国立感染症研究所 感染症情報センター
Go to English Page
ホーム疾患別情報サーベイランス各種情報
IDWR 感染症発生動向調査週報

第23号ダイジェスト
(2007年6月4日〜6月10日)

 発生動向総覧


*2007年4月からの法改正に伴い、疾病の追加および並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第23週コメント〉 6月13日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 結核 193例
3類感染症: 細菌性赤痢20例(感染地域:埼玉県10例*、青森県1例、秋田県1例、東京都1例、神奈川県1例、長野県1例、愛媛県1例、インド1例、フィリピン1例、ベトナム1例、エジプト1例)*知的障害者施設における集団発生
腸管出血性大腸菌153例(うち有症者76例、HUSなし)

感染地域:すべて国内
国内の多い感染地域:東京都79例*、大分県11例**、兵庫県6例、大阪府6例
*第22週に続き学校の学生食堂における食中毒例を含む。
**第22週に続き幼稚園に関連した集団例を含む。
年齢群:10歳未満(34例)、10代(54例)、20代(36例)、30代(9例)、40代(8例)、50代(4例)、60代(4例)、70歳以上(4例)
血清型・毒素型:O157 VT2( 89例)、O157 VT1・VT2( 28例)、O111 VT1・VT2( 12例)、O26 VT1( 11例)、O121 VT2( 4例)、O157 VT1(2例)、O91 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、O26 VT1・VT2(1例)、その他/不明(4例)

腸チフス1例(感染地域:インド)
4類感染症: A型肝炎2例(感染地域:三重県1例、中国1例)
オウム病1例(感染地域:神奈川県.感染源:インコ)
つつが虫病3例(感染地域:福島県2例、秋田県1例)
デング熱1例(感染地域:インドネシア)
日本紅斑熱1例(感染地域:宮崎県)
レジオネラ症12例(すべて肺炎型)

年齢群:30代1例、40代1例、60代4例、70代4例、80代2例
感染地域:福島県2例(うち1例温泉)、埼玉県2例、広島県2例、京都府1例、大阪府1例、兵庫県1例、福岡県1例、大分県1例(温泉)、国内(都道府県不明)1例

5類感染症:
アメーバ赤痢3例

(腸管アメーバ症2例、腸管外アメーバ症1例)
感染地域:すべて国内
感染経路:経口2例、性的接触(異性間)1例

ウイルス性肝炎2例
B型1例_感染経路:性的接触(異性間)
C型1例_感染経路:母子感染
急性脳炎3例〔すべて病原体不明(6歳、10代、70代.うち1例死亡)〕
クリプトスポリジウム症1例(感染地域:広島県)
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(80代)
後天性免疫不全症候群17例(AIDS 3例、無症候13例、その他1例)

感染地域:すべて国内
感染経路:性的接触15例(異性間2例、同性間13例)、不明2例

梅毒6例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、無症候2例)
破傷風1例(80代)

(補)他に、腸管出血性大腸菌感染症1例の報告があったが、削除予定。また報告遅れとして、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):愛知県(いのしし燻製肉)〕、急性脳炎3例〔すべて病原体不明(2歳、9歳、10代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(40代)などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は第12週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(7.4)、鹿児島県(1.6)、秋田県(1.4)、宮城県(1.4)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は254例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約74%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では富山県(2.1)、山形県(1.6)、島根県(1.3)、青森県(1.3)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では埼玉県(4.4)、富山県(4.4)、山形県(4.0)、宮崎県(3.9)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では滋賀県(10.4)、福井県(9.8)、大分県(9.7)、三重県(9.7)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(3.8)、三重県(3.2)、福井県(3.1)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では熊本県(3.5)、宮崎県(2.7)、佐賀県(2.7)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では長野県(4.4)、富山県(2.8)、石川県(2.7)、新潟県(2.6)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では徳島県(0.13)、栃木県(0.09)、千葉県(0.08)が多い。風しんの報告数は増加した。都道府県別では埼玉県3例、栃木県、千葉県、神奈川県、兵庫県から各2例、茨城県、東京都、静岡県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、広島県から各1例の順であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(3.8)、山口県(2.8)、佐賀県(2.0)が多い。麻しんの報告数は横ばいであり、30都道府県から204例の報告があった。都道府県別では千葉県48例、神奈川県28例、埼玉県25例、北海道16例、東京都13例、大阪府10例、宮城県8例、広島県、福岡県から各7例、栃木県、山梨県から各5例、香川県から4例、愛知県、岡山県から各3例、岩手県、福島県、新潟県、長野県、兵庫県、佐賀県から各2例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では高知県(1.3)、新潟県(1.1)、富山県(1.0)、三重県(1.0)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(2.3)、群馬県(1.9)、岡山県(1.4)が多い。成人麻しんの報告数は2週連続で減少し、20都道府県から50例の報告があった。都道府県別では、東京都17例、神奈川県5例、宮城県4例、山形県、新潟県から各3例、千葉県、兵庫県、広島県から各2例、北海道、岩手県、福島県、石川県、福井県、山梨県、静岡県、愛知県、鳥取県、島根県、愛媛県、佐賀県から各1例の報告があった。




