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第11週ダイジェスト
(2004年3月8日〜14日)
  • 発生動向総覧 (2月報含む)
  • 注目すべき感染症
 をPDF版よりピックアップして掲載しています。

 発生動向総覧

〈第11週コメント〉3月18日集計分
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11 月5 日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43 号「速報」参照)。

全数報告の感染症

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計 を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

細菌性赤痢 8例(推定感染地域:国内1例、カンボジア2例、インド1例、ネパール1例、エクアドル1例、エクアドル/ペルー1例、不明1例)
腸チフス 1例(推定感染地域:カンボジア)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症9例(うち有症者7例)
血清型・毒素型:O157 VT2( 4例)、O157 VT1・VT2( 1例)、O26 VT1( 1例)、O1 VT1(1例)、その他(2例)
年齢:10歳未満(4例)、20代(2例)、30代(1例)、40代(2例)

4類感染症:

つつが虫病 1例(宮崎県)
マラリア 2例(ともに熱帯熱_推定感染地域:ソロモン諸島1例、アフリカ1例)
A型肝炎 1例(推定感染地域:国内)

5類感染症:

アメーバ赤痢 4例(推定感染地域:国内1例、東南アジア1例、不明2例)
ウイルス性肝炎 2例(ともにB型_推定感染経路:ともに性的接触)
クロイツフェルト・ヤコブ病 3例(孤発性2例、家族性1例)

後天性免疫不全症候群 13

(無症候6例、AIDS 6例、その他1例)
推定感染経路:性的接触9例(異性間4例、同性間5例)、不明4例
推定感染地域:国内11例、不明2例

髄膜炎菌性髄膜炎 2例(ともに0歳.推定感染地域:ともに国内)
梅毒 4例(早期顕症I期、早期顕症II期、晩期顕症、無症候各1例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症 1例(遺伝子型:VanA、菌検出検体:喀痰、便)
急性脳炎 2例(病原体:ともにインフルエンザA.4歳、67歳)
(補)他にコレラ1例の報告があったが削除予定。また、第9週分の報告遅れとして急性脳炎1例(病原体不明)、第10週分の報告遅れとしてE型肝炎1例の報告があった。

定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。


当該週と過去5年間の平均(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)の比を対数にてグラフ上に表現した。1標準偏差を超えた場合黄で、2標準偏差を超えた場合赤で色分けしている。

インフルエンザ定点報告疾患:インフルエンザの定点当たり報告数は第5週をピークに減少し、第11週も減少した。都道府県別では大分県(14.7)、福井県(12.0)、宮崎県(11.7)が多い。

小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は夏季の流行の後、2003年第43週から再び増加傾向が認められた。その後第52週をピークに減少し、第3週からはほぼ横ばいで推移していたが、第11週は増加した。過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多く、都道府県別では富山県(1.1)、山形県(0.8)、山口県(0.7)、宮崎県(0.7)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2003年第51週をピークに減少したが、第3週から再び増加傾向が認められ、第11週も増加した。過去10年間で最高の値となっており、都道府県別では山形県(9.5)、新潟県(8.7)、富山県(8.0)が多い(「注目すべき感染症」参照)。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第51週をピークに減少傾向が認められていたが、第8週から再び増加し、第11週も増加した。都道府県別では大分県(23.7)、佐賀県(18.4)、福岡県(16.7)、三重県(16.2)が多い。水痘の定点当たり報告数は第2週に過去10年間で最高の値となった後に減少し、第5週からは週により増減はあるがほぼ横ばいで推移している。都道府県別では鹿児島県(3.8)、沖縄県(3.8)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第8週から緩やかに増加しており、第11週も増加した。都道府県別では新潟県(1.2)、福井県(1.1)、山形県(1.0)が多い。風しんの定点当たり報告数は前週と同値であるが、過去5年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では鹿児島県(0.4)、群馬県(0.3)、大分県(0.2)が多い(「注目すべき感染症」参照)。RSウイルス感染症の報告数は30都道府県から合計98例であった。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は微減して0.16で、都道府県別では宮城県(0.8)、福島県(0.6)、大阪府(0.6)が多い。


〈2月コメント〉
◆性感染症について  2004年3月12日集計分 性感染症定点数:918

*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11 月5 日施行)により、「尖形コンジローム」の疾患名が「尖圭コンジローマ」に変更になりました。

 2004年2月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が3.16(男1.41、女1.75)、 性器ヘルペスウイルス感染症が0.84(男0.36、女0.49)、尖圭コンジローマが0.52(男0.29、女0.24)、 淋菌感染症が1.42(男1.14、女0.28)で、4疾患のうち、男性では性器クラミジア感染症および淋 菌感染症、女性では性器クラミジア感染症が多かった(図1)。前月に比べ、男女共に、淋菌感 染症、性器クラミジア感染症で減少が続いている(グラフ総覧参照)。過去4年間 の同時期と比較すると、尖圭コンジローマが男女ともに平均+1標準偏差(SD)を超えて多く、男 性の淋菌感染症が平均-1SDを超えて少ない(下図)

図1.各性感染症が総報告数に占める割合(2月)


 定点当たり報告数を年齢階級別・男女別に比較すると(図3:PDF版参照)、いずれの疾患でもピークは20 〜29歳にあったが、性器ヘルペスウイルス感染症では50代以降の高年齢層からの報告も少な くない。淋菌感染症では男性の占める割合が高いが、他の3疾患では若年齢層で女性の報告 者数の方が多い。 感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)での各性感染症の定 点当たり報告数を月別・男女別に図4に示した。冬場に見られる減少、あるいは横ばい状態が 続いているが、特に女性で全体に減少傾向が目立つ。


注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈される必要がある。詳細はIDWR 週報2000年第46号(10月報)4ページの記載を参照されたい。

◆薬剤耐性菌について (3月12日集計分)

2月の基幹定点総数:

466.

