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第29週ダイジェスト
(2004年7月12日〜18日)

発生動向総覧(6月報含む)
・注目すべき感染症

 をPDF版よりピックアップして掲載しています。

 発生動向総覧

〈第29週コメント〉7月22日集計分

*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43 号「速報」参照)。

全数報告の感染症

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計 を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

コレラ 2例(推定感染地域:ともにフィリピン)
細菌性赤痢 11例(推定感染地域:国内2例、中国3例、インド1例、インドネシア1例、タイ1例、エチオピア/タイ1例、ベトナム1例.疑似症1例)
腸チフス1例(推定感染地域:バングラデシュ)
パラチフス 1例(推定感染地域:ネパール)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症 203例(うち有症者129例)
報告の多い都道府県:石川県(73例)、大阪府(10例)、栃木県(9例)、東京都(9例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(52例)、O111 VT1・VT2(48例)、O26 VT1(29例)、O157 VT2(23例)、O157 VT1(4例)、O111 VT2( 2例)、O146 VT2( 2例)、O26 VT1・VT2( 1例)、O111 VT1(1例)、O119 VT2(1例)、O63 VT1(1例)、その他(39例)
年齢:10歳未満(70例)、10代(68例)、20代(31例)、30代(11例)、40代(7例)、50代(7例)、60代(3例)、70歳以上(6例)

4類感染症:

エキノコックス症1例(多包条虫)
マラリア1例(熱帯熱_推定感染地域:セネガル)
レジオネラ症2例(53歳、56歳)
A型肝炎1例(推定感染地域:不明)

5類感染症:

アメーバ赤痢5例(推定感染地域:国内4例、不明1例.推定感染経路:経口感染1例、性的接触1例、不明3例)
ウイルス性肝炎2例ともにB型(推定感染経路:性的接触1例、不明1例)
クロイツフェルト・ヤコブ病4例(いずれも孤発性)

後天性免疫不全症候群 13例

(無症候10例、AIDS 3例)
推定感染経路:性的接触11例(異性間3例、同性間8例)、不明2例
推定感染地域:国内10例、ブラジル1例、ベトナム1例、タイ1例

梅毒6例(無症候2例、早期顕症I期3例、早期顕症II期1例)
破傷風2例(59歳、92歳)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(ともにVanB _菌検出検体:ともに便)

(補)他に、ウィルス性肝炎1例、梅毒1例の報告があったが削除予定。

定点把握の対象となる5類感染症

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。


小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第11週から増加傾向が認められているが、第26週には過去10年間の全ての週と比較して最高値を示し、その後も最高値を更新し続けている。都道府県別では埼玉県(2.4)、長野県(2.2)、滋賀県(2.2)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第23週から減少が続いている。しかし、第19週を除き、第7週から継続して過去10年間の当該週と比較して最高値を示している。都道府県別では、愛媛県(2.6)、鳥取県(2.3)、富山県(2.2)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第12週から減少傾向が続いており、第29週も微減した。過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多く、都道府県別では福井県(8.1)、福島県(6.6)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第20週から緩やかに増加しており、第29週も増加した。都道府県別では兵庫県(4.1)、福岡県(3.3)、佐賀県(3.2)、大分県(3.2)が多い。風しんの定点当たり報告数は微減し、都道府県別では22都府県から報告があったが、いずれも0.1以下であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第20週から増加が続いた後、第26週は微減したが、第27週からは再び増加が続いている。都道府県別では山形県(8.1)、山口県(7.3)が多い。麻しんの定点当たり報告数は前週と同値で、第1週から継続して、過去10年間の当該週と比較して最低値を示している。12都道府県から報告があったが、いずれも0.1以下であった。RSウイルス感染症はゼロ報告を含めて32都道府県から報告がなされ、報告数は合計28例であった。

基幹定点報告疾患:無菌性髄膜炎の定点当たり報告数は微増し、都道府県別では鳥取県(0.8)、福島県(0.7)、三重県(0.6)が多い。マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は第20週から増加傾向が認められていたが、第25週をピークに減少傾向がみられ、第29週も微減した。しかし、第22週からは過去5年間の当該週と比較して最高値を示している。都道府県別では岡山県(1.8)、福島県(1.1)が多い。


〈6月コメント〉
◆性感染症について  2004年7月12日集計分 性感染症定点数:924

 2004年6月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が3.68(男1.53、女2.15)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.94(男0.36、女0.58)、尖圭コンジローマが0.66(男0.37、女0.29)、淋菌感染症が1.54(男1.24、女0.30)で、4疾患のうち、男性では性器クラミジア感染症および淋菌感染症、女性では性器クラミジア感染症が多かった(図1)。前月に比べ、上昇傾向がみられる(グラフ総覧参照)。過去5年間の同時期と比較すると、性器ヘルペスウイルス感染症が女性で平均+2標準偏差(SD)を越え、尖圭コンジローマが男性で平均+2SDを、女性で平均+1SDを超えた。一方、淋菌感染症が男性で平均1SDを下回った(図2)

図1.各性感染症が総報告数に占める割合(6月)


 定点当たり報告数を年齢階級別・男女別に比較すると(図3:PDF参照)、いずれの疾患でもピークは20〜29歳にあったが、性器ヘルペスウイルス感染症では50代以降の高年齢層からの報告も少なくない。淋菌感染症では男性の占める割合が高いが、他の3疾患では若年齢層で女性の報告者数の方が多い。

 感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)での各性感染症の定点当たり報告数を月別・男女別に(図4:PDF参照)に示した。女性では淋菌感染症も含め、いずれの疾患も前月に比べて上昇している。

注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈される必要がある。詳細はIDWR週報2000年第46号(10月報)4ページの説明を参照されたい。

◆薬剤耐性菌について (7月12日集計分)

6月の基幹定点総数:

469.

