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 感染症の話 2001年第25週(6月18日〜6月24日)掲載


◆流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)

 流行性耳下腺炎は、5世紀にヒポクラテスがThasus島で、耳の近くが両側あるいは片側のみ腫脹する病気が流行したのを記載したのが最初であり、耳周辺の痛みを伴うこと、睾丸が腫脹することも記載されている。ムンプスという名前の由来は不明であるが、ひどい耳下腺炎を起こした患者がぼそぼそ話す(mumbling speech)ことによるのではないか、と言われている。
 その後、1886年にHirshがこの病気は世界中に広く存在することを報告し、1934年にJohnsonとGoodpastureが、この疾患の原因微生物はフィルターを通過するウイルスであると報告した。

疫 学
 流行性耳下腺炎は我が国でも毎年地域的な流行がみられており、1989年の流行までは3〜4年周期で増減が見られていたが、同年のMMRワクチンの導入により、1991年にはサーベイランスが始まって以来の低い流行状態となった。その後緩やかに患者報告数が増加し、1993年にMMRワクチンが中止されたこともあって、94年以降再び3〜4年周期での患者増加が見られるようになっている。感染症法施行以降の1999年4月〜2000年12月の期間での感染症発生動向調査から見ると、全国約3,000の定点医療機関から、毎週1,100〜4,800人程度の報告がある。2000年末より、最近10年間の当該週に比べて定点当たり報告数がかなり多い状態が続いている。

病原体  
 流行性耳下腺炎の原因であるムンプスウイルスはパラミクソウイルス科のウイルスで、表面にエンベロープをかぶったマイナスセンスの1本鎖RNAウイルスである。大きさは100〜600nmで、主に6つの構造タンパクを有している。エンベロープには2つの糖タンパク(hemagglutinin-neuraminidase glycoprotein、およびfusion glycoprotein)を有し、この2つのタンパクに対する抗体が感染から宿主を防御すると言われている。


臨床症状
 流行性耳下腺炎の臨床経過は、基本的には軽症と考えられている。2〜3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て、唾液腺の腫脹・圧痛、嚥下痛、発熱を主症状として発症し、通常1〜2週間で軽快する。唾液腺腫脹は両側、あるいは片側の耳下腺にみられることがほとんどであるが、顎下腺、舌下腺にも起こることがあり、通常48時間以内にピークを認める。接触、あるいは飛沫感染で伝搬するが、その感染力はかなり強く、同居家族で97.4%、学校などの同一クラスでは89.5%と高率な感染が報告されている。ただし、感染しても症状が現れない不顕性感染もかなりみられ、30〜35%とされている。鑑別を有するものとして、他のウイルス、パラインフルエンザウイルスやエンテロウイルスなどによる耳下腺炎、(特発性)反復性耳下腺炎などがある。反復性耳下腺炎は耳下腺腫脹を何度も繰り返すもので、軽度の自発痛があるが発熱を伴わないことがほとんどで、1〜2週間で自然に軽快する。流行性耳下腺炎に何度も罹患するという訴えがある際には、この可能性も考えるべきである。
 合併症としての無菌性髄膜炎は、軽症と考えられてはいるものの、症状の明らかな例の約10%に出現すると推定されており、また、髄液細胞数増多は症例の約60%にみられるという報告もある。思春期以降では、男性で約20〜30%に睾丸炎、女性では約7%で卵巣炎を合併するとされている。また、20,000例に1例程度に難聴を合併すると言われており、頻度は少ないが、永続的な障害となるので重要な合併症のひとつである。

病原診断
 ウイルスを分離することが本疾患の最も直接的な診断方法であり、唾液からは症状出現の7日前から出現後9日頃まで、髄液中からは症状出現後5〜7日くらいまで分離が可能であるが、少なくとも第5病日までに検体を採取することが望ましい。
 しかしながら、ウイルス分離には時間を要するため、一般的には血清学的診断が行われる。
 種々の方法があるが、EIA法にて急性期にIgM抗体を検出するか、ペア血清でIgG抗体価の有意な上昇にて診断される。しかし、再感染時にもIgM抗体が検出されることがあり、初感染と再感染の鑑別にはIgG抗体のavidityの測定が有用と報告されている。また最近では、RT-PCR法にてウイルス遺伝子を検出することが可能となり、これによりワクチン株と野生株との鑑別も可能である。


治療・予防
 流行性耳下腺炎およびその合併症の治療は基本的に対症療法であり、発熱等に対しては鎮痛解熱剤の投与を行い、髄膜炎合併例に対しては安静に努め、脱水などがみられる症例では輸液の適応となる。
 効果的に予防するにはワクチンが唯一の方法である。有効性については、接種後の罹患調査にて、接種者での罹患は1〜3%程度であったとする報告がある。接種後の抗体価を測定した報垂ナは、報告により多少の違いがあるが、概ね90%前後が有効な抗体を獲得するとされている。
 ワクチンの副反応としては、接種後2週間前後に軽度の耳下腺腫脹と微熱がみられることが数%ある。重要なものとして無菌性髄膜炎があるが、約1,000〜2,000人に一人の頻度である。以前には、ゼラチンアレルギーのある小児には注意が必要であったが、各ワクチンメーカーの努力により、ムンプスワクチンからゼラチンは除かれるか、あるいは低分子ゼラチンが用いられるようになり、ゼラチンアレルギー児に対しても安全に接種が行われるようになってきた。
 患者と接触した場合の予防策として緊急にワクチン接種を行うのは、あまり有効ではない。患者との接触当日に緊急ワクチン接種を行っても、症状の軽快は認められても発症を予防することは困難であると言われている。有効な抗ウイルス剤が開発されていない現状においては、集団生活に入る前にワクチンで予防しておくことが、現在取り得る最も有効な感染予防方法である。

発生動向調査について
 流行性耳下腺炎は4類感染症定点把握疾患に属する。報告は、全国約3,000の小児科定点医療機関より毎週なされる。報告のための基準は以下の通りである。
 ○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下の2つの基準を満たすもの。
 1. 片側ないし両側の耳下腺の腫脹と、2日以上の持続
 2. 他に耳下腺腫脹の原因がないこと
 ○上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体診断や血清学的診断によって当該疾患と診断されたもの


学校保健法での取り扱い

 流行性耳下腺炎は第二種の伝染病に属する。登校基準は以下の通りである。
 ○耳下腺の腫脹がある間はウイルスの排泄が多いので、腫脹が消失するまで出席停止とする。


(国立感染症研究所感染症情報センター)

 

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この記事は、2003年第35週にて改訂しました。

 

 

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この記事は、1999年第15週掲載を改訂して発行しました。

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