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 感染症の話 2001年第30週(7月23日〜7月29日)掲載


◆突発性発疹

 突発性発疹(Exanthema subitum)は、乳児期、とくに6〜18カ月の間に罹患することが多く、突然の高熱と解熱前後の発疹を特徴とするウイルス感染症で、予後は一般に良好である。

疫 学
 感染症発生動向調査によると、報告症例の年齢は0歳と1歳で99%を占めており、それ以上の年齢での報告はまれである。季節性はなく、毎週の定点当たり報告数は一定しており、年次による差異もほとんどない(感染症法施行前に比べると、施行後の方が週の定点当たり報告数にして平均0.2ほど高くなっているが、これは定点設計の差によるものと考えられる)。本疾患の原因ウイルスであるヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)および7(HHV-7)の血清疫学調査からは、2〜3歳頃までにほとんどの乳幼児が抗体陽性となることが判明しており、不顕性感染は20〜40%と報告されている。
 このような疫学的特徴から、本疾患は過去感染症発生動向調査のデータ解析の際に基準疾患として利用されてきた。ゴールデンウイークや年末など休日や病院の休業に伴って疾患報告数が変動することはよく知られているが、これを標準化するために、本疾患の発生数がほとんど一定であることを利用して、各疾患の報告数を突発性発疹の報告数で除した値でトレンドを比較しようとした試みがある(平成6年感染症サーベイランス事業年報、382-383p)。また、2歳までにほとんどの児が本疾患に罹患することから、実際の突発性発疹の発生数を推計し、それと本調査の報告数を比較して定点医療機関での疾患捕捉率を算定し、各疾患の人口10万人当たりの罹患率を推定するのに利用されている(病原微生物検出情報、Vol.9、No.4、2p)。

病原体  
 1910年に本疾患が記載されて以来長い間病原体は不明であったが、1988年山西らにより、HHV-6であることが証明された。その後、突発性発疹の中にエンテロウイルスを原因とするものが含まれていること、またHHV-6、エンテロウイルスいずれでもない原因不明の突発性発疹が存在することが明らかとなり、1994年に新しく発見されたHHV-7も、その初感染像として突発性発疹を呈することが報告された。HHV-7による突発性発疹は、臨床的には二度目の突発性発疹として経験されることが多い。
 HHV-6、HHV-7のいずれも、ヘルペスウイルス科βヘルペスウイルス亜科に属する2本鎖DNAウイルスである。両ウイルスとも初感染以降は潜伏感染状態となり、断続的に唾液中に排泄される。HHV-7の方が排泄される量が多く、容易にウイルスも分離されるが、HHV-6についてはDNAは検出されるものの、ウイルス分離は困難である。
 現在のところ、唾液中に排泄されたウイルスが経口的、あるいは経気道的に感染すると考えられているが、なぜ排泄量が多いHHV-7の方がHHV-6より後に感染するのかなど、不明な点も多い。子宮頚管粘液からウイルスDNAが検出されるという報告もあり、周産期における感染も感染経路の一つである可能性がある。一方、母乳については感染経路として否定的である。初感染時の潜伏期は、1950年Kempeらの報告により約10日と推定されている。


臨床症状
 
38度以上の発熱が3日間ほど続いた後、解熱とともに淡紅色〜鮮紅色の斑丘疹が体幹を中心に顔面、四肢に数日間出現する(写真1および2)。随伴症状としては、下痢、眼瞼浮腫、大泉門膨隆、リンパ節腫脹などがあげられるが、多くは発熱と発疹のみで経過する。診断については、特徴的な臨床経過、発疹出現によりなされることがほとんどであり、困難ではない。永山斑(病初期口蓋垂の根元の両側に認められる粟粒大の紅色隆起) を見つけることにより、有熱期間中に診断が予測できることもある。
 発熱初期に熱性痙攣を合併することがあるが、一般に予後は良好である。まれに脳炎、脳症、劇症肝炎、血小板減少性紫斑病など重篤な合併症をおこすことがある。
写真1. 解熱後に出現した発疹
写真2. 躯幹を中心に出現した淡紅色の紅斑


病原診断
 HHV-6、HHV-7感染の診断法としては、他のウイルス疾患と同様でウイルス分離、PCRによるウイルスDNAの検出、血清診断などがあるが、現在のところいずれも健康保険適応はない。
 ウイルス分離はやや煩雑で、通常患児の末梢血単核球(PBMCs)を検体とし、PBMCs単独あるいは臍帯血リンパ球との共培養により、IL-2、PHAなどリンパ球を活性化する試薬を加えて培養する。発熱期に検査が行われればほぼ100%分離可能であるが、発疹期に至ると分離率は40%程度に下降し、発疹が消失すると分離されることはほとんどない。
 PCRによるウイルスDNAの検出は両ウイルスともにコマーシャルラボにて可能であるが、初感染後に潜伏感染することから、陽性結果の解釈には注意が必要である。潜伏感染部位は単球/マクロファージ、唾液腺などが考えられているため、血液細胞や唾液からDNAが検出されても病的意義は低い。HHV-6あるいはHHV-7を当該疾患の原因ウイルスとして考える場合は、細胞中ではなく血漿中にウイルスDNAが検出されるか、当該臓器からウイルスが検出される必要がある。
 また、血液細胞中から検出された場合、病的意義を論じるためには定量することが必要である。血清診断については、HHV-6に関しては間接蛍光抗体法によるIgG、およびIgM抗体の測定がコマーシャルラボにて可能であるが、HHV-7との交叉反応があるので、結果の解釈には注意が必要である。実験室レベルでは、中和法による抗体測定法が確立されている。


治療・予防
 通常は予後良好のため、対症療法にて経過観察するのみであり、特に予防が問題となることもない。
 In vitro において、ガンシクロビルおよびホスカルネットによりHHV-6の増殖が高率に阻害されたとする報告がある。アシクロビルに関しては、高濃度の時にのみ同様の効果が認められている。突発性発疹は従来予後良好な疾患であり、実際抗ウイルス療法を考慮しなければならない症例に遭遇することは稀であるが、重篤な合併症を呈した場合、あるいは移植患者やAIDS患者のように免疫抑制状態にある患者では、抗ウイルス剤の使用も検討する価値があると思われる。

感染症法における取り扱い
 突発性発疹は4類感染症定点報告疾患であり、全国約3,000の小児科定点より毎週年齢階級別発生数が報告されている。報告の基準は以下の通りである。
 ◯診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ以下の2つの基準のすべてを満たすもの
 1. 突然に発熱(38度以上)し、2〜4日間持続
 2. 解熱に前後して体幹部、四肢、顔面の発疹が出現
 ◯上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体診断や血清学的診断によって当該疾患と診断されたもの。

学校保健法における取り扱い
 突発性発疹は学校において予防すべき伝染病1〜3種には含まれていない。


(国立感染症研究所感染症情報センター)

 

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この記事は、2002年第29週にて改訂しました。

 

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この記事は、1999年第20週掲載を改訂して発行しました。

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