国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第41号ダイジェスト
(2008年10月6日〜10月12日)

 発生動向総覧


※2008年5月12日からの法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第41週コメント〉 10月15日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 結核299例
3類感染症: コレラ1例(感染地域:インド)
細菌性赤痢4例(感染地域:埼玉県1例、中国1例、ベトナム1例、インドネシア1例)
腸管出血性大腸菌感染症98例(有症者56例、うちHUS 5例)

感染地域:国内97例、アラブ首長国連邦1例
国内の多い感染地域:福岡県31例1)、埼玉県7例、千葉県6例、愛知県5例、東京都4例2)、秋田県3例、山形県3例、兵庫県3例、奈良県3例、広島県3例、香川県3例
集団発生:1)うち19例はバーベキューによる集団感染、
     2)うち1例は保育園での集団発生に関連
年齢群:1歳(1例)、2歳(9例)、3歳(4例)、4歳(3例)、5歳(3例)、6歳(1例)、7歳(6例)、8歳(1例)、10代(11例)、20代(20例)、30代(15例)、40代(4例)、50代(4例)、60代(9例)、70代(6例)、90代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(49例)、O157 VT2(15例)、O26 VT(1 7例)、O157 VT(14例)、O145 VT(13例)、O103 VT1(2例)、O111 VT1・VT2(2例)、O91VT1(1例)、O91 VT1・VT2(1例)、O111 VT1(1例)、O115 VT1(1例)、O165 VT2(1例)、その他・不明(11例)

累積報告数:3,695例(有症者2,430例、うちHUS 72例、死亡7例)

腸チフス3例〔感染地域:国内(都道府県不明)1例、インド1例、台湾/インド/ネパール1例〕
4類感染症:
E型肝炎1例

感染地域:青森県
感染源:不明

A型肝炎2例〔感染地域:兵庫県1例、韓国1例〕
オウム病1例

感染地域:山形県
感染源:ハト

デング熱2例(感染地域:フィリピン1例、香港/インド1例)
マラリア1例〔熱帯熱_感染地域:マリ〕
レジオネラ症8例(肺炎型7例、無症状病原体保有者1例)

感染地域:東京都3例、兵庫県2例、山形県1例、千葉県1例(温泉)、富山県1例
年齢群:50代(4例)、60代(1例)、70代(2例)、90代(1例)

レプトスピラ症1例

感染地域:沖縄県_感染原因:川

5類感染症:
アメーバ赤痢7例(腸管アメーバ症5例、腸管及び腸管外アメーバ症2例)

感染地域:群馬県1例、千葉県1例、国内(都道府県不明)2例、台湾1例、タイ/カンボジア1例、中国/タイ/米国1例
感染経路:経口感染2例、性的接触1例(異性間・同性間不明)、経口/性的接触(異性/同性間)1例、不明3例

ウイルス性肝炎4例

B型肝炎3例_感染経路:性的接触(異性間)1例、不明2例
C型肝炎1例_感染経路:性的接触(異性間)

急性脳炎2例〔病原体不明2例_年齢群:4歳(1例)、30代(1例)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:50代)
後天性免疫不全症候群13例(AIDS 5例、無症候8例)

感染地域:国内12例、中国1例
感染経路:性的接触9例(異性間1例、同性間7例、異性間・同性間不明1例)、不明4例

ジアルジア症1例(感染地域:長崎県)
梅毒5例(早期顕症I期1例、早期顕症II期1例、無症候3例)
破傷風3例〔年齢群:30代(1例)、60代(1例)、70代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例

遺伝子型:VanC _菌検出検体:腹水

風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例)

感染地域:東京都1例、山梨県1例
年齢群:15〜19歳(1例)、30代(1例)

麻しん13例〔麻しん(検査診断例3例、臨床診断例7例)、修飾麻しん(検査診断例3例)〕

感染地域:国内12例、フィリピン1例
国内の感染地域:神奈川県3例、東京都2例、埼玉県1例、千葉県1例、大阪府1例、兵庫県1例、都道府県不明3例
年齢群:1歳(1例)、2歳(3例)、5〜9歳(3例)、15〜19歳(1例)、30〜34歳(3例)、35〜39歳(1例)、40代(1例)

