検体は、感染症発生動向調査として、2007年6月〜10月に病原体定点等医療機関から搬入された咽頭ぬぐい液等計281件で、ウイルス分離はFL、RD-18S、Vero細胞を用い、33℃で2週間回転培養を行った。また、必要に応じて哺乳マウスも併用した。同定は感染研分与および自家製抗血清を用いて中和試験を行った。
月別EV分離状況を表1、診断名別EV分離状況を表2に示した。今夏は、計32株のEV [コクサッキーウイルス9種(29株)、エコーウイルス18型(1株)、EV71(1株)、ポリオウイルス2型(1株)]が分離された。ヘルパンギーナ患者13例からは、原因ウイルスとしてA群コクサッキーウイルス(CA)5型が7株、CA6が2株、CA2およびCA10が1株ずつ分離され、今夏はCA5 が主原因の流行と考えられた。また、心室中隔欠損症術後の心筋炎患者1例(咽頭ぬぐい液および糞便)からCA9が分離された。この症例は、病巣部からのウイルス検出ではないため、心筋炎とCA9感染との因果関係は明らかではないが、注目すべき事例であった。
なお、CA2、CA5およびCA6は細胞培養での分離が比較的困難であり、CA2の1株、CA5の7株中6株、およびCA6の6株中4株が哺乳マウスのみで分離された。これらのウイルスは培養細胞にはRD-18Sのみに感受性を示し、特にCA5についてはRD-18Sへの順化に継代を要したものもあった。
HFMD患者11例からは、CA16が3株、CA6が2株、CA9およびEV71が1株ずつ検出され、CA16を主原因とする小流行であったと推測された。本県では、HFMDが3〜4年ごとに大きな流行を繰り返しており、1999年はCA16、2000年にはEV71、2003年はEV71による比較的大きい流行があった。本年は2003年の流行後4年目にあたるが、今夏の流行はきわめて小規模であった。近年、HFMDは初冬まで患者が継続して発生する傾向が見られているため、今後の動向に注意が必要である。
愛媛県立衛生環境研究所
市川高子 大塚有加 近藤玲子 大瀬戸光明 井上博雄