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 感染症の話 1999 年第18週(5 月3日〜9日)掲載

◆麻 疹

疫 学
 麻疹は、過去1984年に大きな全国流行を経験しているが、1991年の流行はやや小さく、ここ5年間は大きな全国流行はない(図1、全国麻疹患者定点当たり報告数年次推移)。とはいえ、未だに毎年地域的な流行は見られている(図2、1998年週別都道府県別麻疹患者定点当たり報告数)。感染症発生動向調査では約2500の定点から年間約2万例の報告があり、実際にはこの10倍以上の患者が発生していると考えられる。自然宿主は人間のみで、その他の動物が宿主となると言うことは現在までに知られていない。基本的に大きな飛沫を介するヒトからヒトへの感染で、本邦では通常春から夏にかけて流行する。感染性は非常に高く、感受性のある人が暴露を受けると90%以上が感染する。発疹出現の4日前から出現後4日目までは感染性がある。

病 因
 RNAウイルスであるparamyxovirus群morbilivirus科に属する麻疹ウイルスによっておこる。ウイルスの大きさは100〜200nmでエンベロープをもつ。エンベロープの蛋白のうちのF蛋白とH蛋白がその病原性に大きくかかわっているが、近年H蛋白の抗原性の変異が報告されている。ウイルスは熱、光、酸性、エーテルによって速やかに不活化される。空気中や物体表面では生存時間は短い(2時間以下)。

臨床症状
 10〜12日の潜伏期を経て、発熱、咳、鼻汁、あるいは結膜炎にて発症する。発疹出現の1〜2日前頃にコプリック斑を頬粘膜にみる。その後通常発熱は若干低下するかのようにみえるが、再び高くなるとともに発疹が出現する。発疹は斑丘疹で、毛髪線から始まり、顔面、頚部に出現し、その後遠心性に手足に向かって広がる。5〜6日持続した後、出現したのと同じ順序で消退し、あとに色素沈着を残す。約30%の患者が一つ以上の合併症をおこすと言われている。合併症は5歳以下あるいは20歳以上で多い。下痢が患者の8%、中耳炎が7%、肺炎が6%におこると報告されており、肺炎はウイルス性のことも重複感染による細菌性のこともある。脳炎が1000例に1例程度報告されており、死亡率は約15%で、後遺症が25%に残るとされている。肺炎・脳炎の合併は年少であるほど死に至る危険性が高いので注意が必要であり、感染を予防することがもっとも重要である。
 また、麻疹ウイルスの持続感染によると考えられている亜急性硬化性全脳炎(SSPE)が麻疹患者の100万例に5〜10例おこると言われている。進行性の神経症状、痴呆症状を示し、最終的には死に至る予後不良の疾患であるが、米国では麻疹ワクチンの普及により激減した。

検査室診断
 ウイルスを分離することは本疾患の確定診断につながるが、通常は臨床診断が容易なためあまり行われない。しかしながら、近年の流行ウイルス株を調べたり、ウイルスのH抗原の変異などを検索する分子疫学的発生動向調査には非常に重要である。通常、尿、咽頭拭い液、ヘパリン化全血から分離されるが、発疹出現後3日以内が分離率が高い。
 血清診断として、赤血球凝集阻止反応(HI)、ゼラチン粒子凝集法(PA)、中和法(NT)、ELISA法があるが、急性期と回復期の抗体価の上昇を持って診断する。また捕捉IgM-ELISAにてIgMを証明すれば、単血清で診断が可能である。

治療と予防
 特異的治療法はなく、対症療法が中心となるが、中耳炎、肺炎など細菌性の合併症をおこした場合には抗生剤の投与が必要となる。それ故に、予防が最も重要である。予防のための高度弱毒化生ワクチンが、現在本邦では4社から市販されている。予防接種法では生後12ヶ月から90ヶ月までの間を接種年齢としているが、1歳代に罹患すると重症になることから、1歳を過ぎたらできるだけ早期に接種することが望ましい。接種により95%以上の児で抗体を獲得する。臨床的な有効性についても93〜97%と報告されており、ワクチンの有効性は明らかである。
 副反応として、接種後10日前後に発熱が約30%に、同時期に発疹が約10%にみとめられる。いずれも軽症でありほとんどは自然に消失する。ごく稀に(100〜150万接種に1例程度)脳炎を伴うことが報告されているが、麻疹に罹患したときの脳炎の発症率に比べると遙かに低い。

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updated info

この記事は、2003年第3週2001年第28週にて改訂しました。

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