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2002年第29週号(2002年7月15日〜7月21日)掲載

◆ 流行性角結膜炎

 流行性角結膜炎(EKC:epidemic keratoconjunctivitis)は、主にD 群のアデノウイルスによる疾患で、主として手を介した接触により感染する。以前は、本疾患患者を扱った眼科医や医療従事者などからの感染が多く見られたが、現在では、職場、病院、家庭内などの人が濃密に接触する場所などでの流行的発生もみられる。アデノウイルスは種々の物理学的条件に抵抗性が強いため、その感染力は強い。19 世紀後半、ドイツの労働者の間で流行したことが記載されている。その後米国で、"shipyard eye"と呼ばれる眼疾患が流行した。造船所の労働者が眼の外傷の治療のさい、医原病的に広がったものと考えられる。今日我が国では全国的にEKC がみられるが、年度によりD群の8、19、37型のいずれかの流行となっている。

疫 学
 流行性角結膜炎患者との接触により感染する。病院の医師、看護婦、さらに職場や家庭などで、ウイルスにより汚染されたティッシュペーパー、タオル、洗面器などに触れるなどして感染する。年齢による頻度の差はみられない。血清学的調査では、日本の子供の8型に対する抗体保有率は20%未満、19型および37型に対しては10%程度である。
 感染症法施行後の発生動向調査によると、全国約600の眼科定点からの報告では1999年4〜12月に報告数23,941 (定点当たり報告数41.71)、2000年1〜12月に40,873 (65.40)、2001 年1〜12月(暫定データ)に39,141 (62.13)となっている。季節としては8月を中心として夏に多く、年齢では1〜5歳を中心とする小児に多いが、成人も含み幅広い年齢層にみられる。

病原体
 アデノウイルスは現在まで49種の血清型が知られているが、EKCを起こすのはD群の8、19、37型である。まれに、B群の11型、E群の4型も病因となりうる。現在流行中の型は19 型であり、ほぼ全国から分離されているが、8型と9型の中間型と思われる血清型が沖縄県におけるEKC の病原と考えられており、同様の型が横浜、秋田でも分離されている。

臨床症状

 潜伏期は8〜14日である。急に発症し、眼瞼の浮腫、流涙を伴う。感染力が強いので両側が感染しやすいが、初発眼の方が症状が強い。耳前リンパ節の腫脹を伴う。角膜に炎症が及ぶと透明度が低下し、混濁は数年に及ぶことがある。時に結膜炎が出血性となり、出血性結膜炎(EV70, CA24 変異株による)や咽頭結膜熱との鑑別を要することがある(図1)。その他、ヘルペスウイルスや、クラミジアによる眼疾患との鑑別が必要である。

 

図1. アデノウイルス8型による結膜炎(青木功喜撮影)

 新生児や乳幼児では偽膜性結膜炎を起こし、細菌の混合感染で角膜穿孔を起こすので注意する必要がある。

病原診断
 眼ぬぐい液や結膜擦過法によりアデノウイルスを分離することが、病原診断の基本である。ウイルスが分離されたら、中和反応により型を同定する。ほとんどはD 群であり、重症型が多い。他の型が分離される軽症型では、咽頭結膜熱との異同を再検討する。急性出血性結膜炎はエンテロウイルス(EV70)の感染によるものであるが、これは最近、分離困難となり、ペア血清での中和抗体の有意の上昇、あるいはPCRによる検出が必要となる。
 迅速診断法としてELISA やクロマトグラフィー法(アデノクロン、アデノチェック)があるが、型別の判定はできない。PCR‐RFLP法やシーケンス法により、型の同定が可能となった。血清型を知ることで、より詳細な疫学的調査が可能となり、公衆衛生的対応にも結びつくことが期待される。

 

治療・予防
 アデノウイルス全般について有効な薬剤はない。対症療法的に抗炎症剤の点眼を行い、さらに角膜に炎症がおよび混濁がみられるときは、ステロイド剤を点眼する。細菌の混合感染の可能性に対しては、抗菌剤の点眼を行う。眼疾患患者の分泌物の取扱いと処分に注意し、手洗い、消毒をきちんと行う。点眼瓶類がウイルスで汚染されないように注意をし、汚染された病院内の器具類はオートクレーブで滅菌するか、あるいはアルコール、ヨード剤などで消毒する。予防の基本は接触感染予防の徹底である。

<付記>
 EKCという診断名は8型において初めて用いられ、一元的な病因論でいわれていたが、その後19、37型も8型と全く区別できず、多元的病因論が受け入れられている。4型でもEKC からPCF まで幅広い臨床像を示し、B群は軽症なのでEKCよりもアデノウイルス結膜炎という診断名を用い、重症型(D群)、中間型(E群)、軽症型(B群)という用語を用いることが提唱されている。

感染症法における取り扱い (2003年11月施行の感染症法改正に伴い更新)
 流行性角結膜炎は5類感染症定点把握疾患に定められており、全国約600カ所の眼科定点から毎週報告がなされている。報告のための基準は以下の通りとなっている。
 ○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ以下の3つの基準のうち2つ以上を満たすもの
 1. 重症な急性濾胞性結膜炎
 2. 角膜点状上皮下混濁
 3. 耳前リンパ節腫脹、圧痛
 ○上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体診断や血清学的診断によって当該疾患と診断されたもの

(国立感染症研究所感染症情報センター 稲田敏樹、
北海道大学医学部眼科学教室 青木功喜)

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この記事は、2000年第14週 掲載を改訂して発行しました。

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