお抗体の保有を確認するために血液検査が行われることがあるが、CF法は感染後比較的早期に抗体の消失がみられるので、抗体の有無の測定には不向きである。

合併症
 基本的には予後良好な疾患であるが、血小板減少性紫斑病(1/3000-5000人)、急性脳炎(1/4000-6000人)などの合併症をみることもあるが、これらの予後もおおむね良好である。成人では、手指のこわばりや痛みを訴えることも多く、関節炎を伴うこともあるが、そのほとんどは一過性である。

先天性風疹症候群 Congenital rubella syndrome : CRS
 風疹に伴う最大の問題は、妊娠前半期の妊婦の初感染により風疹ウイルス感染が胎児におよび、先天異常を含む様々な症状を呈するCRSが高率に出現することにある。新生児期に出現するものー低出生体重、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、間質性肺炎、髄膜脳炎など先天異常として発生するものー先天性心疾患、難聴、白内障、網膜症など幼児期以後に発症するものー進行性風疹全脳炎、糖尿病などCRSの予防は、妊婦が風疹に感染しないようにすることにつきる。そのためには、妊娠前に女性は風疹抗体を獲得しておくことが必要であり、風疹ワクチン接種の最大の意義はこの点にある。

風疹の予防(ワクチン)
 風疹感染の予防の目的で弱毒風疹生ワクチンが実用化され、広く使われている。MMR(麻疹・ムンプス・風疹)混合ワクチンとして使用している国も増加している。しかし途上国ではワクチンの費用の問題もあり、まだ導入出来ないでいる国が多い。
 我が国では以前は13歳から15歳の女子のみが風疹ワクチン接種の対象であったが、風疹の感染予防をさらに徹底するために、平成6年の予防接種法改正以来、その対象は生後12-90カ月の男女(標準は生後12ー36カ月)及び経過措置として当分は12-16歳の男女となった。また以前は学校で集団接種として行われていたが、現在は個別接種を推奨する方向性となっている。その結果、風疹の予防接種を受ける幼児の数は増加したが、逆に中学生での接種率は減少した。伝染病流行予測事業による我が国における風疹抗体保有状況をみると、小学校高学年から中学生年齢の女子の抗体陽性率は低く、12歳女子における風疹抗体陽性率は52%にすぎない。風疹の流行の規模は縮小しつつあるが、発生が消えつつあるわけではない。風疹に対する免疫を有さない女性が妊娠した時に風疹の初感染を受ければCRS発生の危険性が高いことは明らかであり、将来のCRS予防のために、中学生に対する風疹ワクチン接種が重要である。

感染症新法の中での風疹の取扱い
 風疹は第4類の定点把握疾患に定められており、あらかじめ指定された小児科医療機関より週毎に届け出がなされることによってその発生状況が集計され、その結果が医療関係者および一般に公開される。先天性風疹症候群については、第4類の全数把握疾患に定められており、診断した医師は診断してから7日以内に届け出なければならない。

学校保健法の中での風疹の取扱い
 風疹は学校において予防すべき伝染病第2種に定められており、通常は発疹が消失するまで出席停止となる。しかし病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではなく、またまれにみられる色素沈着などの場合には出席停止とする必要はないと考えられている。

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この記事は、2001年第29週にて改訂いたしました。
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