[定点当たり報告数]

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
3.99(前月:4.00、前年同月:3.91)
月別には年間を通してほぼ一定であるが、年別 には微増傾向が認められており、2月の定点当た り報告数は過去4年間の同月に比して最も多い。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.39(前月:1.20、前年同月:0.88) 月別には春から初夏にかけて(4〜6月)と冬 (11、12月)に多いが、2月の定点当たり報告数は 過去4年間の同月に比して最も多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.08(前月:0.14、前年同月:0.09) 月別には年間を通じてほぼ一定であるが、2 月の定点当たり報告数は過去4年間の同月に比して最も少ない。

[年齢階級別]

MRSA感染症
高齢者に多く、65歳以上が全体の 72%(70歳以上が64%)を占めている(図1)。
PRSP感染症
小児に多く、10歳未満が全体の63% (5歳未満が57%)を占めている。また高齢者にも 多く、65歳以上が全体の22%(70歳以上が16%) を占めている(図2)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、65歳以上 が全体の59%(70歳以上が41%)を占めている(図3)。

[性別:女性を1 として算出した男/女比]

MRSA感染症…1.7/1
PRSP感染症…1.4/1
薬剤耐性緑膿菌感染症…3.3/1

[都道府県別]

MRSA感染症
定点当たり報告数は山口県(13.6)、香川県(10.8)、富山県(9.6)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(9.9)、富山県(8.2)、高知県(6.6)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
定点当たり報告数は岩手県(0.6)、宮城県(0.5)が多い。

◆結核サーベイランス月報 3月23日集計分
 2月の新登録患者数は2,178人(男性1,424人、女性754人)で、このうち活動性肺結核患者は 1,764人(うち喀痰塗抹陽性者は833人)であった。 都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(300人)、大阪府(大阪市を除く) (148人)、大阪市(105人)、埼玉県(さいたま市を除く)(85人)、愛知県(名古屋市を除く)(83 人)が多い。
 また、別掲により集計されているマル初者数*は388人、非定型抗酸菌陽性者数は235人であった。


*マル初…結核の感染が強く疑われるが発病はしておらず、発病予防のための内服を行っている者。
 詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr. htm )をご覧ください。
 また、9月19日に、2002年の結核発生動向調査年報が出されました。詳しくは、結核研究所のホームページ(http://www.jata.or.jp )でご覧下さい。 



  注目すべき感染症

◆A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

A群溶血性レンサ球菌による感染症は、菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状を引 き起こす。日常よくみられる疾患として、急性咽頭炎の他、膿痂疹、蜂巣織炎、あるいは特殊な 病型として猩紅熱がある。これら以外にも中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など を起こす。また、菌の直接の作用でなく、免疫学的機序を介して、リウマチ熱や急性糸球体腎 炎を起こすことが知られている。
 本疾患の報告数は、迅速診断キットの普及などから近年増加していたが、2004年の第9週か ら昨年までに比べて非常に多くなっている。都道府県別では山形県(9.5)、新潟県(8.7)、富山 県(8.0)、鳥取県(5.3)、福井県(5.3)、宮城県(5.3)からの報告が多い。また年齢群別では、5歳 を中心に4歳、6歳の報告が多い。

◆風しん

 2003年9月まで風しん予防接種の経過措置のキャンペーンなども行われており、ここ数年、小 児科定点から報告される全国の風しん患者数は、以前よりかなり少なく推移している。しかし ながら、本年の定点当たり報告数を都道府県別にみると、鹿児島県、群馬県、大分県など依然 として報告数の多い都道府県もあり(図)、そこでは地域的な流行が認められている。また、患 者の年齢群を比較してみると、本年は昨年に比べて、学童期や20歳以上の割合が多くなってい る。これらの報告は小児科定点からの報告であるので、成人の風しんがより多い可能性もあり、 予断を許さない。
 風しんはワクチンで予防できる疾患であり、経過措置終了後の現在も、定期接種の対象者だ けでなく、当時の経過措置の対象年齢層を中心に、免疫のない人達への任意接種の普及啓発 が大切である。また、今年に入ってこれまでに2例の報告があった「先天性風しん症候群」の予 防のためには、小児科ばかりでなく、特に妊婦や妊娠年齢の女性の管理を行う産科や婦人科 においても、地域での風しんの流行状況などに細心の注意を払って対策を講じる必要がある。

図.風しんの週別報告数(2003年第1週〜2004年第11週)

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