[定点当たり報告数]

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
3.92(前月:3.37、前年同月:3.97)
月別では年間を通してほぼ一定の報告数で、年別には微増傾向が認められている。6月の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同月と比較して最も多かった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.33(前月:1.32、前年同月:1.45)
過去には、春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多くみられたが、2004年にはほぼ一定の報告数で推移している。6月の定点当たり報告数は微増し、過去5年間の同月との比較では、過去2年間に次いで多かった。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.12(前月:0.09、前年同月:0.12)
年間を通じてほぼ一定の報告数である。6月の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同月との比較では、昨年に次いで多かった。

[年齢階級別]

MRSA感染症
高齢者に多く、65歳以上が全体の70%(70歳以上が62%)を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児に多く、10歳未満が全体の72%(5歳未満が66%)を占めている。また高齢者にも多く、65歳以上が全体の17%(70歳以上が14%)を占めている(図2:PDF参照)
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、65歳以上が全体の55%(70歳以上が48%)を占めている。(図3:PDF参照)

[性別:女性を1 として算出した男/女比]

MRSA感染症…1.6/1
PRSP感染症…1.4/1
薬剤耐性緑膿菌感染症…2.5/1

[都道府県別]

MRSA感染症
定点当たり報告数は栃木県(8.3)、富山県(7.6)、山口県(7.5)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(16.4)、富山県(6.4)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
定点当たり報告数は香川(0.5)、新潟県(0.4)、山梨県(0.4)が多い。

◆結核サーベイランス月報 7月12日集計分

 6月の新登録患者数は2,637人(男性1,719人、女性918人)で、このうち活動性肺結核患者は2,120人(うち、喀痰塗抹陽性者は1,001人)であった。
 都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(301人)、大阪府(大阪市を除く)(183人)、大阪市(154人)、千葉県(千葉市を除く)(110人)、愛知県(名古屋市を除く)(108人)が多い。
 また、別掲により集計されているマル初者数*は665人、非定型抗酸菌陽性者数は270人であった。

*マル初者…結核の感染が強く疑われるが発病はしておらず、発病予防のための内服を行っている者。

 詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr.htm)をご覧ください。




 注目すべき感染症

◆腸管出血性大腸菌感染症

 腸管出血性大腸菌感染症は感染症法に基づく3類感染症として、無症状病原体保有者を含む症例の報告が診断した医師に義務づけられている。無症状病原体保有者は、食品産業従事者の検便によって偶然発見される場合もあるが、探知された患者と食事を共にした者や接触者の調査などによって発見される場合が多い。

 2004年第29週の報告数は203例で、1週間の報告数としては本年では最も多かった。また、第29週までの累積報告数は1,347例で、過去3年間の同週までの累積報告数(2001年1,824例、2002年1,407例、2003年996例)と比較すると、2003年よりは多い(図1)。第29週までの累積報告数を都道府県別にみると、石川県(138例)、東京都(108例)、大阪府(102例)、岡山県(96例)、兵庫県(62例)が多い。第29週に限ると、石川県(73例)、大阪府(10例)、栃木県(9例)、東京都(9例)が多く、石川県からの報告の殆どは、前週に引き続きO111 VT1・VT2による高校の修学旅行に関連した報告であった。

図1.腸管出血性大腸菌感染症(無症状病原体保有者含む)の発生状況

 第29週までの累積報告を血清型・毒素型別にみると、O157 VT1・VT2 433例(32%)、O157 VT2 296例(22%)、O26 VT1 245例(18%)、O111 VT1・VT2 85例(6%)の順に多く報告されている。また、年齢群別(0〜69歳までは10歳毎、および70歳以上)にみると、10歳未満497例、10代273例、20代185例、30代102例、40代75例、50代95例、60代58例、70歳以上62例となっている。

 本年はこれまで報告時点での死亡例はないが、溶血性尿毒症症候群(HUS)は第29週に1例報告があり、累積で20例の報告となった。原因菌の血清型・毒素型別ではO157 VT2が10例、O157 VT1・VT2が7例、O26 VT1・VT2が1例、その他が2例であった。年齢群別にみると、10歳以下が15例(うち、5歳以下は9例)、60歳代1例、70歳以上4例であった。性別では男性6例、女性14例と女性に多かった。死亡例やHUSの合併については、届け出時点以降での発生が十分反映されていない可能性があり、このような発生があった場合には修正報告していただくことをお願いしている。

 例年報告のピークは夏季にあるので、一層の注意が必要である。また、本年においても、保育所などに関連した集団発生の報告が散見されている。保育所などでの人から人への感染を防ぐために、普段からの手洗い(特にオムツ交換時)、園児への排便後・食事前の手洗い指導を徹底することが重要である。さらに、夏季には簡易プールなどの衛生管理にも注意を払う必要がある。

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