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第50週ダイジェスト
(2003年12月15日〜21日)
  • 発生動向総覧 (11月報含む)
  • 注目すべき感染症
 をPDF版よりピックアップして掲載しています。

 発生動向総覧

〈第50週コメント〉12月18日集計分
全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11 月5 日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43 号「速報」参照)。

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計 を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

細菌性赤痢8例(推定感染地域:インド2 例、パプアニューギニア2 例、インド/タイ1 例、
フィリピン1 例、ベトナム1例、エジプト1例)
腸チフス1例(推定感染地域:国内)
パラチフス2例(推定感染地域:ベトナム1例、インドネシア1例)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症11 例(うち有症者7例)
血清型・毒素型:O157 VT1 ・VT2 (3 例)、O111 VT1 (2例)、その他(6例)
年齢:10歳未満(5例)、10代(3例)、20代(2例)、50代(1例)

4類感染症:

オウム病1例(推定感染源:インコ)
Q 熱1 例(推定感染源:トリ)
つつが虫病20例(鹿児島県6例、宮崎県4例)
レジオネラ症2例(57歳、71歳)
A型肝炎2例(推定感染地域:国内1例、不明1例)
マラリア 1例(熱帯熱_推定感染地域:ガーナ)

5類感染症:

アメーバ赤痢3例(推定感染地域:国内2例、不明1例)

ウイルス性肝炎4 例

B 型2例(推定感染経路:ともに不明)
C 型2例(推定感染経路:性的接触1 例、不明1 例)

劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(57歳)

後天性免疫不全症候群 9例

(AIDS 4例、無症候3例、その他2例)
推定感染経路:性的接触7 例(異性間5例、同性間1例、不明1 例)、不明2例
推定感染地域:国内4 例、日本/タイ1例、日本/ミャンマー1 例、不明3例

ジアルジア症1 例(推定感染地域:不明)
梅毒14 例(早期顕症I 期5例、早期顕症II 期4例、無症候5例)
破傷風1 例(65歳)
急性脳炎1 例(病原体不明.32 歳)
(補)他に、レジオネラ症1例の報告があったが、削除予定。また、第49週分の報告遅れとして、急性脳炎1例(単純ヘルペスウイルス.7歳)の報告があった。

定点把握の対象となる4類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。


当該週と過去5年間の平均(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)の比を対数にてグラフ上に表現した。1標準偏差を超えた場合黄で、2標準偏差を超えた場合赤で色分けしている。

小児科定点報告疾患:インフルエンザの定点当たり報告数は未だ低値ではあるが、徐々に増加が認められている(「注目すべき感染症」参照)。都道府県別では山形県(6.2)、群馬県(1.9)、福島県(1.6)、北海道(1.3)が多い。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第29 週をピークとし、その後減少し続けた後、第43 週から再び増加傾向が認められており、第50 週も増加した。第50 週bナの累積定点当たり報告数の過去10 年間の平均と比較して2.9倍を示す大きな流行となっている。都道府県別では山形県(2.1)、和歌山県(1.3 )、愛媛県(1.2)が多い(「注目すべき感染症」参照)。A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第34 週から増加傾向が認められているが、第50 週は減少した。都道府県別では鳥取県(6.1)、山形県(5.0)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第43 週から増加しており、第50週も増加した。都道府県別では宮崎県(37.5)、新潟県(30.4)、大分県(26.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は第41週から増加しており、第50週も増加した。都道府県別では山形県(4.9)、新潟県(4.6)、熊本県(4.5)が多い。RSウイルス感染症の報告数は、28 都道府県(0 の報告も含む)から合計262 例であった。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少して0.35 で、都道府県別では岡山県(4.4)、山形県(1.8)、山梨県(1.6)が多い。


〈11月コメント〉
◆性感染症について  2003年12月12日集計分 性感染症定点数:921

*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11 月5 日施行)により、「尖形コンジローム」の疾患名が「尖圭コンジローマ」に変更になりました。

 2003年11月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が3.50(男1.50、女2.00)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.86 (男0.36、女0.50)、尖圭コンジローマが0.55(男0.28、女0.26)、淋菌感染症が1.86 (男1.43 、女0.43 )で、4疾患のうち、男性では性器クラミジア感染症および淋菌感染症、女性では性器クラミジア感染症が多かった(図1)。4 疾患とも前月に比べ、減少あるいは横ばいである(「グラフ総覧」参照)。過去4 年間の同時期と比較すると、女性で、尖圭コンジローマが平均+2 標準偏差(SD )、淋菌感染症で平均+1SD を超えている(図2)

図1.各性感染症が総報告数に占める割合(11月)


 定点当たり報告数を年齢階級別・男女別に比較すると(図3:PDF参照)、いずれの疾患でもピークは20〜29歳にあったが、性器ヘルペスウイルス感染症では50代以降の高年齢層からの報告も少なくない。淋菌感染症では15〜19歳では男女同率、他の年齢層では男性の占める割合が高かった。他の3 疾患では若年齢層で女性の報告者数が多い傾向が認められた。感染症法が施行された1999 年4 月以降について、若年齢層(15 〜29歳)での各性感染症の定点当たり報告数を月別・男女別に図4 に示した。前月と比べると、女性の淋菌感染症以外はいずれも減少している。(図4「1999 年4 月以降の性感染症の月別定点当たり報告数(15 〜29 歳)」はPDFを参照してください。)


注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈される必要がある。詳細はIDWR 週報2000年第46号(10月報)4ページの記載を参照されたい。

◆薬剤耐性菌について (12月12日集計分)

11月の基幹定点総数:

470.

