国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第47号ダイジェスト
(2008年11月17日〜11月23日)

 発生動向総覧


※2008年5月12日からの法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第47週コメント〉 11月26日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 結核322例
3類感染症: 細菌性赤痢6例〔感染地域:国内(都道府県不明)1例、ベトナム2例、インド2例、インドネシア1例〕
腸管出血性大腸菌感染症32例(有症者23例、うちHUS 3例)

感染地域:国内32例
国内の多い感染地域:山形県5例1)、千葉県3例、岐阜県3例、群馬県2例、東京都2例、神奈川県2例、三重県2例、佐賀県2例2)
集団発生:1)すべてが第46週の5例とともに、2)すべてが、保育園での集団発生に関連
年齢群:0歳(1例)、1歳(2例)、2歳(2例)、3歳(1例)、4歳(3例)、5歳(2例)、6歳(2例)、8歳(1例)、9歳(1例)、10代(3例)、20代(4例)、30代(4例)、50代(3例)、60代(2例)、70代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(12例)、O157 VT2(8例)、O26 VT1(7例)、O26 VT1・VT2(1例)、O103 VT1(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、O157 VT1(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:4,128例(有症者2,706例、うちHUS 87例、死亡8例)

4類感染症:
E型肝炎1例

感染地域:石川県
感染源:不明

A型肝炎4例(感染地域:和歌山県1例、佐賀県1例、カンボジア1例、パキスタン
1例)
つつが虫病26例

感染地域:宮崎県5例、岐阜県3例、岩手県2例、千葉県2例、鹿児島県2例、青森県1例、秋田県1例、群馬県1例、東京都1例、神奈川県1例、石川県1例、三重県1例、兵庫県1例、広島県1例、福岡県1例、長崎県1例、大分県1例

デング熱1例(感染地域:インド)
日本紅斑熱2例(感染地域:三重県1例、高知県1例)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ルワンダ)
レジオネラ症11例(肺炎型11例)

感染地域:長野県2例、北海道1例(温泉)、福島県1例(温泉)、埼玉県1例、福井県1例(温泉)、岐阜県1例、愛知県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:40代(2例)、50代(2例)、60代(1例)、70代(1例)、80代(4例)、90代(1例)

5類感染症:
アメーバ赤痢7例(腸管アメーバ症4例、腸管外アメーバ症3例)

感染地域:栃木県2例、東京都1例、石川県1例、兵庫県1例、福岡県1例、中国1例
感染経路:経口感染2例、性的接触1例(異性間)、不明4例

ウイルス性肝炎1例〔B型肝炎_感染経路:性的接触(異性間)〕
急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:10代)
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例〔年齢群:70代(1例.死亡)、80代(2例.うち1例死亡)〕
後天性免疫不全症候群13例(AIDS 2例、無症候10例、その他1例)

感染地域:国内12例、中国/韓国/インドネシア1例
感染経路:性的接触12例(異性間3例、同性間9例)、性的接触(異性間)/その他1例

梅毒9例(早期顕症I期1例、早期顕症II期5例、晩期顕症1例、無症候2例)
風しん3例(検査診断例1例、臨床診断例2例)

感染地域:東京都1例、長野県1例、静岡県1例
年齢群:5〜9歳(2例)、25〜29歳(1例)

麻しん10例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例8例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕

感染地域:国内10例
国内の感染地域:千葉県3例、群馬県1例、神奈川県1例、愛知県1例、和歌山県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:0歳(1例)、1歳(2例)、3歳(1例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(3例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(1例)
累積報告数:10,934例〔麻しん(検査診断例3,145例、臨床診断例6,777例)、修飾麻しん(検査診断例1,012例)〕

