図1にエコーウイルス30型のVP1領域の系統樹を示す。上記2症例から検出されたエコーウイルス30型は、富山県内の下水流入水から2008年1月〜2010年8月までに分離されたエコーウイルス30型と同一のクラスターに属し、2009〜2010年、2008年の下水由来株との一致率はそれぞれ98.0〜99.6%、96.4〜97.2%であった。これらの株は、2003〜2004年に神戸、韓国、マレーシアで検出されたウイルスと相同性が高く(約93〜96%)、近年のイギリス(2007〜2008年)、韓国(2008年)、ロシア(2008〜2009年)で検出されたウイルスとの相同性は約80%と低かった。このため、本症例のエコーウイルス30型は、2008年以降に富山県内で不顕性あるいは軽症で感染が続いているウイルスが由来であり、他の地域から侵入した可能性は低いと考えられた。
富山県における2症例はともに散発例であり、症状は軽度である。しかしながら、エコーウイルスは無菌性髄膜炎の原因となるため、流行には注意が必要であり、保育園等での感染伝播に注意したい。
参考文献
1) 病原微生物検出情報月報. http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html
2) Cosic G, et al ., Euro Surveill 15(32). pii: 19638, 2010
3) Perevoscikovs J, et al ., Euro Surveill 15(32). pii: 19639, 2010
4) Oberste MS, et al ., J Clin Microbiol 38: 1170-1174, 2000
富山県衛生研究所 岩井雅恵 堀元栄詞 小原真弓 小渕正次 倉田 毅 滝澤剛則
富山県砺波厚生センター 川越久美子
富山県高岡厚生センター 中村純香
国立感染症研究所 清水博之 吉田 弘