[定点当たり報告数]

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA )感染症
 3.54 (前月:3.77 、前年同月:3.43 )
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP )感染症
 1.34 (前月:1.04 、前年同月:1.35 )
薬剤耐性緑膿菌感染症
 0.12 (前月:0.17 、前年同月:0.11 )

[年齢階級別]

MRSA 感染症・・高齢者に多く、65 歳以上が全体の65%(70 歳以上が55%)を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP 感染症・・5 歳未満の小児に多く、全体の65%を占めている。また、65 歳以上の高齢者にも多く、全体の14%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症・・高齢者に多く、65 歳以上が全体の67%(70 歳以上が54%)を占めている(図3:PDF参照)。

[性別:女性を1 として算出した男/女比]

MRSA 感染症…1.9/1
PRSP 感染症…1.4/1
薬剤耐性緑膿菌感染症…4.2/1

[都道府県別]

MRSA 感染症…定点当たり報告数は栃木県(9.1)、山口県(7.9)が多く、累積では山口県(92.0)、富山県(88.8 )、島根県(81.0 )が多い。
PRSP 感染症…定点当たり報告数は富山県(7.2)、千葉県(6.9)が多く、累積でも千葉県(73.6)、富山県(61.0)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症…定点当たり報告数は岩手県(0.95)、広島県(0.7)が多く、累積でも岩手県(7.0)、広島県(5.55)が多い。

◆結核サーベイランス月報 12月19日集計分
 11 月の新登録患者数は2,289人(男性1,438人、女性851人)で、このうち活動性肺結核患者は1,900 (うち喀痰塗抹陽性者は832 人)であった。
 都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(283人)、大阪府(大阪市を除く)(153人)、大阪市(131人)、埼玉県(さいたま市を除く)(98 人)、愛知県(名古屋市を除く)(84人)が多かった。
また、別掲により集計されているマル初者数*は458 人、非定型抗酸菌陽性者数は258 人であった。


*マル初…結核の感染が強く疑われるが発病はしておらず、発病予防のための内服を行っている者。
 詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr. htm )をご覧ください。
 また、9月19日に、2002年の結核発生動向調査年報が出されました。詳しくは、結核研究所のホームページ(http://www.jata.or.jp )でご覧下さい。 



  注目すべき感染症

◆インフルエンザ

 第50週のインフルエンザの定点当たり報告数は0.38であり、まだ本格的な流行が始まっている状況ではない。全国41都道府県から合計で1,796 例の報告があったが、これは昨シーズンの7,753例と比べると少ない。山形県は定点当たり報告数が6.2 と非常に多くなっており、群馬県(1.9)、福島県(1.6)、北海道(1.3 )でも1.0 を超えている。
 これまでに確認されたインフルエンザウイルスはAH3型が中心であり、B型が続いている。AH1型についても1件報告がある(「病原体情報」参照)。

図. 過去10年間のインフルエンザシーズン毎のトレンドグラフ

 インフルエンザ様疾患に伴う学級閉鎖の報告では、第50週は全国の34施設から報告があり(昨年同時期117施設)、休校が青森県および山形県でそれぞれ2件、学年閉鎖は北海道6 件、山形県2件、青森県、福島県、和歌山県が各1 件、学級閉鎖は山形県5件、北海道、青森県、埼玉県が各3件、東京都2件、群馬県、神奈川県、三重県が各1件である。
 「インフルエンザのQ&A 」「国内患者発生動向調査」「ウイルス分離状況」「抗体保有状況」「学校欠席者数」などインフルエンザの総合的な情報については、以下のURL を参照されたい。
 ○http://idsc.nih.go.jp/others/topics/newpage2.html
インフルエンザの流行レベルマップについては、以下のURL をご参照されたい。
 ○http://idsc.nih.go.jp/others/topics/inf-keiho/guide03.html


◆咽頭結膜熱

 咽頭結膜熱は例年夏季に流行を迎える。今年は例年よりも報告数が多く推移してきているが、第29週をピークとして順調に低下した。しかしその後、第43週から再び増加してきており、実際に多くの都道府県で報告数が増加している。年齢別では2〜5歳の報告数が多い。

図.咽頭結膜熱の年別週別発生状況

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