(補)他に2008年第46週までに診断されたものの報告遅れとして、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、日本紅斑熱1例(感染地域:三重県)、レプトスピラ症1例(感染地域:新潟県_感染原因:水田での治水作業)、急性脳炎2例〔病原体不明2例(0歳2例)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型不明_菌検出検体:喀痰)などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患によ り小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基 幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は第41週以降増加が続いている。都道府県別では山梨県(5.3)、島根県(2.5)、和歌山県(1.6)、大阪府(1.5)、兵庫県(1.5)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は2,977例の報告があり、第43週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約71%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では北海道(1.25)、新潟県(1.23)、福井県(1.14)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では山形県(4.5)、大分県(3.1)、富山県(3.1)、新潟県(3.0)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第43週以降増加が続いている。都道府県別では福岡県(15.9)、大分県(14.9)、熊本県(12.2)、東京都(10.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山形県(3.1)、新潟県(2.5)、秋田県(2.5)、岩手県(2.2)、福島県(2.2)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では高知県(1.07)、秋田県(1.06)、岩手県(1.05)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福島県(0.21)、広島県(0.19)、宮城県(0.17)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では千葉県(0.21)、秋田県(0.14)、福岡県(0.12)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では佐賀県(0.35)、熊本県(0.35)、福岡県(0.24)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では高知県(2.40)、福岡県(1.52)、佐賀県(1.35)、宮崎県(1.22)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では福島県(3.7)、青森県(2.8)、愛媛県(1.8)が多い。




 注目すべき感染症

◆ インフルエンザ

 インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症である。日本においては、他の北半球の温帯地域の国々と同様に例年冬季を中心に全国的な流行が発生し、多くのシーズンにおいて年間1,000万人以上の発病者がみられている。インフルエンザは、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強く、また重症化することがあり、加えて様々な合併症を招く可能性がある。インフルエンザは、罹患している人の咳、くしゃみ、つばなどの飛沫と共に放出されたウイルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することによる飛沫感染が主な感染経路であり、飛沫等を介する間接的接触による接触感染もあると考えられている。従ってインフルエンザの流行時には、外出時のマスクの利用や帰宅時のうがい、手洗いは、かぜの予防と併せて奨められる。また、インフルエンザの主な感染経路が飛沫感染であることより、周囲への感染拡大を防止する意味から、インフルエンザに罹患している人、咳嗽などの症状のある人は特に、マスクの着用が推奨される。
 インフルエンザの予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることである。欧米では一般的な方法であり、わが国でも近年はワクチン接種率の上昇が見られてきている。インフルエンザワクチンは、罹患した場合の重症化防止に有効と報告されている。例年、インフルエンザの流行は12月下旬以降に始まり、国内の多くの地域での本格的な流行は1月中旬以降にみられることが多い。また、ワクチンを接種してからその効果が現れるまでには通常2週間程度かかるといわれている。従って、インフルエンザワクチンの接種は流行に備えてできれば12月初旬頃までに終えておくことが望ましい。
 感染症発生動向調査によると、インフルエンザ定点当たり報告数は2008年第41週以降増加が続いており、第47週は0.56(報告数2,632)となったが、これは前週の報告数(定点当たり報告数0.31、報告数1,459)を大きく上回った(図1)。都道府県別では山梨県(5.3)、島根県(2.5)、和歌山県(1.6)、大阪府(1.5)、兵庫県(1.5)、栃木県(1.1)の順であり、関東、中部、近畿、中国と複数の地域に流行が広がってきている(図2、図3)。2008年第36週から第47週までの定点当たり累積報告数は1.38(累積報告数6,351)であり、年齢別では5〜9歳1,952例(30.7%)、0〜4歳1,647例(25.9%)、10〜14歳882例(13.9%)、30〜39歳570例(9.0%)、20〜29歳407例(6.4%)の順となっている(図4)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は15都道府県から95件あり、その内訳はAH1亜型19件(20.0%)、AH3亜型40件(42.1%)、B型36件(37.9%)となっているが(図5)、今後どの亜型が流行の主流となるかは現時点では不明である。



図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1998〜2008年第47週) 図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2008年第47週) 図3. 主要都道府県におけるインフルエンザの週別推移(2008年第25〜47週)
図4. 2008/09シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2008年第36〜47週) 図5. インフルエンザウイルス型別分離・検出割合報告(2008年第36〜47週)

 第47週で定点当たり報告数が0.56というのは、1998/99シーズン以降の過去10シーズンと比較しても1987年のインフルエンザの発生動向調査開始以来最も流行の開始が早かった昨シーズン(2007/08シーズン、第47週定点当たり報告数1.53)に次いで高い値である。また、インフルエンザの流行している地域も拡大してきており、現状の推移からは、次週(第48週)かまたは第49週等比較的早期に、インフルエンザ定点当たり報告数の全国平均値が、全国的な流行の開始の指標である1.0を超える可能性が高いと予想される。インフルエンザの発生動向には、更に注意深い観察が必要である。



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