国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第22号ダイジェスト
(2008年5月26日〜6月1日)

 発生動向総覧


※2008年5月12日からの法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第22週コメント〉 6月4日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 結核330例
3類感染症: 細菌性赤痢1例[感染地域:国内(都道府県不明)]
腸管出血性大腸菌感染症43例(有症者29例、HUSなし)

感染地域:愛知県6例、岐阜県5例、京都府4例、大阪府3例、富山県2例、石川県2例、静岡県2例、山口県2例、福岡県2例、長崎県2例、鹿児島県2例、宮城県1例、山形県1例、新潟県1例、群馬県1例、東京都1例、神奈川県1例、長野県1例、兵庫県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:2歳(3例)、3歳(1例)、4歳(3例)、5歳(2例)、6歳(2例)、7歳(1例)、8歳(1例)、9歳(1例)、10代(4例)、20代(8例)、30代(4例)、40代(7例)、50代(1例)、60代(4例)、70代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2( 16例)、O157 VT2( 8例)、O121 VT2(4例)、O26 VT1・VT2(3例)、O165 VT2(2例)、O18 VT2(1例)、O91 VT1(1例)、O145 VT1・VT2(1例)、その他・不明(7例)

腸チフス2例[感染地域:国内(都道府県不明)1例、インド1例]
4類感染症:
E型肝炎1

感染地域:北海道
感染源:豚内臓

つつが虫病7例(感染地域:青森県2例、福島県2例、宮城県1例、山形県1例、長野県1例)
デング熱2例(感染地域:インドネシア2例)
日本紅斑熱4例(感染地域:広島県2例、長崎県1例、鹿児島県1例)
マラリア1例〔熱帯熱_感染地域:カメルーン〕
レジオネラ症6例(肺炎型5例、無症状病原体保有者1例)

感染地域:埼玉県1例、石川県1例、大阪府1例、兵庫県1例(温泉)、愛媛県1例、宮崎県1例(温泉)
年齢群:3歳(1例)、60代(2例)、70代(1例)、80代(2例)

5類感染症:
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症3例)

感染地域:岩手県1例、千葉県1例、岐阜県1例、愛知県1例、大阪府1例、兵庫県1例、愛媛県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)1例、インドネシア1例
感染経路:経口感染3例、不明7例

ウイルス性肝炎5例

B型肝炎4例_感染経路:性的接触4例(異性間2例、異性間・同性間不明2例)
C型肝炎1例_感染経路:性的接触(異性間)

急性脳炎1例(ヘルペスウイルス_年齢群:10代)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
後天性免疫不全症候群10例(無症候7例、AIDS 3例)

感染地域:国内10例
感染経路:性的接触7例(異性間2例、同性間4例、異性/同性間1例)、不明3例

梅毒14例(早期顕症I期4例、早期顕症II期5例、晩期顕性1例、先天梅毒1例、無症候3例)
破傷風2例〔年齢群:70代(2例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例

遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:血液

風しん7例(検査診断例4例、臨床診断例3例)

感染地域:福岡県2例、京都府1例、大阪府1例、和歌山県1例、熊本県1例、中国1例
年齢群:0歳(2例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(1例)、25歳〜29歳(1例)、30〜34歳(1例)、70代(1例)

麻しん277例〔麻しん(検査診断例68例、臨床診断例185例)、修飾麻しん(検査診断例24例)〕

感染地域:国内276例、中国1例
国内の多い感染地域:千葉県65例、北海道64例、神奈川県28例、大阪府15例、埼玉県13例、東京都11例、京都府11例、三重県10例
年齢群:0歳(17例)、1歳(15例)、2歳(4例)、3歳(4例)、4歳(2例)、5〜9歳(18例)、10〜14歳(34例)、15〜19歳(115例)、20〜24歳(21例)、25〜29歳(20例)、30〜34歳(13例)、35〜39歳(9例)、40代(4例)、50代(1例)

