HI試験の結果、A/H1N1亜型ウイルス15株については、抗A/New Caledonia/20/99血清に対して、いずれもHI価10〜40(ホモ価320)であり、昨シーズンまでの流行で主流であったA/New Caledonia/20/99類似株とは抗原的に違っていると考えられた。一方、抗A/Solomon Islands/3/2006血清に対してはHI価160(ホモ価640)を示した株が5株認められたものの、HI価80を示す株が3株、HI価40を示す株が7株認められ、今シーズンのワクチン株である A/Solomon Islands/3/2006とは、抗原性が若干異なるウイルスも認められた。
一方、B型ウイルスは11月22日に採取された咽頭ぬぐい液から分離されたものである。患者は15歳の高校生で、前日の夜から38℃の発熱と頭痛、咽頭痛、咳の主訴で医療機関を受診し、迅速診断キットでB型インフルエンザが疑われたため、当所においてウイルス分離を実施した。なお、この患者と同居している6歳の妹も、受診した医療機関において実施した迅速診断キットでB型と判定されているが、これまでのところ、その2名以外にはB型を疑う患者は認められていない。分離ウイルス株について実施したHI試験の結果は、抗B/Shanghai(上海)/361/2002血清に対してHI価10未満(ホモ価640)、抗B/Malaysia/2506/2004血清に対してHI価160(ホモ価320)であったことから、分離株はVictoria系統の株と考えられた。
今シーズン前半の流行の主流ウイルスになっているA/H1N1亜型については、ワクチン類似株の他に変異株もみられていることから、今後の動向に注意が必要であると思われる。一方、今シーズンのB型ウイルスについては、現在までのところ、京都市で第46週(11/12〜11/18)に山形系統のウイルス分離の報告があるだけであり、B型ウイルスについても、どちらの系統が増えてくるのか今後の動向に注目したい。
広島県立総合技術研究所保健環境センター
高尾信一 島津幸枝 佐々木由枝 福田伸治 妹尾正登
広島県感染症情報センター 久保 滋
木原こどもクリニック 木原幹夫
広島県福祉保健部保健対策室 高橋美佳 荒川 勇