国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第42号ダイジェスト
(2006年10月16〜22日)

 発生動向総覧


*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症


〈第42週コメント〉10月26日集計分

注意:これはこれは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: コレラ1例(感染地域:フィリピン)
細菌性赤痢3例(感染地域:三重県2例、インド1例)
3類感染症: 腸管出血性大腸菌感染症73例(うち有症者48例、HUS 1例)
感染地域:すべて国内
国内の多い感染地:福島県(20例、すべて同一保育園に関連)
年齢群:10歳未満(30例)、10代(5例)、20代(10例)、30代(9例)、40代(3例)、50代(6例)、60代(7例)、70歳以上(3例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(46例)、O157 VT2(17例)、O26 VT1(7例)、O26 VT1・VT2(1例)、O103 VT1(1例)、その他/不明(1例)
4類感染症: A型肝炎4例(感染地域:韓国1例、バングラデシュ1例、中国/カンボジア1 例、マレーシア/カンボジア1例)
つつが虫病1例(感染地域:福島県)
デング熱2例(感染地域:インド1例、フィリピン1例)
日本紅斑熱1例(感染地域:三重県)
日本脳炎2例(感染地域:島根県1例、福岡県1例.ともに50代)
ライム病1例(感染地域:福岡県)
レジオネラ症 8例(すべて肺炎型)
年齢群:40代1例、50代2例、60代1例、70代2例、80代2例
感染地域:東京都2例(ともに温泉)、宮城県1例、山形県1例、福島県1例、 新潟県1例、愛知県1例、兵庫県1例
レプトスピラ症1例(感染地域:鹿児島県、感染源:河川水)
5類感染症:
アメーバ赤痢5例 (腸管アメーバ症4例、腸管外アメーバ症1例)
感染地域:国内2例、中国3例
感染経路:経口2例、性的接触(異性間)1例、不明2例
ウイルス性肝炎3例
すべてB型〔感染経路:性的接触2例(異性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明1例〕
急性脳炎2例(ともに病原体不明.20代1例、50代1例)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例
(孤発性プリオン病古典型1例、遺伝性プリオン病家族性1例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(血清群:G群、70代.死亡)
後天性免疫不全症候群 11例(無症候8例、AIDS 3例)
感染地域:国内9例、中国1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触10例(異性間2例、同性間8例)、不明1例
ジアルジア症2例(感染地域:国内1例、ベトナム1例)
梅毒6例(早期顕症I期3例、早期顕症II期2例、無症候1例)
破傷風1例(80代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanA_菌検出検体:尿)
(補)他に報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:愛知県)、オウム病1例(感染地域:宮城県.感染源:ツバメ)、急性脳炎2例〔ともに病原体不明(0歳1例、20代1例).うち1例死亡〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(血清群:A群.50代)などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は増加した。都道府県別では大分県(0.34)、沖縄県(0.16)、徳島県(0.03)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は155例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の81%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は微増し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では秋田県(1.11)、三重県(0.82)、宮崎県(0.78)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では鳥取県(3.2)、北海道(2.8)、福島県(2.5)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第39週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では熊本県(13.7)、鳥取県(11.2)、大分県(11.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では福井県(1.9)、和歌山県(1.2)、青森県(1.1)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(3.6)、長野県(2.4)、石川県(2.0)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(0.79)、宮崎県(0.68)、栃木県(0.65)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では千葉県(0.11)、長野県(0.09)、山形県(0.07)が多い。風しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では福井県(0.05)、山形県(0.03)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第28週以降、減少が続いている。都道府県別では宮城県(0.49)、秋田県(0.49)、岩手県(0.33)が多い。麻しんの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では富山県1例(0.03)、大分県1例(0.03)、青森県1例(0.02)、東京都2例(0.01)の報告である。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(4.1)、島根県(2.8)、長野県(2.6)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(3.1)、大阪府(2.7)、群馬県(1.8)が多い。



 注目すべき感染症

◆ 感染性胃腸炎

感染性胃腸炎は、多種多様の病原体による疾患を包含する症候群である。現在、5類感染症定点把握疾患に規定されており、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関から週単位で報告がなされている。1999年4月の感染症法施行以前には、「感染症サーベイランス事業」として感染性胃腸炎(ウイルスまたは細菌による感染性胃腸炎を一括したもの)と乳児嘔吐下痢症が報 告対象になっていた。感染性胃腸炎の病原体としては、夏季に増加するサルモネラ、腸炎ビブリオ、下痢原性大腸菌などの細菌もありうるが、実際に報告数が増加するのは冬季であり、多くはノロウイルスやロタウイルス等のウイルスであると推測される。

図1. 感染性胃腸炎の年別発生状況(2000〜2005年) 図2. 感染性胃腸炎の年別・週別発生状況(1996年〜2006年第42週) 図3. 感染性胃腸炎の報告症例の年別・年齢群別割合(2000年〜2006年第42週)

感染性胃腸炎の累積報告数を2000年以降でみると、毎年90万人前後であり(図1)、小児科定点報告疾患の中では最多である。時期別にみると、例年、最大のピークは年末の第51週前後にあり、その後1〜3月の時期に小さなピークを迎え、夏季に向かって減少していく(図2)。冬季を中心とした報告数の増加は、ノロウイルス、ロタウイルスに関連しているものと推測される(IASR, Vol 24. No 12. p321-322参照)。また年齢でみると、発生の中心は乳幼児であり、例年5歳以下が全体のほぼ60%を占めている(図3)。

2006年について都道府県別でみると、第42週の定点当たり報告数は熊本県(13.7)、鳥取県(11.2)、大分県(11.1)、福岡県(8.8)、福井県(8.6)の順であり、また第1〜42週の累積報告数では、宮崎県(444.4)、福井県(435.6)、大分県(429.8)、山口県(351.3)、三重県(338.3)の順となっている(図4)。

図4. 感染性胃腸炎の都道府県別報告状況(2006年第1〜42週)

これまでの発生動向調査からすると、本疾患の報告数は今後、年末のピークに向かって急激な増加がみられるものと予想される(図2)。本疾患は小児科定点からの報告疾患であるが、特別養護老人ホーム等の高齢者の集団生活施設においても多くの集団発生がみられており、必ずしも小児に限定するものではない。今後とも、感染性胃腸炎の発生動向には注意が必要である。


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