累積報告数:10,841例〔麻しん(検査診断例3,117例、臨床診断例6,734例)、修飾麻しん(検査診断例990例)〕

(補)他に、細菌性赤痢1例の報告があったが削除予定。また、2008年第40週までに診断されたものの報告遅れとして、日本紅斑熱5例(感染地域:島根県3例、三重県1例、宮崎県1例)、クリプトスポリジウム症1例(感染地域:インド)などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患によ り小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基 幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(0.41)、栃木(0.21)、佐賀県(0.08)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は1,620例の報告があり、報告数は3週連続で増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(0.64)、愛媛県(0.51)、長崎県(0.45)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では北海道(2.24)、富山県(2.24)、大分県(2.17)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では大分県(6.3)、島根県(6.1)、福井県(6.0)、が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山形県(1.93)、岩手県(1.08)、島根県(0.96)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第37週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では熊本県(3.0)、青森県(1.8)、北海道(1.8)、新潟県(1.8)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では福島県(0.46)、広島県(0.18)、宮城県(0.15)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では宮崎県(0.14)、栃木県(0.13)、千葉県(0.09)、福井県(0.09)、沖縄県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では佐賀県(1.35)、熊本県(0.85)、長野県(0.65)、和歌山県(0.65)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では高知県(1.70)、宮崎県(1.39)、福井県(1.32)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福島県(3.9)、沖縄県(2.9)、宮城県(2.5)が多い。




 注目すべき感染症

◆ RSウイルス感染症

 RSウイルス感染症(respiratory syncytial virus infection)は、病原体であるRSウイルスが感染者の鼻汁、喀痰などから接触感染、あるいは飛沫感染により伝播する呼吸器感染症である。年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返すが、乳幼児期においては非常に重要な疾患である。特に乳児期早期においては、母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、生後数週間〜数カ月間の時期に下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす。乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の50〜90%を占めるとの報告もある。また、低出生体重児や、心肺系の基礎疾患や免疫不全が存在する場合には重症化のリスクは高く、臨床上、公衆衛生上のインパクトは大きい。
 RSウイルス感染症の発生動向については、感染症法改正(2003年11月5日施行)により対象疾患となり、全国約3,000の小児科定点医療機関から毎週報告がなされている。診断は臨床症状のみでは不可能であることから、届出基準としてウイルスの分離・同定、迅速診断キットによる抗原検出、清抗体検出(中和反応または補体結合反応)による病原検査が必須とされている。しかし、臨床現場で最も簡便な迅速診断キット検査については、現在も保険適用が入院症例に限定されており、小児科定点医療機関の70%以上を占める病院以外の一般診療所では多くの症例が診断に至らずに報告されていないものと推察される。RSウイルス感染症の発生動向調査には大きな制約があり、現状を正確に反映しているとは必ずしも言えないが、年々その報告数は増加してきている。
 感染症発生動向調査によると、2008年第41週の小児科定点からのRSウイルス感染症の報告数は1,620例であり、増加傾向が継続している(図1)。2008年第1週から第41週までの小児科定点医療機関からの累積報告数は25,577例であり、都道府県別でみると福岡県3,514例、大阪府2,451例、北海道1,774例、山口県1,240例、兵庫県1,219例、福島県1,097例の順となっており、特に福岡県や大阪府からの報告数が多い(図2)。累積報告数を年齢群別でみると、0歳児45.0%(0〜5カ月21.6%、6〜11カ月23.4%)、1歳児30.9%、2歳児12.9%、3歳児5.9%、4歳児2.8%のであり、1歳以下で全報告数の75%前後、4歳以下で全報告数の95%前後を占めていることは、2004年以降変わっていない(図3、図4)
 RSウイルス感染症の現状の発生動向調査結果には、前途のような制約があるものの、2008年は患者報告数の立ち上がりの時期が例年と比べて早く、今後の発生動向にはより一層の注意が必要である。

図1. RSウイルス感染症の年別・週別発生状況(2003年第45週〜2008年第41週) 図2. RSウイルス感染症の都道府県別累積報告状況(2008年第1〜41週) 図3. RSウイルス感染症累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜41週)
図4. RSウイルス感染症の年別・年齢群別割合(2004年〜2008年第41週)







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