HTMLトップページへ戻る

第16週ダイジェスト
(2004年4月12日〜18日)
  • 発生動向総覧 (3月報含む)
  • 注目すべき感染症
 をPDF版よりピックアップして掲載しています。

 発生動向総覧

〈第16週コメント〉4月22日集計分
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43 号「速報」参照)。

全数報告の感染症

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計 を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

細菌性赤痢 12例(推定感染地域:国内4例、インド3例、カンボジア2例、インドネシア1例、フィリピン1例、バングラデシュ1例)
腸チフス 2例(推定感染地域:国内1例、不明1例)
パラチフス 1例(推定感染地域:インド)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症 43例(うち有症者34例)
報告の多い都道府県:香川県(10例)、岡山県(7例)、石川県(6例)、三重県(5例)
血清型・毒素型:O157 VT2(27例)、O157 VT1・VT2(5例)、O26 VT1(2例)、その他(9例)
年齢:10歳未満(12例)、10代(4例)、20代(6例)、30代(2例)、40代(2例)、50代(3例)、60代(6例)、70歳以上(8例)

4類感染症:

オウム病 3例(推定感染源:いずれもインコ)
つつが虫病 4例〔秋田県(1例)、長野県(1例)、鹿児島県(2例)〕
ライム病 1例(推定感染地域:国内)
A型肝炎 1例(推定感染地域:国内)

5類感染症:

アメーバ赤痢 6例(推定感染地域:国内2例、韓国1例、タイ1例、フィリピン/マレーシア/シンガポール1例、不明1例)

ウイルス性肝炎 5例

B型3例(推定感染経路:性的接触1例、性的接触/母子感染1例、不明1例)
C型2例(推定感染経路:静注薬物使用1例、不明1例)

クロイツフェルト・ヤコブ病 2例(ともに孤発性)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症 1例〔56歳(死亡)〕

後天性免疫不全症候群 15例

(無症候11例、AIDS 3例、その他1例)
推定感染経路:性的接触13例(異性間5例、同性間8例)、不明2例
推定感染地域:国内14例、不明1例

梅毒 3例(いずれも早期顕症II期)

バンコマイシン耐性腸球菌感染症 3例

遺伝子型:VanB 1例_菌検出検体:尿
遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:静脈血
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:尿

急性脳炎 3例〔単純ヘルペスウイルス2例(39歳、47歳)、ロタウイルス1例(7歳)〕
(補)他に、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例、後天性免疫不全症候群1例の報告があったが、削除予定。

定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。


当該週と過去5年間の平均(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)の比を対数にてグラフ上に表現した。1標準偏差を超えた場合黄で、2標準偏差を超えた場合赤で色分けしている。

小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多く、都道府県別では宮崎県(1.4)、富山県(1.1)、徳島県(1.0)、鳥取県(1.0)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は、第11週に過去10年間で最高の値となった後減少し続けていたが、第16週は増加した。過去5年間の同時期と比較してかなり多く、都道府県別では新潟県(4.8)、山形県(3.7)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多く、都道府県別では福井県(24.5)、宮崎県(16.3)、石川県(15.7)、富山県(15.4)、鳥取県(15.4)が多い。手足口病の定点当たり報告数は微増し、都道府県別では、沖縄県(0.6)、石川県(0.3)、兵庫県(0.3)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第9週から緩やかに増加しており、第16週も増加した。都道府県別では新潟県(1.2)、千葉県(1.1)が多い。風しんの定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多く、都道府県別では群馬県(0.5)、大分県(0.5)、鹿児島県(0.4)が多い(「注目すべき感染症」参照)。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は微増し、都道府県別では和歌山県(0.6)、熊本県(0.6)、愛媛県(0.4)が多い。RSウイルス感染症の報告数は、32都道府県から合計50例であった。


〈3月コメント〉
◆性感染症について  2004年4月15日集計分 性感染症定点数:924

*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11 月5 日施行)により、「尖形コンジローム」の疾患名が「尖圭コンジローマ」に変更になりました。

 2004年3月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が3.16(男1.41、女1.75)、2004年3月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が3.34(男1.43、女1.91)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.88(男0.37、女0.51)、尖圭コンジローマが0.56(男0.31、女0.25)、淋菌感染症が1.49(男1.19、女0.31)で、4疾患のうち、男性では性器クラミジア感染症および淋菌感染症、女性では性器クラミジア感染症が多かった(図1)。男女ともに冬季の減少が止まり、夏に向けて再び増加が始まる傾向がみられる(グラフ総覧参照)。過去4年間の同時期と比較すると、男性では尖圭コンジローマが平均+2標準偏差(SD)を超え、女性では性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマが平均+1SDを超えた(図2)

図1.各性感染症が総報告数に占める割合(3月)


 定点当たり報告数を年齢階級別・男女別に比較すると(図3:PDF参照、いずれの疾患でもピークは20〜29歳にあったが、性器ヘルペスウイルス感染症では50代以降の高年齢層からの報告も少なくない。淋菌感染症では男性の占める割合が高いが、他の3疾患では若年齢層で女性の報告者数の方が多い。
 感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)での各性感染症の定点当たり報告数を月別・男女別に図4(PDF参照)に示した。前月に比べ、女性で上昇傾向がみられる。


注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈される必要がある。詳細はIDWR 週報2000年第46号(10月報)4ページの記載を参照されたい。

◆薬剤耐性菌について (4月15日集計分)

3月の基幹定点総数:

470.

