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 感染症の話 2000 年第2週(1 月10 日〜1 月16 日)掲載

◆レジオネラ症

 レジオネラニューモフィラ(Legionella pneumophila)を代表とする細菌感染症で、劇症型の肺炎と一過性のポンチアック熱がある。レジオネラ属菌は、もともと環境に普通に存在する菌である。快適な生活を求めることによって冷房(屋上の冷却塔)や循環風呂(家庭にあっては24 時間風呂)が身近に普及したために、日常的に菌を含むエアロゾルに接する機会が増加することにより、あるいは検査技術の進歩によって、近年、症例数が増加している。

疫 学
 院内感染は季節によらないが、市中感染は環境中に菌数の増加する夏場に多く、また旅行と関連して発症する。人から人への感染はない。
 1998年5月に東京都内の特別養護老人ホームで男性が循環風呂の中のレジオネラニューモフィラ血清群5で肺炎になり死亡している。また、1999年6月に名古屋市で24時間風呂における水中出産によると考えられるレジオネラニューモフィラ血清群6感染で新生児が死亡している。レジオネラ肺炎は市中肺炎の3 〜10%を占め、潜伏期は2〜10日である。
 一方、ポンチアック熱は、発病率が95%、潜伏期間が1 〜2日であるが、集団発生でないと報告にあがりにくい。日本では、1994 年に東京都内で開催された研修における冷却塔による集団発生例がある。

病原体
 レジオネラ属菌、特にレジオネラニューモフィラが多い。レジオネラは本来土壌細菌であるが、冷却塔、給湯系、渦流浴などの人工環境にアメーバを宿主として増殖している。冷却塔には血清群1、温泉や24 時間風呂には血清群3, 4, 5 のレジオネラニューモフィラが多い。

臨床症状
 レジオネラ肺炎は、臨床症状では他の細菌性肺炎との区別は困難である。全身性倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの症状に始まり、乾性咳嗽(2 〜3日後には膿性〜赤褐色の比較的粘稠性に乏しい痰の喀出)、高熱、悪寒、胸痛が見られるようになる。傾眠、昏睡、幻覚、四肢の振せんなどの中枢神経系の症状が早期に出現するのも本症の特徴とされる。胸部X 線所見では進行が速い肺胞性陰影である。本年6月に発症した新生児レジオネラ肺炎の場合、生後8 日目に死亡し、剖検時には肺に小豆状の結節が多数みられた(図1)。
 ポンチアック熱は、突然の発熱、悪寒、筋肉痛で始まるが、一過性で治癒する。

図1. 剖検時肺(小豆状の結節が多数みられる)

図2. 肺切片のヒメネス染色像(←の先に菌がみられる。)

図3. 肺切片の間接蛍光抗体法(結節では、浸潤した白血球に多数の菌が検出された。微分干渉顕微鏡像との合成画像)

各画像をクリックすると拡大します。


病原診断
 市販キットによる尿中抗原の検出は特異性が高く簡便迅速なため最近普及してきた。菌の分離にはレジオネラ専用(BCYE あるいはそれに抗菌薬を含んだもの)の培地を用いる必要がある。検体中の菌はグラム染色では染まらないので、ヒメネス染色やDieterle 鍍銀染色を行う。図2は、新生児の剖検肺のパラフィン切片標本から、ヒメネス染色で菌体を検出できた例である。また、レジオネラ属菌に対する特異抗血清が市販され、間接蛍光抗体法で菌が検出できる。同じパラフィン切片からレジオネラニューモフィラ血清群6が検出できた(図3)。肺炎の剖検例で組織を凍結保存しておけば、そこから後でレジオネラ属菌を分離可能である。環境から分離された菌との同一性が問題になるので、環境水やそこからの分離株も患者由来の菌種が確定するまでは保存しておくことが必要である。

治療・予防
 レジオネラは細胞内寄生細菌であるので、宿主細胞に浸透するエリスロマイシン、リファンピシン、ニューキノロンなどの抗菌薬を使用しないと肺炎の治療は困難である。有効な抗菌薬の投与がなされない場合は7日以内に死亡するものが多い。エアロゾルの発生する可能性のある温水は、適切な殺菌剤の投与をおこなうか、換水などの留意が必要である。また高齢者や新生児の他、細胞性免疫機能が低下すると肺炎を起こす危険性が通常の健常者より高いので留意する必要がある。

発生動向調査について
 レジオネラ症は4類感染症のうち全数把握となっている。報告の基準は以下のとおりである。
 ○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ以下のいずれかの方法によって病原体診断や血清学的診断がなされたもの
 ・病原体の検出
  例:臨床材料(肺組織、痰、胸水、血液、他の無菌的部位)からの菌の分離、臨床材料(肺組織または気道分泌物)からの菌の検出(直接蛍光抗体染色法)など
 ・病原体抗原の検出
  例:尿中抗原の検出(EIA 法)など
 ・病原体の遺伝子の検出
  例:臨床材料からの遺伝子の検出(PCR 法)など
 ・病原体に対する抗体の検出
  例:間接蛍光抗体法での特異抗体価の上昇(ペア血清で4倍以上の上昇、または単一血清で256倍以上)など


(国立感染症研究所細菌部 倉 文明 渡邊 治雄)

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updated info

この記事は、2002年第12週 にて改訂しました。

 

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