 注目すべき感染症


◆ 麻しん

感染症発生動向調査によると、全国約3,000カ所の小児科定点からの麻しんの報告数は、2007年第23週は30都道府県から204例(定点当たり報告数0.068)の報告があり、前週の第22週と同じであった(図1)。都道府県別では千葉県48例、神奈川県28例、埼玉県25例、北海道16例、東京都13例、大阪府10例、宮城県8例、広島県、福岡県から各7例、栃木県、山梨県から各5例、香川県から4例、愛知県、岡山県から各3例、岩手県、福島県、新潟県、長野県、兵庫県、佐賀県から各2例の順であり、南関東地域(千葉県、埼玉県、神奈川県、東京都)からの報告数は114例と前週よりも減少しているものの、千葉県のみは増加が続いている(図2)。

図1. 麻しんの年別・週別発生状況(1997年〜2007年第23週)

図2. 主要都道府県における麻しんの報告の週別推移(2007年第1〜23週)

2007年第1〜23週までの小児科定点からの累積報告数は1,529例(定点当たり報告数0.51)であり、都道府県別では埼玉県274例、千葉県259例、東京都208例、神奈川県152例、北海道87例、大阪府62例、栃木県57例、宮城県51例、広島県38例、山梨県35例、茨城県32例、福岡県27例、愛知県、鹿児島県から各24例、長野県23例、香川県21例、兵庫県19例、徳島県18例、岡山県17例、群馬県12例の順となっている(図3)。累積報告数の年齢別割合では、0〜4歳の報告割合は37.1%と例年(55〜67%)と比べて低く、10〜14歳の報告割合は30.7%と例年(5〜15%)よりも高い(図4)。

図3. 麻しんの都道府県別累積報告状況(2007年第1〜23週)

図4. 麻しんの報告症例の年別・年齢群別割合(2000年〜2007年第23週)

全国約450カ所の基幹定点からの成人麻しん(届出対象は15歳以上)の2007年第23週の報告数は20都道府県から50例(定点当たり報告数0.108)となり、2週連続で減少した(図5)。都道府県別では、東京都17例、神奈川県5例、宮城県4例、山形県、新潟県から各3例、千葉県、兵庫県、広島県から各2例、北海道、岩手県、福島県、石川県、福井県、山梨県、静岡県、愛知県、鳥取県、島根県、愛媛県、佐賀県から各1例の報告があった。2007年第1〜23週までの累積報告数は525例(定点当たり報告数1.15)であり、都道府県別では東京都183例、神奈川県71例、宮城県53例、埼玉県36例、北海道16例、千葉県13例、山形県、長野県、広島県から各11例、新潟県10例、福島県、茨城県、群馬県、石川県から各9例、大阪府8例、岩手県、島根県から各7例、山梨県6例の順である(図6)。東京都、神奈川県、宮城県、埼玉県、北海道の上位5都道県からの報告数は減少している(図7)。累積報告数の年齢別割合では、20〜24歳(31.0%)、25〜29歳(23.8%)、15〜19歳(23.6%)の順であり、34歳以下で全報告数の約90%を占めている(図8)。

図5. 成人麻しんの年別・週別発生状況(1999年第14週〜2007年23週)