累積報告数:8,775例〔麻しん(検査診断例2,388例、臨床診断例5,665例)、修飾麻しん(検査診断例722例)〕

(補)他に2008年第21週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:タイ/インドネシア)、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、オウム病2例(感染地域:宮城県2例.感染源:インコ2例)、日本紅斑熱1例(感染地域:島根県)、レジオネラ症1例〔感染地域:富山県(温泉)〕、急性脳炎3例〔B群レンサ球菌1例(70代)、病原体不明2例(1歳、10代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔10代(1例.死亡)、80代(1例.死亡)〕、髄膜炎菌性髄膜炎1例(感染地域:千葉県.30代.死亡)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:尿)、風しん5例〔検査診断例2例、臨床診断例3例.感染地域:静岡県2例、栃木県1例、千葉県1例、岡山県1例.年齢群:1歳(2例)、5歳(1例)、8歳(1例)、40代(1例)〕などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患によ り小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基 幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(2.66)、北海道(0.45)、岐阜県(0.40)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は121例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約68%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では石川県(1.52)、秋田県(1.43)、大阪府(1.31)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では埼玉県(4.6)、鳥取県(4.4)、長野県(4.3)、茨城県(4.3)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福井県(11.2)、長野県(10.4)、富山県(9.4)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(5.1)、千葉県(3.9)、長野県(3.8)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第15週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(9.7)、長崎県(4.7)、鹿児島県(4.4)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(0.72)、新潟県(0.65)、岡山県(0.57)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では広島県(0.51)、愛媛県(0.43)、宮崎県(0.36)、千葉県(0.35)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では石川県(4.1)、愛媛県(2.9)、宮崎県(2.0)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では佐賀県(1.83)、宮崎県(1.78)、岐阜県(1.75)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では群馬県(2.63)、福島県(2.57)、沖縄県(2.43)が多い。





 注目すべき感染症

◆ 咽頭結膜炎

 咽頭結膜熱は主にアデノウイルス3型(他に1、2、5、6、7型等でもみられる)に感染することによってみられる咽頭炎、結膜炎を主とする急性ウイルス性感染症である。発熱、咽頭炎(咽頭発赤、咽頭痛)、結膜炎(結膜充血、眼痛、流涙、眼脂)が3主症状であり、通常感染曝露からの潜伏期間が5〜7日、有症状期間は3〜5日といわれている。感染経路は主に飛沫感染、接触感染であるが、その感染力は強く、タオル、ドアの把手、エレベーターのボタン、階段の手すり等の患者が触れたものを触ることによっても感染する場合があり、手洗いの励行と排泄物の適正な処理が感染予防の基本となる。しかし、本疾患は症状消失後も約1カ月間に渡って尿・便中にウイルスが排出されるといわれており、更に感染後発病はしない無症候病原体保有者も存在するため、効果的な感染予防対策の実行は困難であり、毎年全国的に乳幼児施設や小児施設において集団感染がみられている。
 感染症発生動向調査によると、小児科定点からの咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2008年は第20週以降第22週まで3週間連続して増加し、過去10年間の同週と比較しても最も報告数の多かった2006年に次ぐ報告数となっている(図1)。第22週の定点当たり報告数は0.69(報告数2,086)であり、都道府県別では石川県(1.52)、秋田県(1.43)、大阪府(1.31)、大分県(1.25)、兵庫県(1.17)の順となっている(図2)。第1〜22週までの定点当たり累積報告数は6.83(累積報告数20,599)となっており、都道府県別では長崎県(14.07)、石川県(12.79)、大分県(12.44)、大阪府(12.14)、山口県(11.88)、青森県(11.73)、佐賀県(11.65)の順となっている(図3)。年齢別でみると、例年5歳以下が全報告数の70%以上と発生の中心であり、7歳までで90%前後を占めているが、2008年は第22週までで2〜3歳29.6%、0〜1歳29.3%、4〜5歳23.8%の順となっており、5歳以下で全体の80%を上回っている(図4、図5)

 全国の地方衛生研究所からの報告によると、第1週からこれまでに咽頭結膜熱患者から分離されたウイルス(総分離報告数59)では、アデノウイルス2型、3型が共に30.5%(分離報告数18)と同数であり、次いで5型8.5%、1型5.1%の順となっており、2007年に引き続いて3型の報告割合は50%以下となっている(図6)

図1. 咽頭結膜熱の年別・週別発生状況(1998〜2008年第22週)

図2. 咽頭結膜熱の都道府県別報告状況(2008年第22週)

図3. 咽頭結膜熱の都道府県別累積報告状況(2008年第1〜22週)

図4. 咽頭結膜熱の年別・年齢群別割合(2000年〜2008年第22週)

図5. 咽頭結膜熱累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜22週)

図6. 咽頭結膜熱分離ウイルスの型別割合 2008年


 咽頭結膜熱の報告数は夏季を迎えてさらに増加し、間もなく本格的な流行時期を迎えるものと推定される。今後ともその発生動向には注意深い観察が必要である。





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