国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第52号ダイジェスト
(2006年12月25日〜31日)

 発生動向総覧


*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症


〈第52週コメント〉2007年1月9日集計分

注意:これはこれは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 細菌性赤痢6例〔感染地域:千葉県2例、国内(都道府県不明)1例、インド1例、インドネシア1例、エジプト1例〕
腸チフス1例(感染地域:インド)
3類感染症: 腸管出血性大腸菌感染症 26例(うち有症者17例、HUS 1例)
感染地域:すべて国内
国内の多い感染地:愛知県5例
年齢群:10歳未満(7例)、10代(4例)、20代(4例)、30代(2例)、40代(1例)、50代(6例)、60代(1例)、70歳以上(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(13例)、O26 VT1(5例)、O157 VT2(3例)、O157 VT1(2例)、その他/不明(3例)
4類感染症: E型肝炎1例(感染地域:和歌山/中国/韓国.感染源:豚肉/牛肉)
A型肝炎1例(感染地域:岩手県)
つつが虫病10例(感染地域:鹿児島県3例、千葉県2例、兵庫県2例、茨城県1例、岐阜県1例、和歌山県1例)
デング熱2例(感染地域:フィリピン1例、サモア1例)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:セネガル)
レジオネラ症 7例(肺炎型6例、無症状病原体保有者1例)
年齢群:50代2例、60代2例、70代3例
感染地域:北海道2例、新潟県1例(温泉)、長野県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)1例、国内・国外不明1例
5類感染症:
アメーバ赤痢 14例(腸管アメーバ症12例、腸管外アメーバ症2例)

感染地域:国内11例、台湾1例、キルギス1例、国外(国不明)1例
感染経路:経口2例、性的接触3例(異性間2例、同性間1例)、経口/性的接触(異性間)1例、不明8例
ウイルス性肝炎1例〔B型_感染経路:性的接触(異性間)〕
急性脳炎1例(病原体不明.9歳)
クロイツフェルト・ヤコブ病4例(孤発性プリオン病古典型3例、感染性プリオン病医原性1例)
後天性免疫不全症候群11例(無症候8例、AIDS 3例)
感染地域:国内9例、国外(国不明)1例、国内・国外不明1例
感染経路:すべて性的接触(異性間5例、同性間5例、異性間/同性間1例)
ジアルジア症2例(感染地域:国内1例、インド1例)
梅毒4例(早期顕症I期2例、早期顕症II期1例、無症候1例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症 3例
遺伝子型:VanA 1例_菌検出検体:尿、遺伝子型:VanC 1例_菌検出
検体:胆汁、遺伝子型:不明1例_菌検出検体:血液
(補)他に報告遅れとして、細菌性赤痢3例(感染地域:エジプト2例.疑似症1例)、腸チフス1例(疑似症)、E型肝炎1例(感染地域:北海道.感染源:不明)、デング熱1例(感染地域:サモア)、レジオネラ症1例〔感染地域:宮城県(温泉)〕、急性脳炎1例(ノロウイルス.1歳)などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は第43週以降、増加が続いている。都道府県別では宮崎県(4.3)、岐阜県(2.3)、大分県(2.2)、広島県(1.1)、愛知県(1.1)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は3,977例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では山形県(3.2)、北海道(1.7)、富山県(1.5)、石川県(1.4)、秋田県(1.4)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続して減少したが、過去5年間の同時 期と比較してやや多い。都道府県別では富山県(4.0)、鳥取県(4.0)、北海道(3.9)、新潟県(3.9)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福井県(23.1)、高知県(20.5)、宮城県(19.9)、福島県(19.4)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では大分県(6.4)、島根県(5.5)、福井県(5.5)、山形県(5.0)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(2.0)、山形県(1.6)、佐賀県(1.4)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第47週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では富山県(1.17)、宮城県(1.13)、岩手県(0.90)、北海道(0.87)が多い。百日咳の定点当たり報告数は微増した。都道府県別では栃木県(0.09)、愛媛県(0.05)、千葉県(0.04)が多い。風しんの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(0.03)、長野県(0.02)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮城県(0.13)、熊本県(0.13)が多い。麻しんの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では埼玉県(0.03)、新潟県(0.02)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は第49週以降、減少が続いている。都道府県別では新潟県(3.0)、宮崎県(2.5)、岩手県(2.4)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では沖縄県(3.3)、大阪府(2.4)、青森県(1.7)が多い。成人麻しんは埼玉県から1例の報告があった。



 注目すべき感染症

◆ インフルエンザ

インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性呼吸器感染症である。典型的な症状としては、突然の高熱、頭痛、咽頭痛、関節痛、全身倦怠感で始まり、呼吸器症状を示し、時に消化器症状を伴うこともある。発熱は3〜4日間続き、通常は1週間程度で治癒する。しかし、高齢者では超過死亡の多くを占める二次性の細菌性肺炎、小児では発症率は低いものの生命に関わる可能性のあるインフルエンザ脳症等の合併症が知られている。

日本を含む北半球の温帯地域では、例年冬季を中心に大きな流行がみられている。現在ヒトの世界では、2種類のA型ウイルス(A/H1N1亜型;Aソ連型、A/H3N2亜型;A香港型)とB型ウイルスの計3種類のインフルエンザウイルスが流行を繰り返している。日本では2004/05シーズンにはB型が、2005/06シーズンにはA/H3N2亜型が流行の主流であった。

図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1996年〜2006年第52週)

図2. 2006/07シーズンインフルエンザウイルス分離状況(2006年第36〜52週)

感染症発生動向調査によると、2006年第52週の定点当たり報告数は0.32(報告数1,389)であり、12月中には全国的な流行の指標である定点当たり報告数1.0に達しなかった(図1)。都道府県別では宮崎県(4.3)、岐阜県(2.3)、大分県(2.2)、広島県(1.1)、愛知県(1.1)、滋賀県(0.92)、沖縄県(0.69)の順である。注意報レベルを超えている保健所地域が3カ所(宮崎県2カ所、大分県1カ所)みられるが、第50週、第51週と同様、警報レベルを超えている保健所地域はみられていない。

2006年第36週以降これまでに全国の衛生研究所から報告されたインフルエンザウイルスの分離報告では、B型51.9%(報告数27)、AH1(Aソ連)亜型25.0%(13)、AH3(A香港)亜型23.1%(12)の順となっている(図2)。

2007年1月には、インフルエンザの全国的な流行が近づいてくるものと予想される。今後のインフルエンザの発生動向には、より注意深い観察が必要である。


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