[定点当たり報告数]

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.18(前月:4.01、前年同月:3.49)
月別には年間を通して一定の報告数であるが、年別では微増傾向が認められる。
3月の定点当たり報告数は過去4年間の同月と比較して最も多い。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
・1.33(前月:1.39、前年同月:0.89)
春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に報告数が多い。
3月の定点当たり報告数は過去4年間の同月と比較して最も多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
・0.10(前月:0.08、前年同月:0.12)月別には年間を通じてほぼ一定の報告数である。
3月の定点当たり報告数は2000、2001年の同月と比較して多いが、2002、2003年の同月と比較して少ない。

[年齢階級別]

MRSA感染症
高齢者に多く、65歳以上が全体の72%(70歳以上が63%)を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症
小児に多く、10歳未満が全体の68%(5歳未満が58%)を占めている。また高齢者にも多く、65歳以上が全体の18%(70歳以上が13%)を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、65歳以上が全体の74%(70歳以上が60%)を占めている(図3:PDF参照)。

[性別:女性を1 として算出した男/女比]

MRSA感染症…1.8/1
PRSP感染症…1.3/1
薬剤耐性緑膿菌感染症…1.5/1

[都道府県別]

MRSA感染症
定点当たり報告数は山口県(12.3)、富山県(9.8)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は富山県(9.8)、千葉県(9.6)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
定点当たり報告数は岩手県(0.9)、広島県(0.4)が多い。

◆結核サーベイランス月報 4月22日集計分
 3月の新登録患者数は2,569人(男性1,673人、女性896人)で、このうち活動性肺結核患者は2,043人(うち喀痰塗抹陽性者は956人)であった。都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(292人)、大阪府(大阪市を除く)(156人)、大阪市(132人)、愛知県(名古屋市を除く)(110人)、千葉県(千葉市を除く)(102人)が多い。
 また、別掲により集計されているマル初者数*は475人、非定型抗酸菌陽性者数は242人であった。

*マル初…結核の感染が強く疑われるが発病はしておらず、発病予防のための内服を行っている者。
 詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr. htm )をご覧ください。


  注目すべき感染症

◆風しん

 小児科定点医療機関から報告される全国の風しん患者数は、ここ数年かなり少なく推移している。しかしながら、本年の定点当たり報告数を都道府県別にみると、群馬県、大分県、鹿児島県、栃木県、埼玉県、宮城県などで報告数が増加している。
 第16週の全国約3,000の小児科定点医療機関からの報告数は232人(第15週189人)、定点当たり報告数は0.08(第15週0.06)と増加した。都道府県別では、群馬県(0.5)、大分県(0.5)、鹿児島県(0.4)、宮城県(0.2)、栃木県(0.2)の他、沖縄県(0.2)でも多かった(図)

図.風しんの週別報告数(2003年第16週〜2004年第16週)

報告されている患者の年齢群(1歳未満は6ヶ月毎、1〜9歳は1歳毎、10〜14歳、15〜19歳、20歳以上)をみると、本年は昨年までと比較して10?14歳及び20歳以上の占める割合に増加がみられ、特に10〜14歳の第16週までの累積報告数は、昨年1年間の同年齢群の累積報告数を既に上回っている。
 また、ワクチン未接種で罹ったこともなく、風しんに対して免疫のない妊婦が妊娠初期に感染すると、出生児に先天性風しん症候群(CRS)を起こすことがある。2000〜2003年は各1例の報告であったが、本年は既に2例報告されている。
 風しんはワクチンで予防できる疾患であり、非流行時であっても、妊娠可能年齢の女性は、妊娠前に予防接種を受けておくことが必要である。また、罹患を防止するためには、流行を抑制することが必要であり、定期接種の対象者だけでなく、経過措置の当時の対象年齢層を中心に、男女ともに免疫のない人達は任意接種を受けることが望まれる。

◆ 腸管出血性大腸菌感染症

 腸管出血性大腸菌感染症は、1996年から届出伝染病に指定され、1999年4月からは感染症法に基づく3類感染症に位置づけられた。これにより、無症状病原体保有者を含み、診断した全ての医師に報告が義務づけられている。

最近の年間報告数は、2000年3,642例、2001年4,435例、2002年3,183例、2003年2,636例(暫定)である。今年に入ってからは、第15週に27例、第16週に43例と増加傾向が認められており、第16週までの累積報告数は180例(昨年同時期141例)である。例年に比べ特に多いというわけではないが、例年報告のピークは夏季にあり、今後、報告数は増加していく可能性がある(図)


図.腸管出血性大腸菌感染症発生報告数(2000〜2004年第16週)

 都道府県別にみると、累積報告数では東京都(20例)、大阪府(19例)、香川県(15例)が多く、第16週に限ると、香川県(10例)、岡山県(7例)、石川県(6例)、三重県(5例)が多かった。3月下旬から岡山県、石川県および福井県で散発的に発生した事例の菌の遺伝子型において、パターンの一致が認められており、少なくともこれらの地域において共通の食品・食材による感染の可能性も疑われ、現在調査が進められている。

   発生動向総覧トップページへ戻る

   IDWRトップページへ戻る

 

 

 

PDF版ダウンロードはこちらから