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 感染症の話 2000 年第5週(1月31日〜2月6日)掲載

 
◆尖形コンジロームCondyloma acuminatum

 尖形コンジロームは、ヒトパピローマウイルス6 、11型等が原因となるウイルス性性感染症で、生殖器とその周辺に発症する。淡紅色ないし褐色の病変で、臨床視診による診断が可能な特徴的な形態を示す。自然治癒が多い良性病変であるが、感染しているヒトパピローマウイルスの型によっては悪性化にも留意した経過観察を要する。


疫学
 性交またはその類似行為によって感染する疾患で、世界中に分布している。患者の大部分は性活動の活発な年代にみられるが、稀に両親や医療従事者の手指を介して幼児に感染し、発症することがある。分娩時の垂直感染により乳児の喉頭乳頭腫を発症する可能性も示唆されている。我が国では年間10万人あたり30人程度の発症がみられている。


病原体
 ヒトパピローマウイルス(図1)は小型のDNA ウイルスで、約8,000塩基対の2 本鎖DNA が正二十面体のキャプシドに包まれた構造をしている。エンヴェロープは無い。ウイルスが増殖できる培養細胞系がないため、患者から分離されたウイルスはゲノムDNAの塩基配列の相同性に基づいて80以上の型に分類されている。型によって感染部位と病理像が異なる。皮膚に感染する型では、1、2 、4型等が良性の疣の、5、8、47型等が皮膚癌の原因となり、粘膜に感染する型には尖形コンジロームを引き起こす6、11型(低リスク型)や子宮頚癌の原因となる16、18、31 型等(高リスク型)がある。尖形コンジロームから1、2 型や16、18型が分離されることもあるので、感染しているウイルスの型を知ることが、予後の推定に重要となる。
 ウイルスの非構造蛋白質であるE6及びE7蛋白質が、細胞のp53とpRb 蛋白質の機能を阻害し、細胞のDNA合成系を活性化してウイルスDNAの複製に利用する。このため感染細胞は異常に増殖し、病変が形成されると考えられている。

図1.ヒトパピローマウイルス粒子(国立感染症研究所ウイルスII部、松倉俊彦主任研究官提供)

図2.女性外陰部のコンジローム(帝京大学医学部付属溝口病院産婦人科、川名尚教授提供)

各画像をクリックすると拡大図が見られます。


臨床症状
 一般に自覚症状に乏しいが、外陰部腫瘤の触知、違和感、帯下の増量、掻痒感、疼痛が初発症状となることが多い。表面が刺々しく角化した隆起性病変が特徴(図2)で、淡紅色〜褐色の乳頭状、鶏冠状、あるいはカリフラワー状と表現される。好発部位は、男性では陰茎の亀頭部、冠状溝、包皮内外板、陰嚢で、女性では膣、膣前庭、大小陰唇、子宮口、また男女とも、肛門及び周辺部、尿道口である。子宮頸部、膣に発症した場合は、外陰の病変同様の疣状を呈することもあるが、flat condyloma と呼ばれる扁平な病変を形成することが多い。20-30%は3カ月以内に自然消退する。

病原診断
 典型的な尖形コンジロームは乳頭状、鶏冠状の特徴的な形態を持つため、視診で十分診断がつくことが多い。病巣範囲を確定するには、子宮頸部や膣、外陰部を酢酸溶液で処理した後コルポスコピーで観察する。形態的に類似した悪性病変もあるため、確定診断は組織学的に行う。組織学的特徴は軽度の過角化、舌状の表皮肥厚、上皮細胞の乳頭状増殖で、表皮突起部位の顆粒層に濃縮した核と細胞質が空胞化した像(koilocytosis)がみられる。
 ヒトパピローマウイルスのDNA は容易に検出できる。病変部のホルマリン固定検体や生検試料、膣の擦過細胞から抽出したDNA を鋳型に、PCRによってウイルスDNA の一部を増幅し、そのDNA断片中に分布する複数の制限酵素切断点を調べることで、HPVDNA の有無および型を判定できる。臨床試験会社で請け負っており、1‐3週間で成績が得られる。多くは6 、11型の感染によるもので、悪性化することはないが、高リスク型が検出された場合は経過観察に注意を要する。


治療・予防
 外科的治療には、切除、CO2 レーザー蒸散法、電気メスによる焼却法や液体窒素による凍結法がある。CO2 レーザー蒸散法は、治療による周辺組織の損傷が少ないこと、高い治療効果が速やかに得られることから最も優れている。薬物療法としては5-フルオロウラシル軟膏、ブレオマイシン軟膏などを塗布する方法がある。外国では、10-25%ポドフィリンアルコール溶液の塗布が行われているが、我が国では市販されていない。細胞診で陰性になった場合に治癒とする。
 通常、ヒトパピローマウイルスの感染から尖形コンジロームの発症には数週間から3カ月程度かかるといわれているので、治療終了後も最低3カ月は厳重な経過観察をして、再発の早期発見に努めることが必要である。本人が治癒してもパートナーがHPV を保持しているかぎり再感染の可能性があるので、パートナーも必ず専門医を受診し症状があれば治療をすることが重要である。また垂直感染を予防するために妊婦で発症した場合には分娩までに治療を終了すべきである。
 ヒトパピローマウイルスは皮膚や粘膜の微小な傷から侵入、感染する。従って感染予防にはコンドームの使用が効果的であるが、外陰部にアトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎などがある場合は特に感染しやすいので注意を要する。
 ウシパピローマウイルス感染がワクチンで予防できることから、ヒトパピローマウイルスに対する感染予防ワクチンは、高リスク型の中で最も高頻度で検出される16型を中心に開発が進められており、米国で第1相試験が行われている。有効性が確認されれば、多くの型のヒトパピローマウイルスに対するワクチンが開発されるかもしれない。


感染症新法の中での尖形コンジロームの取扱い
 尖形コンジロームは、第4 類の定点把握対象疾患に定められており、患者定点として選定された医療機関は月単位にて保健所に届け出ることとなっている。報告のための基準は、以下の通りとなっている。
《報告のための基準》
 ○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下の基準をみたすもの
 ・男女ともに、性器およびその周辺に淡紅色または褐色調の乳頭状、または鶏冠状の特徴的病変を認めるもの

(国立感染症研究所遺伝子解析室  神田 忠仁)

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updated info

この記事は、2002年第26週にて改訂しました。

 

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