図6. 成人麻しんの都道府県別累積報告状況(2007年第1〜23週)

図7. 主要都道府県における成人麻しんの報告の週別推移(2007年第1〜23週)

図8. 成人麻しんの報告症例の年齢群別割合(2007年第1〜23週)

麻疹の重篤な合併症である麻疹脳炎の発生は、第23週は新たな報告はみられていないが、2007年第1週以降これまでに3例(10代1例、20代2例)の発生報告があった。

全国の衛生研究所における麻疹ウイルスの分離・検出状況をみると、2007年2月〜6月に山形県、茨城県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、石川県、山梨県、大阪府、兵庫県、島根県、福岡県、佐賀県、沖縄県の15都府県から計142件の報告がされている。そのうちウイルスの遺伝子型別が実施された82件中80件はD5型が検出されており、残りの2件はワクチン接種約2週間後に採取された検体からPCRでA型が検出されている(本号11〜12ページ病原体情報参照、最新の報告数は感染症情報センターホームページ:https://nesid3g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data61j.pdfに掲載)。

第23週までの小児科定点からの麻しんおよび基幹定点からの成人麻しんの発生報告数をみると、小児科定点からの麻しんの報告数は第19週以降はほぼ横ばい状態が続いているが、成人麻しんの報告数は2週間連続して減少している。成人麻しんの発生報告数は、東京都をはじめとする南関東地域においても減少傾向にあるが、小児科定点からの麻しんの報告数は千葉県ではまだ増加が続いている。麻しん及び成人麻しんの発生動向は依然として注意が必要である。

今回の日本国内における麻疹の流行は、10代、20代の年齢層においての発生報告例が多いことが特徴であり、これは1978年に麻疹ワクチンが定期接種となり、大半が麻疹ワクチンを1回接種していることに加えて、麻疹ワクチンの接種から比較的長い年月が経過している世代において麻疹の流行がみられていることを示している。この流行形態は、既に麻疹が国内から排除された米国や韓国においても、麻疹関連ワクチン(麻疹ワクチン、麻疹・風疹・おたふくかぜ混合ワクチン等)の接種者の多くが1回接種者であった時期に一時的にみられている。2001年のように、発病者の大半が乳幼児であった大きな麻疹の流行は2度と招くべきではなく、そのためには現在の麻疹関連ワクチン(麻疹・風疹混合ワクチンもしくは麻疹ワクチン)定期接種対象者に対するより積極的なワクチンの接種勧奨と高い接種率の維持が必要であることはいうまでもない。しかしながら今回と同様の流行が繰り返されないためには、大半が麻疹ワクチンを1回接種している世代に対する麻疹感受性者対策、学校や施設等における麻疹発生時の積極的な対応、その対応の迅速で円滑な実施のために重要な麻疹発生例の全数把握の実現等の新たな対策が必要であると思われる。

以下に、麻しん関連情報として感染症情報センターのホームページに掲載されている主な項目とそのURLを挙げる。麻しん対策として活用いただければ幸いである。

麻疹(はしか)
□緊急情報
□関連情報(注目すべき感染症/速報「麻しん」、施設別発生状況(学校欠席者数)、医療機関での麻疹の対応について、保育園・幼稚園・学校等での麻しん患者発生時の対応マニュアル)
□国内情報(麻疹の現状と今後の麻疹対策について、我が国の健常人における麻疹PA抗体保有率、病原微生物情報[IASR]麻疹特集、ウイルス検出状況他)

Q&A
麻疹発生DB(データベース)
予防接種の話「麻疹」
年齢別麻疹、風疹、MMRワクチン接種率
感染症の話「麻疹」
「麻疹・風疹ワクチンなぜ2回接種なの?」ポスター
「麻疹風疹混合ワクチンを1歳のお誕生日のプレゼントにしましょう」ポスター
「小学校入学準備に2回目の麻疹・風疹ワクチンを!」ポスター
2006年度第2期麻疹・風疹ワクチン接種に関する全国調査−2006年10月1日現在中間評価−




↑ トップへ戻る

Copyright ©2004 Infectious Disease Surveillance Center All Rights Reserved.